第80話 天狗の鼻

「ダニエル大尉!只今ダンジョン省長官から連絡があり、本日のダンジョン内任務終了後、作戦会議室で待機するようにとの事です」


「長官から?珍しいな、厄介事でなければ良いのだがな」


 俺はその後の任務を終わらせてから命令通りに会議室で待機している。するとダンジョン省長官と一緒に国防総省長官も入ってきた。俺は椅子から立ち上がり敬礼をする。


 我が国の軍隊の陸軍省、海軍省、空軍省を束ねる国防総省のトップがワザワザ俺のところへ?これは只事ではないな。俺はそう覚悟を決める。


「あぁ、楽にしてくれたまえ。今日はダンジョンマスターからの招待状を処刑人と呼ばれている大尉に届けに来たのだよ」


 そう言って今日起こった事を1から説明を受ける。ダンジョンマスターはとんでもないことを考えるものだな。そこで俺は1つの疑問が湧く。


「魔導王は参加するのですか?」


 そう聞いたがまだ未定のようだった。まあそうか。俺も今説明を受けているところなのだ。これから返答をしてから参加者が決まるのだ。それでも奴は絶対に参加するだろう。それなら俺も断る理由はないな。



         ★★★★★



 3日後、各国のエース達から参加表明と対戦希望ランクが記載された用紙がどんどんと日本のダンジョンギルドへ届いてくる。それを俺と雫はお茶とお菓子を食べながら眺めている。


 そして日本からも魔導王と東西南北の有名人も続々と参加表明してくる。これで合計24の団体が参加することになった。これはちょっと多いな…こんなにいると2日に分けないと途中でダレて来そうだよな。


 対戦希望ランクも大方はSランク。ただ3団体がその上を希望してきている。魔導王と剣姫、そして処刑人だ。前の二人は分かるけど処刑人も行けるのか?しかもメンバーも3名になっている。他は殆どが5名なのに。


 凄い自信だ。勿論俺は処刑人の討伐記録を動画で知ってはいるし、ジョブや魔法、スキルも知っている。そして自信の秘密も知っている。確かに強いし能力だけで言ったら日本以外では1番だろう。武器は魔石武器のエマヌエルの剣を二刀流で使って首を切り落としていく。この戦闘スタイルから処刑人という通り名がついている。


 この剣は大剣の部類なのだがダンジョン探索者なら振り回すのは容易で、案外この武器は人気がある。それでも俺自作のカイ辺りで精一杯な気がするのだけど。死んでも知らんぞ。


 そして厄介な団体がもう一つ。魔導王が俺を指名してきた。しかもこちらは一対一タイマンだ。ちょっと天狗になり過ぎちゃ〜いませんかね?まさかエクストラスキルが俺に効くとでも思っているのか?でもこれはイベントとしては有りかもな。伸び切った鼻をへし折ってやろうか。


 まあ殺しはしないけど大トリとしては盛り上がりそうだ。それ以外の団体には後日ランク付けされたカタログを持って会いに行ってあげよう。その後は前売りチケットや出店でみせ、レンタルビールサーバーなどの話しを詰めておかないとな。


 前売りチケットは3日後にダンジョンギルドが責任を持って販売してくれることに。当然全世界での販売となるので大慌てだ。そして告知動画をこれこら俺と雫で撮ることになっている。俺と雫の言葉は全ての言語に通じる様になっているから。ないと思うけど前売り券の売れ残り次第では当日券も用意することになる。ただ会場外にも特別スクリーンで観戦が出来るようにパブリックビューイング会場を設営することになった。


 なので実際に観戦に来る客は10万人では収まらないと予想される。それに併せて世界中の出店を1000店舗程用意したいので場所代は取らずに調理師免許さえ持っていれば店を出せる事を伝えてギルドで厳選してもらうようにとお願いする。多少食中毒になってもキュアで治せるのだけど。


 そしてダンジョン内に巨大なホテルを多数建てて寝泊まり出来るようにする。ルームサービスは一切なしで、設定を変えればどんなに滅茶苦茶に部屋を荒らしても朝の10時には元に戻るのでベッドメイクなども必要なく楽なものだ。そして外には出店。完璧じゃないか。その内テーマパーク化してジェットコースターとか置いちゃいそうだな…。


 じゃんじゃん建物を建てて地形も変えて行くのでDPもかなり使ってしまった。これでは100万人は入ってきて貰わないと赤字となる。ただ、今後も開催していけば施設などは使い回せるので直ぐに黒字になりそうだけど。それにチケット代もこれから入ってくるしね。


 チケット代は2日間観戦ペアチケットで500ドルとした。このチケットは前日と当日のホテル代も込みとなっているので格安だと思う。そして闘技場には入れないけど外のパブリックビューイング会場も予約制とする事にした。価格はペアで200ドルでホテル代込みだ。このチケットは無限に作ることができる。なんせ会場広場を広げるだけだからね。こうしないと何人来るのか前もって予想が出来ないので逆に困る。


 そして告知動画を撮り動画をアップする。チケットの販売開始は3日後。そこで今回参加する団体名を読み上げてから、最後に魔導王が俺との戦闘を希望しているので受けて立つ事を伝えた。これには世間が大盛りあがりし、大変な騒ぎとなっている。


 俺を崇拝しているグループからは魔導王に対し大バッシングが起こり、ダンジョンフリークたちは魔導王を熱烈に応援している。なんせネットは大荒れ状態だ。


 そして3日後のチケット販売当日。


 チケットはわずか5分で完売。パブリックビューイングの予約の方は40億人が応募してきてサーバーがダウンしてしまった。流石にこれは無理…。忘れてたわ…世界には最低でも30億人のダンジョンフリークが居ることを。


 何とか安全に入れる人数は闘技場内で10万人。周囲で30万人位だろう。それ以上は危険が伴ってしまうと思う。そしてホテルの客室もそこまで用意できない。どうせ戦闘自体は違う階層で行われるのだから同じ会場を10箇所くらいに増やしても良いか。そしてどの会場からでも戦闘を行っている場所の映像を巨大水晶に映すようにすれば良いかもな。


 そして今回の収益で更に会場を増やせば良いだけだ。ただ、リ・アースの地が闘技場とホテルだらけになってしまうという…。闘技場は積み重ねてバベルの塔の様にでもしてしまうか。型的にも見た目的にも悪くはないしその為に少し形を整えておこう。


 問題はホテルだよな…。リ・アースの雰囲気に合うように中世ヨーロッパ風の建物にして、エデンの里のあるの大陸から離してジャングルの中に蔦だらけにして隠しちゃおうかな、まるで古代遺跡のように。それを将来のリ・アースの冒険者が見つけるストーリーが…まあずっと先の話だろうけど。それともなければ地下に埋めちゃうか。元も子もないけどまあ追々考えていこう。


 





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