第798話 日本の生産性が改善しないのは、結局ここに問題があると個人的には思っていた。

昔からのことだと思っているが、ソースは朝日新聞DIGITAL、Yahooニュースより


<以下引用>

「割戻金」の名目で下請け業者に代金の引き下げを迫っていたとして、公正取引委員会は7日、日産自動車(横浜市)の下請法違反(減額の禁止)を認定し、再発防止や順法体制の整備を求める勧告を出した。過去最高となる30億円の減額も認定した。


公取委によると、日産は2021年1月~23年5月、自動車部品を製造する計36の下請け業者に対し、総額30億2367万円の減額を求めていた。発注時に決めた金額から一方的に数%を減額していたという。日産はすでに下請け業者に減額分を返金した。


関係者によると、同様の行為は約30年前には行われており、社内で常態化していたとみられる。勧告では、経営責任者が中心となって順法管理体制の整備をはかることも求めた。


公取委は、自動車業界で下請法違反や違反のおそれのある行為が相次いでいるとして、近く業界団体の日本自動車工業会に下請け業者との適正な取引を進めるよう要請を出す方針だ。


日産自動車は7日、「本勧告を大変重く受け止めている」としたうえで「法の順守状況についての定期的な点検体制の強化、並びに役員や下請け取引に関わる従業員への教育の徹底及び定期的な研修の実施など、法令順守体制の強化を行うとともに、再発防止策の徹底に取り組み、今後の取引適正化を図っていく」とのコメントを出した。


日本商工会議所の小林健会頭は同日の会見で「後から値下げを別に要求する行為は極めて遺憾なことだ」と述べ、「社会的な影響が強い話であり、(経営)トップが出てきて説明する責任があると思う」との見解を示した。


<引用ここまで>


日本商工会議所は、大企業も中小企業も加入する団体であるが、会頭は大企業の偉いさんである。他業種でも同じようなことはこれまでも行なわれてきたはずである。「いかにもそれらしい」コメントをしているが、その言葉は軽いと思われる。


私が20代前半のころ、長期休みは父の務めていた会社で、父やその同僚の方と一緒に「引っ越し」のアルバイトをしていた。春は転勤の季節であり、いわゆる「大企業」からも、引っ越しの依頼がたくさん来ていた。当然見積もりを取って、依頼のあった企業に見積もりを提示し、企業の了解を得て「引っ越し業務」を行なう。そして、仕事を行なった後に、その企業から入金される金額は、見積もりの8割、ひどいときには7割の金額であった。大企業曰く、「それが嫌なら、業者はいくつもあるんだよ」とのことだった。


前もって約束した金額で仕事をして、支払いの段で値を下げられる。普通の商売であれば「犯罪行為」である。それがまかり通ってきたのが日本の商社会であったのだ。


生産性は(生み出した価値)/(かけた時間)であらわされる。大企業が、中小企業の製品を「安く叩く」ということは、分子を小さくすることである。当然生産性は小さくなるわけである。企業の努力不足や、効率の悪さが問題ではない。中小企業の生産性の低さは、結局「大企業の買いたたき」が原因であるわけだ。


高度成長時代、日本を支えていたのは「中小企業」の技術力であった。バブル崩壊で、不良債権が問題となり、「銀行」という大企業が潰れそうになった時、「健全な経営」を行なった中小企業から「貸しはがし」という、「運転資金」として貸し出していた資金を無理やり引き上げた。それで、技術を持った、優良な中小企業がバタバタと倒産していった。もちろん、高度成長時代から、大企業の「買い叩き」はあったのだろうが、バブル崩壊後はさらにひどくなったわけである。


労働者の7割が中小企業に勤めている。その人たちが貧しくなり、購買力が下がれば、当然社会全体の消費行動は萎縮する。デフレが回り始めるわけである。結局「失われた30年」の原因の大きなものは、ここにあったのではないか?と、バブル崩壊後の氷河期世代を生きてきた私は思うわけである。


近江商人の哲学である「自分によし、相手によし、世間によし」の「三方よし」の精神、結局大企業と下請けの関係であっても、そこが大切なのだろうと思う。大企業とて、「下請け」の製品がなければ、結局成り立たないのである。そういうことにも気づかない人たちが、「日本の経営者」の多くを占めていたのだろう。


バブル真っ最中で、「地上げ屋」などが社会問題となっていた私の高校時代、「こんな不正義は絶対に続かない」と思った。バブル崩壊後、血眼になって「貸しはがし」を行ない、優良な中小企業を潰していく銀行を見て、「もう日本はダメだ」と心底思ったことを覚えている。


私の予想はあまり外れていなかったようだ、と思った次第である。

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