第018話 デートだよ!


 素晴らしい天候に恵まれた土曜日、俺は完全な準備をし終えると、妹に見送られ、家を出た。

 俺は歩いて、待ち合わせ場所であるバス停に向かう。


 なお、待ち合わせ時間は11時だ。


 今?

 10時!


 俺は遅れてはならないと思い、1時間前行動をしたのだ。

 本当は7時に起きて、今まで待ちきれなかったからなんだけどね!


 俺はルンルン気分でバス停に向かう。

 すると、何故かバス停が輝いて見えた。


 …………は?

 何故、バス停が輝いている……?


 いや、理由はわかっている。

 遠目でよくわからないが、俺のみゆきちセンサーが働いているのだ。


 俺はその場で立ち止まった。


 まだ1時間前だぞ……?

 なんでいんの?

 俺は病気だから1時間前に来るが、みゆきちは早くね?


 俺はもしかしたら時間を間違えたのかなと思い、携帯を見る。

 メッセージアプリを開き、待ち合わせ時間を再度確認するが、どう見ても待ち合わせ時間は11時で間違いない。

 もちろん、今の時刻も10時で合っている。


 俺は9時に来れば良かったなーと思い、みゆきちがいるバス停に急いだ。

 そして、ある程度、近づくと、みゆきちもこちらに気付き、笑顔で手を振ってきた。


 ひゃー!

 めっちゃかわいい!!


 俺は初めて見たみゆきちの私服に感動する。


 みゆきちは白を基調とした清楚な格好をしており、みゆきちに非常に合っていた。


 俺はすぐに携帯を取り出し、パシャっと1枚撮った後にメッセージアプリで挨拶をすることにした。


【おはよー。早いねー。まだ10時だよ】

【うん、おはよー。ちょっと早く来ちゃった。小鳥遊君も早いねー。あと、なんで写真を撮ったの? すごく自然に流れで撮ったけども(笑)】

 

 バレちった…………


【その服、すごく似合ってるよー】

【ありがとー。なんで撮ったの?】

【みゆきちは白が似合うよねー】

【ああ…………これがナチュ無視か】


 みゆきちにいらんことを教えた女がいるな。


【ちょっと早いけど、暑いし、行こうかー】

【だねー】


 俺達はちょうどやってきたバスに乗り込み、ショッピングモールに向かった。


 バスの中でみゆきちと携帯で会話をしつつ、母親に先ほど撮った写真と共にメッセージを送る。


【ほれ、実在するだろう】


 すると、すぐに返信が返ってきた。


【……身の程を知りなさい】


 とんでもないことを言う母親だ。


 俺は失礼な母親を既読スルーし、みゆきちとの会話に集中することにする。


【ちょっと早くなったし、ショッピングモールを見て回ろっかー】

【そうだねー。小鳥遊君は何か見たいものはある?】


 ないね。


【うーん、あんまりショッピングモールって行かないからなー】

【まあ、それもそうだねー。適当に見て回ろうかー。そんなに時間があるわけでもないしね】


 全部ガッツリ見ようと思ったら1時間弱では足りないだろう。

 それはまたの機会にした方がいい。

 今日のメインは映画だしね。


【そうしよー】


 俺達はちょっとテンションが上がりながらメッセージアプリで連絡を取り合い、到着を待つ。


 俺達が乗ったバスはしばらくすると、ショッピングモール前に到着した。


 バスから降り、すでに見えているショッピングモールに歩いて向かうが、すでに多くの人がショッピングモールに向かって歩いている。


【人が多いねー】


 俺は携帯を操作しながら歩いていく。


【土曜だもんねー】


 うーん、さすがにこう人が多いと、歩きスマホもしにくいなー。


 俺はさっさとショッピングモールに入ろうと思ったが、みゆきちがいるので自重した。

 昨日、妹からちゃんと歩幅を合わせろと厳命されているのだ。


 俺達はゆっくりなりにも進んでいき、ショッピングモール内に入る。

 ショッピングモールは冷房が効いており、かなり快適である。


【ねえねえ、服、見に行ってもいい?】


 ショッピングモールに入るとすぐにみゆきちからメッセージが届いた。

 みゆきちもかなりテンションが高めのようだ。

 まあ、テスト終わりの土曜だしなー。

 みゆきちも1時間前に来るくらいにはテンションが高いのだろう。


【いいよー。行こう! 行こう!】


 俺とみゆきちは2階にあるレディースの服屋に向かった。


 店に入ると、みゆきちは服を見ている。

 俺はそんなみゆきちを見ていた。


【めっちゃ見てくるしw】


 俺の視線に気づいたみゆきちがメッセージを送ってきた。


【女物の服しかないしねー。他に見る物が……】


 ただ、顔を見ることができないので、主に身体を見ている。

 ちょっとマズくないかね?


