第249話 とうとう医師も倒れる。

私がCOVID-19に倒れたときは、院内クラスターではなく、COVID-19と診断がつく前の患者さんの飛沫が顔に直撃したことで感染したのだが、第1回目のクラスターでは、複数のスタッフとともに医師も一人感染してしまい、クラスター対応+医師不足で大変だった。


2回目のクラスター発生時には、幸いなことにスタッフの感染はあり、看護部(看護師と介護士を管理)は大変だったが、医局は何とか持ちこたえることができた。


今回3回目のクラスター。私はいつも21時ごろに就寝するので23時ころのLINEに気づかなかったのだが、今朝起床し、スマホを見ると、土曜日に出勤する常勤の医師が「先程発熱と咽頭痛に気づき、用意していた抗原検査を行なうと陽性でした」とのメッセージが入っていた。医局のグループラインなので、みんな起床すると、「大丈夫ですか?お大事に」とメッセージを送る。その医師は、週明けの月曜日に外来があり、他の医師も週明けの仕事を気にしているようだった。ただ私一人が「今日の仕事、どうしよう」と心配していたが、そんなLINEを送るのも気が引ける。というわけで、今日のことについては黙っていた。


看護部とのLINEのやり取りがある女性の医師が、「今日出勤の外来師長にLINEしておいたので、今日の仕事は師長の指示に従ってください」とLINEをしてくださり、ありがたかった。


本来なら今日は、一人午前診で、そのあとワクチン外来、というハードな一日だったのだが、師長さんが「今日は今年最後の土曜日なので、外来を二枠にします(もう一人は当直明けの常勤医)。午後は先生はワクチン外来と病棟急変対応に専念してもらうため、時間外外来の受付を中止します(訪問診療の方や深く当院にかかりつけの方は除く)」との指示があり、私に配慮してくださり、大変ありがたかった。


マーフィーの法則、というべきか、ジンクスというべきか、「手間のかかる患者さんが一番最後に受診される」の法則、今日も発動した。左CVA領域の痛みで受診したが、発熱はなく、検尿は血尿はないがタンパク(3+)、浮腫はないという患者さん。患者さん自身は以前に罹患した尿管結石、と考えていたようだが、尿管結石の所見とは合わない。受付終了時刻の12時を15分も過ぎてから(もちろんその間は、他の患者さんの診察をしていた)診察を行ない、「ただ事ではない」と考えて、腹部CTと血液検査をする。血液検査の結果が出るまで20分ちょっとかかるので、おそらく決着がつくのは13時ころだろう、とあきらめて検査を出し、採血、CTの結果を待った。水腎症はないが、やはり左腎の形態がおかしい。腎梗塞のような楔形のへこみもあれば正常腎と同濃度ではあるが、不自然な隆起もある。


おそらく腎腫瘍で、腎被膜が引っ張られ、CVA領域に痛みが出ているのではないか、と愚考している。外注検査の結果を待って、腎臓内科、あるいは泌尿器科に紹介が必要だろう、と決着をつけて診療終了したのは、やはり13時。それから昼食を食べていると、病棟患者さんの診察依頼があり、診察、指示を出す。隙間時間を使って文章を書く。気が付くと14時を過ぎており、ワクチン外来が迫っていた。再度外来準備をして外来へ。ワクチン外来を終え、当直医に引継ぎのため、各病棟を回って重症患者さんを確認し、今に至る。


何とかスタッフ皆さんのおかげで、今日も乗り切れそうだ。良かったのが半分、来週は忙しいだろうなぁ、という思いが半分である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る