第348話 これだから外来は怖いよ。
つい先ほどの話。
今日は時間外当番で、時間外で受診希望の方の対応を行なっていた。15時過ぎ、当院に糖尿病で定期通院中の方が、「今月上旬から嘔気嘔吐が続き、眼の奥が痛い」との主訴で時間外対応を希望され、当院に来院された。
糖尿病で「嘔吐が続く」と言われると、糖尿病性ケトアシドーシスなどを疑うが、1週間ほど前の定期受診では、腎機能が悪く、血尿、蛋白尿が出ているがケトン体は出ておらず、糖尿のコントロールも悪くない。正常血糖ケトアシドーシスの頻度が高いSGLT-2阻害薬も内服されておらず、少なくともケトアシドーシスではなさそうだった。
頭痛があり、吐き気、嘔吐があると頭蓋内の確認は必須である。意識は清明でしっかりとお話もでき、すたすたと歩き、明確な巣症状のない方だったが、「まず頭部のCTを確認させてください」と伝え、頭部CTをオーダーした。
患者さんが検査に回っている間に、問診、身体所見をカルテに記載していた。その途中で、放射線科の主任が診察室に飛び込んできた。
「先生!硬膜下血腫がありました!」とのこと。画像用PCに飛んできたデータを確認すると、右に低吸収と高吸収の混じった液貯留があり、それが大脳を左に圧排していた(この所見をmidline shiftと呼ぶ)。極めてまずい!緊急で血腫除去術が必要な状態である。
患者さんを呼び込み、結果を説明する。
「マジですか。手術とか、するんですか?」
「はい、たぶん緊急手術になると思います。今日受診してくださってよかったです。頭部のCTを取ってよかったです。緊急で対応できる病院を探しますので、待合室でお待ちください」
と伝え、大急ぎで診療情報提供書を作成。地域連携室が転送を引き受けてくれる、とのことでその後の対応をお願いした。
時に、このような重症の人が、普通に歩いてくるから外来は怖いよなぁ、と改めて思った次第である。
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