3.数字のWikipediaなんて久しぶりに見ました

3-1.とりあえず描かせればネタになると思いました

No.9869デリーの鉄柱

No.9422正65537角形

No.3402笑止千万


 正65537角形を書かないと出られない部屋。そんな部屋があってたまるかと問い詰めたい。だって意味がわからないから。

 でも俺は今そこにいる。果てなんて見えない。部屋の端っこが見えない。あるのかもしれないけど、判別がつかない。

 そんな部屋の中央にポツンとテーブルが置いてあり、その上に一枚の紙切れとスマホが置いてある。「ここは、正65537角形を書かないと出られない部屋です。自力で思いつけないでしょう。さあ調べて書くのです。」

 何度見ても意味がわからない。そもそもまず状況が飲み込めない。

 たしかに、部屋の端がなければ、当然だが出口もない。つまり、出られない。

 納得感はある。もしかしたら本当に正65537角形を書かないと出られないのかもしれない。

 わからないなりにスマホを使ってみる。「正65537角形 書き方」。あ、出てくる。え、てか、そうか。大きくないと、そんな多角形書けんのか。これ、どれくらい時間かかるんやろか。てか、1人でできるんか?


「力が欲しいか?」

「え?」

「力が欲しいか? 若者よ」


 部屋中に唐突に声が響く。きっとこんな酔狂なことしやがってるやつが、高みの見物してるんだろ。


「力ってか、人が欲しい。単純に1人は厳しそうだ」

「よかろう。助手を授けよう」




「やあ、助手の青山だよ」


 程なくして、バイクで登場したのは助手を名乗る青山だった。


「青山さんは、詳細把握してんの?」

「大体全部聞いてるよ? だから早く書いちゃおう。じゃないと僕も出れないよ」

「うわ、可哀想に。ってか、やっぱこれ酔狂ジジイのせいか?」

「いや、僕の主人は妙齢の女性だよ?」

「みょうれい?」

「あ、えっと。僕も正確な年齢はわからないけど、たぶん20代だよ?」

「おい、青山! 何してんだ! 早く書くぞ!」

「そんなに張り切らなくても、既婚者だよ?」

「分からんだろうが! この俺の熱い気持ちでパッショナブルな正、えーっと、なんだっけ。図形を書いたら惚れてくれるかもしれんだろ!」

「笑止千万とはこのことを言うんだね」

「なに?」

「主人は駆け落ちで結婚されてるから、無理だよ? さ、張り切り過ぎず書ききろっか。はい、これ。鉛筆の代わりね」

「いやいや! でかいでかい! こんなん持って動けんわ!」

「でも、主人は天井に1個カメラをつけてて、そこから見てるだけだから、これくらい太くないと見れないし認めてもらえないよ?」

「くっそ。はぁ。持つのもきついし、動くのもきついし。多分おまけに削るのもえぐいよな」

「このサイズ感。まるでデリーの鉄柱だね」

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