4.「仕込刀」みたいなやつだと思ってました
4-1.体験談がそのまま文字になってます
No.2908地理
No.5404隠し包丁
No.1919もずく
「とりあえず、生2つ。あとー、たたききゅうりと、もずく酢と、枝豆。まずこれだけで」
「あいよー、おまち」
「なあ、俺って勉強できねえじゃん?」
「あ? あー、まあ、できるタイプではなさそうやけど」
「んー、じゃあ思っとるよりできんねんな」
「なるほど。でもそんなんそこらじゅうにゴロゴロしとるやろ」
「いや、別に人と比較したいわけちゃうねんな。ただ……」
「ただ?」
「再来月子供産まれるからさ、不安でさ」
「おー、もうそんな時期か。おめでとさん。で、なにが?」
「お前は勉強できるで分からんかもしれんけどな。子供が小学生とか中学生とかなってみ。勉強教えれへんで」
「あー、そういう不安ね」
「せやねん。やから勉強やり直そ思ってさ」
「おお! それは偉いんちゃう?」
「でよ」
「おう」
「どないしたらええやろか?」
「あー、どうやって勉強したらええかってか? あわよくば教えろと?」
「そう! いやー、物分かりが良くて助かる!」
「んー、難しいな。まずどれくらいのレベルかが知りたいんやけど。記憶系は1回ええわ。んー、数学な」
「あの」
「おう」
「たぶん、算数からで」
「んー、まあ、じゃあやってみるか。って言っても、将来子供に教えることを見越すんやろ?」
「そうね」
「なら、単純に問題解けるだけやったらあかん。よし」
「お? なんやなんや?」
「正方形ってわかるか?」
「それなら分かるわ」
「じゃあちょっと、えーっと、はい。これ。描いてみ」
「正方形やろ? こんな感じで、全部のこの棒が同じ奴ね」
「もうちょっと数学的に言うと、すべての辺の長さが等しい。な? それだけか?」
「え?」
「全ての辺の長さが等しいだけで、正方形って言えるんか?」
「えー」
「……。この辺りはいわゆる定義ってとこやな。つまり、人間が勝手に決めた話やねんな。ただ何某かでルールを決められてんねん。それをきちっと理解しよなって話やな」
「なるほど」
「……。ちなみに、辺の長さが同じだけなら、例えば、こんなん。ひし形って習うけどな。これも該当してまうで」
「へー」
「はい、じゃあ、このひし形と正方形の違いは?」
「え? 全然形違うやん」
「せやで。で? 言葉を使って数学的に言えば、何が違うの?」
「えー、分からん」
「あかん! 多分お前は考えることに耐える能力がない! 考え!」
「えー、だって分からんもんは分からん」
「はい、生と、お通しのナスの煮浸し。お待ち。」
「……」
「……」
「……。どうや?」
「たぶん、この、角度が違う」
「そう! ええやん! つまりな、正方形ってひし形の中でも特殊なやつやねん。というのは、全部の角度が90度、ようは、直角でっせってやつな。で、それ以外は全部ひし形ってわけや」
「はー」
「せっかく勉強やり直すなら、こういうことやらんとな。またやろか」
「うっす」
「ただ、5教科やればいいって話でもないと思うねんな」
「というと?」
「たとえば、おあつらえ向きにお通しきとるやん?」
「え、ナス?」
「お前、ナスについてどれくらい知っとる?」
「え、ナスについて? えーっと、夏野菜?」
「あとは」
「あとー? んー、わからん」
「……。せっかくさ、子供に勉強教えれるようにするならさ、日常から出てくる疑問に答えれるようになる方が大事やと思うねんな。例えばこれもさ、ナスの表面に切り込み入っとるやん?」
「え、まあナスやし」
「これなんていうか知っとるか?」
「は?」
「これ、一応家庭科で習うけどな」
「しらん」
「隠し包丁」
「はー」
「あとは、せやなー。お前47都道府県全部言える? ついでに県庁所在地も」
「無理無理!」
「じゃあ、場所もほとんど知らんよな?」
「わかるわけないやん」
「でも、一部はわかるやろ? どこ?」
「え、まずは、岐阜やろ? それから、愛知、三重、静岡。あとー、沖縄と北海道。んー、あ、千葉もわかる。秋田も。ぐらい?」
「まあ、地元の近くが分かって、端と端も特徴的なのはわかる。で、千葉と秋田は何?」
「何って、夢の国行くやん? 千葉やん? あとは、奥さんの実家が秋田やから行くやん?」
「なるほどな。だから、勉強せんでも、一部地理は知っとるわけやん」
「そうやな」
「じゃあ、子供にもそうやって勉強させてやればええんちゃう? 旅行でいった場所のことくらいわかるやろ」
「なるほど! やっぱお前賢いな! 相談して正解やったわ!」
「でもお前、数学はやっぱ全然やから、これから定期的に勉強するで?」
「うー。んー。背に腹は変えられんか。頼むわ!」
「じゃあ、今日お前もちな! すいませーん、馬刺しと、刺身盛り合わせ!」
「あ、おい! てめー! あ、馬刺し2人前で!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます