第354話 もともと、死んでしまっていたじゃないか?

読売新聞の記事より。COVID-19禍で中止されていた市民マラソンがあちこちで再開されたそうだが、久々のマラソン大会で、マラソン中、あるいはマラソン後に心肺停止となる人が多い、と報道されていた。


芸能人でも、マラソン中に心肺停止状態となり、速やかに心肺蘇生の輪がつながって社会復帰された方もおられる。


「目撃者のある心肺停止」は蘇生率が高い。というのは啓蒙活動のおかげで、すぐに心肺蘇生術を行なってくれる人が増えてきたからだ。私も研修医時代からたくさんの心肺停止状態の患者さんの蘇生を行なってきたが、蘇生後、歩いて帰られた人は2人のみ、どちらもERで私の目の前で心肺停止となった方である。


ABEMA TIMES 2022.9/22の情報では、令和3年度消防白書からの情報として、「市民による救命活動による1か月後生存率」について、「119番通報のみ」では8.2%、「胸骨圧迫」では12.2%に対して、「胸骨圧迫+AED」では53.2%という結果になっている。そういう点で、AEDの普及、市民の方への胸骨圧迫の普及は重要なことだと思う。


それはさておき、マラソンの「由来」は、紀元前、ギリシア軍兵士が、ペルシア軍の大軍との戦いに勝利したことを、マラトン(Marathon:マラソンも同じつづり)の街からアテナイへの約42kmを走って伝え、その使命を果たした兵士が命を落としたことから、その兵士を偲んで、42.195kmを走るようになった、というものであったと記憶している。


つまり、最初にマラソンの距離を走った兵士は、勝利を伝えた後死んでしまったわけである。なので、この距離はある意味「殺人的」な距離でもあるわけである。


適切にトレーニングを積んだランナーは走り抜けることが可能な距離ではあるが、やはり、身体にとってはある意味「無茶」な距離である。


多分、コロナ禍の前から、時々マラソン中に心肺停止となる方はパラパラおられたのであろうと思う。だって、由来が由来だもの。


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