第085話 優しさって、なーに?
シズルの誕生日が来月であるという衝撃の事実を知り、アカネちゃんやカナタに責められながらプレゼントを決めた次の週に、ロクロ迷宮が解放された。
俺達≪魔女の森≫は土日を使って、ダンジョンに行くことに決め、土曜の朝に、俺の家に集合することにした。
集合時間は朝の10時であったが、シズルを除いた4人は9時に集まっていた。
別に、シズルをハブにしているわけではない。
シズルの誕生日プレゼントを決めるために、早めに来ているのだ。
「しかし、ルミナちゃん、シズルの誕生日を知らなかったって、マジ?」
ちーちゃんがテーブルに頬杖をつきながら、呆れている。
さっきまでは、和やかにプレゼントを決めていた4人であったが、アカネちゃんが俺がシズルの誕生日を知らなかったことをチクると、この場はプレゼントを決める場ではなく、俺を責める場に変わってしまったのだ。
「普通、知らねーよ」
「いや、普通は気になるもんでしょ。ましてや、あんたの場合は特に」
「……うるせーな」
どうせ、ダメな男ですよ!
「でも、ちゃんとプレゼントも用意したし、大丈夫ですよ」
カナタが俺のフォローをしてくれる。
どうして、こんな気の利く良い子の姉がちーちゃんなんだろうね。
「でも、最初は松島姉妹に贈ったものと、同じものを贈ろうとしてましたけどね。センパイとは長い付き合いですが、さすがに、ここまでの男なのかと呆れました」
ひどい言い様だな。
「あんた、マジ?」
「偶然だよ。プレゼントの意図が違う。アヤとマヤは好意からではなく、見分けをつけるためにくれてやったんだ。シズルは髪が綺麗だから良いかなと思ったんだよ」
こういう風に考えると、俺は悪くない気がする。
「そして、この言い訳です。自己中、ここに極まれり」
この前から俺に対するアカネちゃんの当たりが強い。
「あんたさあ、シズルがあんたの誕生日に、瀬能にあげたものと同じプレゼントだったら、どう思う?」
…………すげー、嫌だわ。
3日3晩、悩みそう。
「瀬能を殺したくなるな」
「ひどいな。例えでもやめてくれよ」
「瀬能、お前は俺の味方だよな? 俺の気持ちがわかるよな?」
カナタが特殊なだけで、男なんかこんなものだろう。
「神条、先輩として言ってやる。ダメだ」
瀬能、お前もか…………
「お前もモテそうだなー」
「あのな、それ以前の問題だ。前から思ってたけど、お前の好意は独善的すぎる。ダンジョンでは真面目で、細かいところに気がつくのに、どうして、それを日常に生かせないんだ?」
あ、瀬能の説教が始まった。
「俺、優しいよな?」
俺は唯一の味方であるカナタに助けを求めた。
「優しいですよ。ただ、まあ、えーと、その、いや、なんでもないです」
えぇ……
何、その反応?
「言え」
「えーと、たまに、たまーにですよ? 雨宮さんへの好意の押し付けがひどいなーって」
ガーン!!
……予想以上のダメ出しだった。
「お前らはどう思う?」
ショックを受けた俺は、他の3人にも意見を求めることにした。
「この前も言ったじゃないですか。シズルは俺のものーとかほざいてるところですよ」
「ボクと初めて会った時もそうだったが、雨宮さんに男が近づかないように威嚇しすぎだ」
「あんたがシズルのことを考えているのはわかるよ。でも、やりすぎ」
こいつら、胸の内でそんなことを思っていたのかよ。
「悪くないじゃん。俺はあいつのことを考えているんだよ」
実際にシズルと街を歩いていると、ヤバそうな男がシズルに声をかけることがある。
あいつって、変なヤツに人気なんだよな。
「悪くはないよ。実際、シズルも助かっているだろうし。だから、余計にたちが悪いんだ。完全に束縛男だね」
「そうかなー?」
そんなに束縛してるかなー?
「センパイ、前にDV男の話をしたのを覚えていますか?」
以前、アカネちゃんのパーティー移籍について、ウチの姉妹に説明しに行ったことがあった。
その道中の雑談で、アカネちゃんと話していたことだ。
「あいつが将来DV男に捕まる話か?」
「それです。そして、センパイはその男にかなり近づいています」
「いやいや、殴らねーし、金もせびらねーよ」
「あの時、私はセンパイにそうならないように、シズル先輩に優しくしろと言いました。しかし、それが間違いでした。センパイ、優しさを履き違えないでください」
「じゃあ、どうすればいいんだよ」
優しさって何?
