第11話

「あんたが春原守ね、ふぅん……。ちょっとツラかしなさいよ」


 うはー指名が来たー来たよ~。三番テーブルにご案内です~。

 じゃなくて……。

 嫌、ご案内したくないっ、きょ、今日は店じまいで。


「なにしてんのよ、ツラかしなさいって言ってるの!」

「きょ、今日はもう閉店で……」

「何言ってるの?!」

 

 うわっ、口に出してしまった。


 僕は彼女の言葉を聞かなかった事にしてギュッと目を閉じた。

 するといきなり何かが背中からすっと延びてきて僕の首に絡まる。

 それが人の腕だとわかるのにそう時間はかからない。

 腕を回した人は男の人で同じように少しやんちゃな感じの髪に、金のメッシュが入っている方だった。

 耳元でガムでも噛んでいるのかくちゃくちゃ音が聞こえてくる。

 右腕で僕の右腕を抑えつけ、左腕も黒いスーツを着た男性に抑えつけられた。

 僕は両サイドから腕を掴まれて、本世屋くん達が止めようとしても彼らに阻まれ、僕は隣の部屋に引きずられるように連れられてしまった。


「うわっ、ちょっ、ちょっと待って!」


 なんか以前にもこういう風に色んな人に拉致られた気が……。

 僕の拉致られ人生は健在なのだろうか。


 僕はそのアゲートとかという集団に囲まれてしまった。隣の部屋にも何人か人がいて、みんな格好が洒落てる。

 先ほどから香水の匂いがきつくて、クラクラした。僕より力の強そうな男の人に掴まれて僕は身動きが取れない。


「あんたには聞きたいことが山ほどあるのよ」

「は、はぁ……」

「私たち、イエロー達と違って、まどろっこしいのが苦手だから単刀直入に言うわ、滝川隆二とあんたってやっぱできちゃってる訳?」

「は、はぁ……」


 僕がどう返事していいかわからずにもごもごしていると、軽く舌打ちが聞こえた。


「はぁ……じゃわかんないんだけど?」


 目の前に座って一斉に見ている人達が怖くてマトモに顔が見れない。

 腕も左右二人の怖い男の人に掴まれ睨まれてるし、背後にも僕が逃げられないように塞いでる人がいるし。僕の髪の毛を勝手に指にくるくる巻いて弄っている人もいる。


「……っ失礼じゃないですか。いきなりこんなっ……」


 僕は半分消え入りそうな声で、それでもこんな状況に何か言わざるを得なくなった。

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