【そういえば、そうだね。ねえねえ、これとこれ、どっちがいい?】


 みゆきちに言われて、携帯から目線を上げ、みゆきちの方を見ると、みゆきちは白っぽい服と水色っぽい服を持っていた。

 俺はそれらの服を着ているみゆきちを想像する。


【うーん、みゆきちは何を着ても似合うからなー……】

【言うと思ったw】


 だってねー。

 これが一方が奇抜ならまだツッコめるんだけど、どっちも普通にかわいいし、着ているところを見てみたいと思ってしまうのだ。


【正直な話、どっちも似合うと思う。というか、そういうのを選んだでしょー】

【まあねーw 無難というか、好きな系統な服だもん】

【これから夏だし、両方とも夏っぽくて良いと思うよー】


 俺はみゆきちに無難な返信を返しつつ、写真を撮りたくなるのを我慢していた。

 その後もいくつかの店を見て回ると、お昼になったので近くのレストランで昼食をとった。

 そこはバイキング形式だったのでめっちゃ食べた。

 みゆきちはよく食べるねーと言っていたが、デザートのケーキを何個もおかわりしていた方がすごいと思う。

 正直、甘いものがあまり好きではない俺はみゆきちの細い体のどこに入るのかと思った。

 『あ、平均よりも少し大きいそこかな!』って、思ったが、すぐに目線を逸らした。

 セーフ!


 昼食を食べ終えた俺達は映画館に向かい、チケットを購入した。

 見る映画はミステリーものだ。

 女子とだし、恋愛映画かなーと思っていたが、アリア曰く、みゆきちはミステリーが好きらしい。

 俺はその情報をアリアから仕入れていたので、みゆきちとどの映画がいいかなーって話をした時もさりげなく、他のジャンルも混ぜつつ、ミステリーを勧めた。

 すると、予想通り、ミステリーだけ食いつきが違ったのでこれになった。


 俺達は映画館に入り、隣同士で座り、映画が始まるのを待っている。


【私、映画館に来るの久しぶりだよー】


 映画の始まりを待っていると、みゆきちからメッセージが届いた。


【俺もー。昔、妹とアニメの映画を見に来て以来だわー】

【小鳥遊君って、ヒカリちゃんと本当に仲がいいねー】


 むむ、シスコンと思われるかもしれないな。


【いや、そんなに仲良くないよ。全然、仲良くないよ。シスコンじゃないよ】

【必死w いや、別にシスコンとか思わないから。ただ、私は妹とかいないからいいなーって。兄妹や姉妹と一緒に出かけたいとか思うし】


 そんなに出かけないけどね。

 まあ、性別が違うからなー。

 みゆきちとなら買い物も楽しいけど、妹と服を見に行っても一つも楽しくない。


【今度、あいつを連れて来てあげるよ。気にいったらあげる】


 妹を餌にした次のデート作戦。

 なお、妹は途中で急用が出来ます。


【あげるって……前もそんなことを言ってたけど、可哀想だよー】


 前も思ったけど、あと2年経てば、いつでも妹が出来るのにー。


 俺とみゆきちが映画の開始まで雑談をしていると、周囲が暗くなった。

 俺達はそれを確認すると、携帯をしまい、前を見る。


 そして、長い予告のCMを見終えると、映画が始まった。


 映画はとある洋館を舞台にした殺人事件だ。

 みゆきちが真剣に見ているので俺もそれに倣い、真剣に見る。

 普通に面白いのだが、こいつが犯人だなって思ってた人が最初の犠牲者で速攻で死んだ時は真顔になったと思う。

 そこからも映画は進んでいき、特にみゆきちと話すことなく、映画に没頭していった。


 映画も終盤に差し掛かり、緊迫したムードになると、みゆきちが俺の服の裾を掴んできた。

 俺は声をかけようかと思ったが、みゆきちが真剣に映画を見ているのでやめておいた。

 ただ、俺も良いところなので映画に集中したいのだが、みゆきちに掴まれているという事実が気になっていまいち集中できない。


 俺はミステリー好きに集中を乱されているものの、終盤の良いところなので、何とか映画に集中し、見続けた。

 そして、ラストも終え、エンディングになったところでみゆきちが手を離す。

 それでも、みゆきちは前を向いたままで、エンディングを真剣に見てるので俺も最後までしっかりと見た。


 俺達は映画が終わると、立ち上がり、映画館を出る。

 そして、映画館の前でお互いに携帯を取り出した。


【面白かったねー】

【だねー。普段はミステリーをあんま見ないんだけど、本当に面白かったわ】


 これは本当。

 ミステリーよりもアクションとかの方が好きなんだけど、さっき見た映画は本当に面白かった。


【それは良かったー。ねえねえ、休めるところに行こうよー】


 …………ここで休憩=あそこと浮かんだヤツは汚れている。


【だねー。1階にあった喫茶店にいこー!】

【そうしよー!】


 映画に大満足だった俺達は映画館を離れ、喫茶店へと向かった。

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