「プレゼント選びと同じです。シズル先輩に何かをしようとした時は、ちゃんとシズル先輩のことを考えてください。自己満足にならないようにしてください」
「…………はーい」
俺はアカネちゃんに説教されて落ち込んできた。
何がひどいって、他の3人も頷いていることだ。
「神条、ボク達は君を応援しているんだよ?」
「そうなん? クソ生意気な後輩をいじめてるんじゃないの?」
「いや、後輩をいじめたりはしないよ。純粋に仲間を応援しているんだよ。言っておくが、付き合ってもゴールじゃないぞ。むしろ、そこからが大事なんだ。君だって、せっかく付き合えたのに、すぐに別れたくはないだろう?」
良いことを言っているのはわかるが、クソ生意気については否定しないんだな。
「そりゃあ、そうだけど」
「だから、ボク達はこうして教えているんだよ。柊さんやカナタ君だって、本当は言いたくないけど、君のことを想って、言っているんだ」
「そうなん?」
カナタはなんとなくわかるが、アカネちゃんもなのだろうか?
「そうですよ。センパイの性格が悪いのなんて、初めて会ったときから知っていますし、今更、治せなんて言いません。でも、センパイがシズル先輩のことを好きって言うから、こうしてアドバイスしてるんです」
アカネちゃんって、めっちゃ良いヤツじゃん!
「俺、アカネちゃんのことを誤解してたわー」
「反省してください」
「今日から幼なじみを名乗っても良いからな」
「それはどうでもいいです」
まあ、どうでもいいか。
それよりも、こいつらがこんなに仲間思いだとはなー。
うーん、この思いに応えよう!
「ちなみに、お前らの誕生日っていつ?」
「あたしは4月15日」
「ボクは5月8日だね」
「僕は2月22日です」
「よし、覚えておこう」
メモ、メモ…………
「あんたは? ってか、アカネは?」
「私とセンパイは12月12日です」
「え? 同じ日?」
「そうです。最悪です。1日でいいからずらしてほしいですね」
ちょーわかる。
「何でさ?」
「一緒に祝われるからですよ。昔からセンパイの家で祝われるんですけど、センパイと一緒だから特別感が2分の1になるんです」
ちょーわかる。
祝う方は2倍楽しいだろうが、祝われる方はもう1人の方が邪魔なのだ。
しかも、アカネちゃんにプレゼントを渡さなければならない。
何故、自分の誕生日にプレゼントを渡しているのかと微妙な気分になる。
「そんなもんなの?」
ちーちゃんは俺にも尋ねてきた。
「子供の時は特に嫌だったな。本来なら主役は自分なのに、何故か隣にも主役がいる」
「私達の時は別々に祝ってくださいね」
「無茶言うな」
「いえいえ、午前中に私を祝い、センパイは午後から祝ってください」
ナイスアイディア!
アカネちゃん、賢い!
「めんどくさ」
「アカネちゃん、この冷血女に優しさを説いてやれ」
「はい! チサト先輩、優しさというのはですね…………」
「わかった、わかったから! ハァ……めんどくさい2人」
その後、4人はシズルへの誕生日プレゼントの話し合いに戻り、プレゼントを決定したのであった。
攻略のヒント
こんにちわー!
朝見てる人はおはよう!
夜見てる人はこんばんわ!
今日もあきちゃんが知ってるエクスプローラを紹介しちゃいまーす。
第4回目は悩んだんだけど、この人!
坂本ケンジ先生でーす!
まあ、皆は当然、知ってるよね。
≪教授≫です。
この人を紹介するかは迷ったんだよね。
≪教授≫は世界にダンジョンを知らしめた人なんだけど、あの動画のせいで、多くの人が亡くなっちゃったからね。
あの動画は賛否両論あって、≪教授≫について触れると、あきちゃんのブログが炎上しちゃう可能性もあるんだ。
でも、あえて、触れましょう!
何故なら、私にとっては≪教授≫は恩師だから。
今日、初めて言うけど、私は≪教授≫のゼミ生なんだ!
迷惑や苦労もいっぱいかけられたけど、私がこうしてエクスプローラを続けられているのは≪教授≫のおかげだし、感謝してる。
だから、あえて、言おう!
≪教授≫、坂本先生は悪くない!!
あーあ、これであきちゃんのブログは炎上が決定しました。
まあ、いいや!
≪教授≫についてだけど、皆も知ってる通り、かなり強いよ。
≪教授≫はジョブを調べるために、かなり努力して色んなジョブを経験したからね。
スキルもいっぱい持ってるんだよ!
でも、Cランク!
理由は…………まあ、問題を起こしてばっかりだからだね。
これについては、さすがのあきちゃんも擁護できません。
日本三大ランク詐欺、別名、日本三大エクスプローラの恥の1人だね。
ちなみに、あと2人は≪白百合の王子様≫のユリちゃん、≪陥陣営≫のルミナ君だよ。
現在の≪教授≫は、あの≪勇者パーティー≫に所属しているよ。
≪勇者様(笑)≫、可哀想にねー。
じゃあ、ここで裏話を1つ!
≪教授≫は実は大阪出身なんだ!
だから、お酒を飲むと、関西弁になっちゃうのだー!
どうでもいい!!
さーて、次の更新は誰を紹介しようかな~。
あきちゃんのブログがまだ残っていれば、お楽しみにー!!
みんなちゃーんと、毎日チェックしてね?
『≪モンコン≫ことBランクエクスプローラ春田秋子のブログ』より
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