第166話 選定の言葉をまとめよう…………参謀兼会計兼書記が!


 シロに言われて、ダンジョンに入ると、変な声が聞こえてきた。

 その言葉によると、50階層のボスを倒せば、トランスバングルが手に入るらしい。

 しかし、30日以内に攻略しないと、このロクロ迷宮は消え去り、俺は永遠に男に戻れないようだ。

 そして、俺のジョブはカオス。


 俺とシズルとちーちゃんはすぐに協会に戻った。

 協会はいつもと変わらない風景であり、まだ、事態の把握をしていないようだった。

 俺達はすぐに2階の応接室を借り、先ほどの言葉をまとめ始めた。


「えーと、まずは第2フェーズに入ったから、いらないダンジョンを消すんだったね」


 ちーちゃんはそう言いながら持っていたノートに書く。


「だなー。シロ、どういう意味かわかるか?」


 俺は机の上にいるシロに聞く。


「ダンジョンは世界各地にあるんだけど、その中には立地が悪すぎて、人が来ないダンジョンもある。そんなのはいらないから消すんだろ。それが選定」

「選定の基準が高すぎね? あの神様じゃない人は60階層とか言ってたぜ」

「まあ、その辺は適当なんだろ。だから、お前が文句を言ったら、すぐに50階層に下げた」


 いい加減だなー。


「他のダンジョンもかね?」

「多分なー。まあ、ハードルの低いダンジョンもあれば、無理なダンジョンもあると思う」


 俺、ファインプレイじゃない?


「なるほど。ちーちゃん、書いて、書いて」

「書いてるよ。えーっと、次は報酬だね。まあ、ルミナちゃんの要望が通って、トランスバングルか」

「やったぜ」


 これも俺のファインプレー!


「あの言葉って、どれくらいの人が聞いていたのかな?」


 シズルが聞いてくる。


「俺らだけ?」


 俺に聞かれても、わからないので、シロに振る。


「うんにゃ。最初は世界中の全ダンジョンだ。途中から、ここのダンジョンだけに変わったな」

「じゃあ、ロクロ迷宮にいた人はあの声とルミナ君の会話は聞こえてたってこと?」

「相棒の声は聞こえてねーけどな」

「皆から怒られないかな? 勝手に報酬を決めちゃったけど」

「俺の声は聞こえてねーから大丈夫だよ。きっと俺じゃない人が要望したんだ」


 間違いない。

 俺は悪くないね。


「いや、無理でしょ。トランスバングルを欲しがる人って、ルミナ君だけじゃん」


 まあ……ね。


「そもそも、強欲な小娘とか、魔女とか言われてからバレバレだよ」


 ちーちゃんが半笑いで言う。


「まあ、別に大丈夫だよ。そもそも50階層に行けそうなのは、≪正義の剣≫か≪ヴァルキリーズ≫だ。あいつらは文句を言わん」


 サエコは言うけどね。

 その場合はショウコに泣きつこう。


「まあ、その辺はあんたに任せるよ。しかし、30日以内かー。厳しいね」

「問題はそこだ。もう≪正義の剣≫と≪ヴァルキリーズ≫をマジカルテレポートで40階層まで運ぶしかないと思ってる」


 最悪、料金はいい。

 俺はトランスバングルさえ、手に入ればいいのだから。


「まあ、その手が一番かね。とりあえずはこの辺か…………次はルールか…………ちょっと書いていくよ」


 ちーちゃんはそう言って、ルールを書いていく。


 ルールと言っても、そう変なのはない。

 ただ、中には人を殺したら経験値が手に入るという項目もある。

 協会はどうすんのかねー。


 ちーちゃんはシズルと協力し、ルールを書いている。

 俺は邪魔をしないようにそれを見ているだけだ。

 覚えていないわけではないが、若干、聞き逃してたしね。


「こんなもんかな。抜けはない?」

「大丈夫だと思います」


 終わったらしい。


「おつかれさん。それにしても、下が騒がしくなってきたな」


 俺は2人の労をねぎらうと、扉を見る。


「多分、ダンジョンに行っていた人が帰ってきたんだろうね」

「まあ、あんなことがあれば、すぐに帰りますよね」


 ちーちゃんとシズルも扉を見た。


「最後はジョブか……」

「だねー。ニュートラル、オーダー、カオスの3種類」

「あと、超カオス(笑)」


 ムカつくわー。


 ちなみに、もうカオスに戻っている。

 マジで、復讐だったらしい。


「この分類って、意味あんの?」


 俺はシロに聞いてみる。


「あるぞ。まずニュートラルだが、これは頑張れば、誰でもなれる。大変だけどな。オーダーとカオスは当人の性格が影響する。そして、引っ張られやすいんだ。ほれ、さっき聞いたネクロマンサー君は引っ張られた結果、ああなったんだよ」


