第4話「もう一度あなたと婚約するなんてお断りです」


「ミラとは別れる!

 アリア! もう一度俺と婚約してくれ!

 そうすれば俺は王太子のままでいられる!」


殿下ならそうおっしゃると思いました。


でもあなたともう一度婚約するなんてお断りです。


それに私はすでにあの方の……。


「ちょっとガラン様! 

 あたしを捨てる気!?」


ミラ様が王太子殿下の腕を掴む。


「うるさい!

 今はそれどころではないんだ!」


ガラン様がミラ様を突き飛ばした。


突き飛ばされたミラ様はバランスを崩し尻もちをつく。


「あらあら?

 真実の愛で結ばれているお二人がケンカですか?」


「ミラとの事はほんの出来心だったんだ!

 頼むアリア、昨日のことは謝る!

 だからもう一度俺と婚約してくれ!」


王太子殿下が私の肩を掴もうと手を伸ばす。


王太子殿下の手が私の肩に触れる寸前、銀髪の少年が王太子殿下の腕を掴み後ろ手にひねりあげた。


「くそっ! 誰だ!

 俺はこの国の王太子だぞ!!」


「僕の婚約者に触れる人間は誰であろうと容赦しない!」


銀色の長髪をたなびかせた長身の美男子が、王太子殿下を威圧した。


「なっ!

 アリアの婚約者だと!」


「フリード様、どうしてこちらに?」


「アリアの学園での様子が気になってね」


「フリードとやら、今すぐ俺の手を離した方が身のためだぞ!

 でないと後悔することになるぞ!」


「あら?

 王太子殿下はフリード様の事をご存知ないのですか?」


「知らん!」


「宗主国の皇太子の名前を知らないとは…

…この国の王太子はどこまでも愚かだな」


フリード様が王太子殿下の腕を締め上げたまま眉根を寄せる。


「なっ! 皇太子だと……!?」


フリード様の腕を振りほどこうと、暴れていた王太子殿下が急に静かになった。


「フリード様、ガラン様がこの国の王太子なのは今日までです。

 明日からは弟のフィリップが王太子です。

 フィリップは賢い子ですから、宗主国の皇太子であるフリード様にこのような無礼は働きませんわ」


「アリアの弟なら信頼できるな」


フリード様がアメジストの瞳を細める。


フリード様、このようなところでほほ笑まないでください。


フリード様の笑顔は破壊力が高いですから。


「アリア、こんなときだが君が今身につけているドレス君によく似合ってる。

 可愛いよ」


「ありがとうございます。フリード様。

 フリード様の瞳の色と同じ色のドレスを選んだのですよ」


「本当かい?

 とても嬉しいよ」


フリード様と見つめ合いほほ笑み合っていると、王太子殿下が騒ぎ出した。


「ちょっと待て!

 アリア、お前フリード皇太子と浮気していたのか!?」


「王太子殿下と違って私は浮気などしておりません。

 フリード様とは幼いときにお茶会でお会いしたことがあるだけです」


「あのとき僕はアリアに一目惚れしたんだ。

 アリアに婚約者がいると知り、アリアと結婚することを一度は諦めた。

 だが昨日アリアとガラン殿の婚約破棄したのを知ってな。

 アリアとガラン殿の婚約破棄の書類が受理されたあと、アリアにプロポーズしたのだよ」


「フリード様は初恋のお相手でしたので、私は即日フリード様からのプロポーズをお受けしました。

 幼い頃フリード様とお会いした日、己に親の決めた婚約者がいることを恨みましわ」


「外交のためこの国を訪れていて良かった。

 アリアの婚約破棄される日にこの国にいられた事を神に感謝するよ」


「ちょっと待て!

 アリアの初恋の人がフリード皇太子とはどういうことだ?!

 それにアリアは俺との婚約が嫌だったのか?

 俺とアリアの婚約はアリアが僕に一目惚れして、アリアのわがままで成立したんじゃなかったのか!?」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る