第11話 結婚式~アクィ~02。
部屋を出るとミチトがアクィを待っていた。
ミチトは前もってヒノ達に釘を刺されていた事もあるが「アクィ、似合ってるよ」と声をかけるとアクィの手を取る。
ミチトとアクィの結婚式は屋敷中を練り歩いて使用人達に晴れ姿を見てもらってから皆のいるパーティールームに入って行く。
アクィの補助はばあやが受け持って、ヒノ達は先にパーティールームに向かって間もなく来る話をする。
まもなくと言ってもアクィなので使用人一人一人に感謝を述べて遅くなるので途中からミチトがパーティールームにアクィと使用人の会話を聞かせていた。
メロは遠視術を使いたいのを必死に我慢していたが生まれながらの真式だったラミィとトゥモは無意識に遠視術を使おうとしてミチトに奪術術を仕掛けられていて見られなかったので「何で?見えない?」「パパが邪魔してる?」と言っていた。
扉の向こうからばあやの声で「ご入場です」と言う声の後で扉が開くとミチトとアクィが入ってくる。
パーティールームの奥に控える牧師の前で誓いを立てるとミチトはアクィに「アクィ、約束だ。本気で一から全部作ったんだ」と言ってレイピアを渡す。
白銀に光るレイピアに施された装飾は見る人が見ればわかるような鳥のモチーフで赤青黄、紫に緑と様々な宝石に見える魔水晶が散りばめられていた。
手に取ったアクィは震える声で「これ…」と言うとミチトは「指輪よりレイピアなんだろ?」と言う。
「うん…、今までくれたどのレイピアよりも体に馴染むわ…」
「当然だろ。アクィの為だけに隕鉄と軽神鉄を融合させて作ったんだ。宝石達は全部魔水晶で自然に術を貯めてくれるようにしたし、足りない時はそこから術を使えるようにした」
結婚式でレイピアが出てきて機能紹介で異質ではあるが牧師は何も言わず見守っている。
「やだ…どうしよう…凄く嬉しいわ」
「喜んでもらえたら何よりだよ」
「このレイピアはミチトの愛が詰まった「愛の証」と呼ぶわ」
「やめてくれ、恥ずかしいだろ?」
「嫌よ。ありがとう。大事に使うわ」
「そうしてくれ。まあ多少の刃こぼれくらいならドレスと同じで魔水晶による自己修復が働くようにしたよ」
「そんな事もしたの?」
「したよ。だって俺は器用貧乏だからね」
もう何千回と繰り返された会話。
ミチトは自身を器用貧乏と呼ぶとアクィは嬉しそうに「もう、貴い者と言えばいいのに」と言って微笑む。その顔を見て微笑み返したミチトは「やだよ」と言うと「それでこれが器用貧乏だからオマケだよ」と言ってアクィ用の指輪も取り出すとアクィの左手の薬指に嵌めた。
「え?指輪…」
「皆に指輪なのにアクィにレイピアだけだと後ろの母達に怒られるだろ?」
ミチトは見ないようにするがアクィは参列者の母達を見るとティナはニカッと笑ってガッツポーズで、ソリードとローサは優しく頷いていた。
ここでアクィは喜びの限界で泣いてしまった。
アクィはミチトの妻になれて良かったとキチンと挨拶をして母達一人一人と抱きしめあって最後にスカロとパテラに抱きしめられて感謝を伝えた。
それを見守るミチトにメロが「パパ、明日はお母さんとこれをやるの?」と聞く。
ミチトは「うん。明日はサミアでね」と返すとメロが嬉しそうに「じゃあコードはメロがお世話をするから安心してね」と言った。
ミチトは申し訳なさそうに「ありがとうメロ」と言う。
このやり取りに冷静でいられないのはラミィ達で「ママ!綺麗だわ!パパも格好いい!」と盛り上がる。
そしてパテラとノルアは「スティエット!あの刃こぼれしない剣が欲しいぞ!」「私もです!」と言い出していた。
にじり寄ってくるパテラとノルアに「えぇ…あれ結構手間なんですけど」と牽制をするとメロが「…パパ、一振り何分で作るの?」と聞く。
「打つなら30分」
「術で作るなら?」
「3分」
「…それはやってあげれば?」
メロに言われると断りにくいミチトは「マジか」と言ってパテラとノルアは首を思い切り縦に振っていた。
ミチトはこのまま始まるパーティーの途中でアクィの元に行く。
「ミチト?」