 カオスな人間になっちゃったわけね。


「じゃあ、シズルは秩序に引っ張られるん?」


 こいつの忍者はオーダーらしい。

 ってか、忍者って、秩序あんの?


「まあ、忍者はそんなに引っ張られないと思う。≪Mr.ジャスティス≫なんかが根っからのオーダーだな。聖騎士だし」


 まあ、≪Mr.ジャスティス≫はそんな感じがする。

 本人も本望だろう。


 ってか、ハヤト君の勇者はすごそう。

 秩序の塊だ。


「それで俺が大丈夫なのは何でなん? 俺もカオスになっちゃうだろ」

「いや、だから、お前は自己愛が強すぎるから大丈夫なんだよ」

 

 何それ?

 イミフ。


「つまり、魔女のカオスはたいしたことないわけか」

「いや、トップクラスにヤバいぞ。でも、お前はそれ以上にヤバいから大丈夫なの。それにお前の頭の中はお花畑だから問題ない」


 めっちゃバカにしてるし。


『シズルとヤることしか、頭にねーだろ』


 念話で補足してきた。


 まあ、その通りです。


「問題ないならいいや。今はそんなことよりもロクロ迷宮だ」

「まあ、そうだね」


 ちーちゃんが頷く。


「どうする? 本部長かマイさんを呼ぶ?」

「呼んできて。俺はサエコと≪Mr.ジャスティス≫を呼ぶわ」


 俺はシズルに本部長とマイちんを呼ぶように言い、サエコと≪Mr.ジャスティス≫に電話をする。

 

 ってか、いるかねー。


 俺は両名に電話をするが、出ない。

 ダンジョンの中かもしれん。


「ダメだ。出ない」


 使えないヤツらだ…………


 俺がクランリーダー2人を役立たず認定していると、シズルがマイちんを連れてきた。


「貴方達、話は本当なの!?」


 マイちんが焦ったように聞いてくる。


「本当だよー。下はどんな感じ?」

「もう大騒ぎよ。帰ってきたエクスプローラ達から続々と報告がくるの。でも、正直、情報が錯綜して、何が何だか…………」


 パニックになってんのかな?


「本部長は?」

「本部長は病院に行って…………いや、貴方と話してたでしょ。その後、ダンジョン省に報告に行ったわ」


 そういえば、そんなことを言っていたような気もする。


「なるほど。ちーちゃん」


 俺はちーちゃんに目でノートを渡すように言う。


「はいよ。私達も聞いていて、まとめましたので、どうぞ」

「ホント!? 助かるわー。ゴメンけど、ちょっと借りるわ。コピーしてくる」


 マイちんはそう言って、出ていった。


「ちなみに、あのノートに俺が要求したとか、書いてある?」

「当たり前じゃん。強欲な小娘って、呼ばれてたことも書いたよ」


 それはよろしくないわー。





攻略のヒント

 

 全ダンジョン攻略のトータル進捗度が10パーセントに達したから、第2フェーズに入った。


 第2フェーズでは、不必要なダンジョンを処分し、必要なダンジョンを残す。

 これが選定らしいが、基準は曖昧。

 未発見のダンジョンは処分済み。

 その他のダンジョンは一定の基準を満たすことを条件に残す。

 期間は30日であり、3月26日まで。


 ロクロ迷宮では、50階層攻略。

 最初は60階層だったが、ルミナちゃんが文句を言ったら50階層になった。

 また、クリアしたら特別報酬があるようだが、これもルミナちゃんが図々しくトランスバングルを要求していたので、トランスバングルになった。

 さらに金銭も要求したが、怒られて、強欲な小娘と呼ばれていた。


 トランスバングルはこのロクロ迷宮にしかなく、他に男に戻れる手段はなさそう。

 ルミナちゃんのマジカルテレポートを駆使して、何とかしたい。



 ルールとジョブについては別ページ参照。



『とあるノート』より

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る