「アクィ、好きな色は?」
「え?」
「好きな色だよ」
突然の質問にアクィは一瞬考えて「やっぱり赤かしら?」と返す。
ミチトは頷いてから「イメージして」と言った。
「え?」
「早く」
「うん」
アクィのイメージした赤に合わせてドレスの色を変える。
「え?これ…」
「折角だからね。アクィは術を流せるんだから色を変えてもいいからさ、好きにしなよ」
これを見ていたラミィとフユィは自分のドレスでもやってくれと願ってきたので魔水晶を混ぜ込んで術を流す。
真式のラミィは作業のイメージが出来ていて自分で色を変えられたがフユィは出来ずに半べそをかく。
ミチトは「フユィはまだ小さいからだよ」とフォローしながら好きな色に変えてあげると喜んでヒノとノルアに見せに行く。
ありがたいのはサルバン邸の人間は誰一人としてミチトの子を差別しない。
全員がアクィの子だと思ってくれている。
ここにタシア達を連れてきても問題は無かったが、あえてミチトはしなかった。
ラミィは初めこそ自分でドレスを染め上げて喜んでいたが「パパ〜、今度イブママの髪の色〜」と甘えるフユィにヤキモチを妬いて「パパ!ラミィもやってください!」と言っていた。
最終的にミチトはフユィとラミィが交互に色を変えてと甘えてくる中に紛れたパテラとノルアの剣も魔水晶で覆って嫌がらせでピンク色にしておいた。
「ぬぁ!?」
「随分愛らしくなってしまいました」
そう言って「でも欠けない」「継戦能力があがる」と悩むパテラとノルアを見たメロが「パパってば〜」と言って帰り際に「メロの術で色を直すね」と言って色を直してあげていた。
「メロ、ミチトとアクィはどうだった?」
大鍋邸に帰るとリナがメロに聞く。
メロが「見る〜?」と言いながら伝心術を使おうとしたがミチトの奪術術がそれを許さない。
「隠し球ばかりだから内緒にしてねメロ」とミチトに言われたメロは「もぅ、パパってば〜」と言って喜ぶ。
ミチトはラミィ達にも「皆が楽しみにしてるから内緒だよ」と言っていてタシア達が迫っても「貴い者の約束なの!ラミィは言えません」と言って頑として言わない。
ミチトはタシアとシアとコードを連れてリナの前に行って「明日がタシアとシアとコードとリナさんだよ」と言う。
これに参加をしたがったラミィ達だったがアクィが「今日がラミィ達の日だったのよ」と言って我慢をさせた。
今晩はリナの日で2人になるとリナが「ミチト、私にも内緒?」と聞く。
「はい。明日までの隠し球です」
「へぇ、…教えてくれたらミチトが喜ぶキスとかしようかな〜」
甘えるように抱き着いてミチト好みのキスをするリナに手も足も出ないミチトは「うっ…、あ…、だ…ダメです!」と言って堪える。
だが心臓の鼓動は早くなっていてリナは「おお、耐えた」と言って笑いながら抱きしめる。
リナがそのまま「それにしても徹底してたね」と声をかけるとミチトが「あ、イブですか?」と聞き返した。
「うん。遠視集音術を使おうとしても無理だったって言ってたよ」
「ええ、大鍋亭からは見えないようにしてサルバン邸も見えなくしました」
これにはリナも「えぇ!?そこまでしてたの?」と聞き返す。
「はい。まあ遠視集音術で言えばクラシ君は結構粘りましたよ。多分シックさんに言われたんでしょうね。シヤも第三騎士団の皆と力を合わせて教えてないのに遠視集音術を仕掛けてきてました。まあ最後はシヤとクラシ君が力を合わせて失敗してました。あの2人はサポートするイメージが無いからとっ散らかります」
ミチトの嬉しそうな笑顔にリナが「いやはや、明日もするの?」と聞く。
「はい。アクィにも3日目までは内緒にしてくれと頼みました」
「3日目?ライブ?」
「はい。ライブの日はどうしてもトウテで目立つので諦めてます」
「成る程」
納得をしてミチトの胸に顔をうずめるリナにミチトは「リナさん、俺と結婚式…してくれるよね?」と聞くとリナは眩しい笑顔で「勿論だよ」と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます