第083話 席替えと文化祭


 シズルと先生達を空の旅に連れていった翌日、ついに二学期が始まった。

 暦の上では秋だが、まだ暑いので、薄着に着替えた俺は学校へと向かう。


 学校に着くと、1年生の髪の色がより一層ひどくなっていた。

 茶色ならまだしも、青、赤と目が痛い。

 きっと、2年生、3年生の真似をしたのだろう。

 さすがはエクスプローラと言えなくもないが、正直に言ってダサい。


 俺は夏はバカが増えるなーと思いながら、自分の教室に入り、席に着く。

 もちろん、土井の隣である。

 とはいえ、今日は席替えがある。

 今度こそ、シズルの隣になりたいと思う俺であった。


 しばらく、隣の土井と話していると、昨日、年甲斐もなく、はしゃいでいた伊藤先生がやってきた。


「みんな、おはよう。いやー、毎年の事らしいが、すごい光景だなー」 


 伊藤先生は教壇の上から生徒を見渡しながら言った。

 ウチのクラスの連中にも髪を染めている連中がチラホラいるのだ。


「まあ、好きにしなさい。まずは、誰かさんから強い要望を受けたので、席替えをする。新学期になったし、ちょうどいいだろ」


 先生がそう言うと、前の連中は喜び、後ろの連中からは不満の声があがった。


「誰かさんって、絶対にあいつだろ!」

「他にいないでしょ」


 後ろから誰かさんを決めつける声が聞こえる。

 

 決めつけは良くないぞ!


「じゃあ、くじを引けー」


 先生は一学期から使っているくじを教壇の机の上に置いた。


 そして、出席番号順にくじを引いていく。

 最初は出席番号1番のシズルである。


 シズルはくじを引くと、7番だった。

 7番は2列目の一番前である。


 あいつ、よりにもよって、一番前かよ!

 

 シズルの隣になるには、俺も一番前にならないといけない。

 俺は後ろのほうがいいのに!


 その後、次々とクラスメイト達がくじを引いていった。

 皆、席の良し悪しで一喜一憂している。

 

 そして、ついに俺の番となった。

 シズルの隣である1列目の一番前はすでに埋まってしまっており、残っているのは、3列目の一番前である。

 っていうか、今、俺が座っている席だ。


 俺は立ち上がり、神に祈る。


 お願いします。

 どうか、シズルの隣でありますように!


 日頃の行いが良い俺は、神の御加護を信じ、くじを選ぶ。


 これが良さそうだな!


『可哀想だから教えてやるけど、それは25番だ。窓際の一番前だな』


 え!?


 俺はシロの念話を聞き、思わず手が止まった。 


「ん? どうした、神条? さっさと引け」


 伊藤先生は動きが止まった俺を急かす。


『マジで? どれが13番だ?』

『右のやつだな』

『これか?』

『いや、もっと右』

『これ?』

『もうちょっと前だ』


 俺はシロの助言に従っているが、中々、見つけらない。


「おい、神条、早くしろよ」

「そうよ、早くしなさいよ、誰かさん」


 後ろで待っているクラスメイトが不満を言ってくる。


「ちょっと待ってろって」


 俺はシロの念話により、お目当ての番号を探し続ける。


「どうせ、13番は当たらないから早くしろよ」

「山崎、黙ってろ!」


 俺は山崎を睨む。

 

 そして…………


『これか?』

『それだ』


 俺はくじを引き、紙を開けた。

 すると、そこには13番と書いてあった。


 やったぜー!

 ナイスだ、シロ!


『良かったな』


「13番でーす」

「そうか…………すごく怪しいが、一番前の席だし、まあいい」


 伊藤先生は俺が何かしたと思っているようだ。

 

 生徒を信じろよ!


「あいつ、絶対に何かしてたろ」

「魔女だし、変な魔法でも使ったんじゃない?」


 クラスメイトも怪しんでいる。


「うるせー! 早く引けよ」


 俺は意気揚々と自分の席に戻った。

 

 皆、怪しんでいるのだろうが、誰も一番前の席は嫌なので、特に不満はないようだ。


 そして、クラスメイト全員がくじを引いたので、席を移動し始めた。

 俺は動かなくて良いので、そのままでいると、隣にシズルがやってきた。


「ねえ? 何をしたの?」

「神のお告げを聞いていただけ」


 シロさま~。

 今日は鳥もも肉をお供えしますー。


『よいぞ、よいぞ』


「シロかな? まあ、いっか。よろしくね」

「おう!」


 今日は実にいい日だなー!


「じゃあ、席替えも終わったことだし、次は文化祭の話だ。お前らも知ってると思うが、文化祭は来月の始めに3日間の日程で行われる。その時に親御さんと面談もするからなー。それで、今からこのクラスの文化祭の出し物を決めろ。言わなくてもわかると思うが、学生らしいのにしろよ」


 ダンジョン学園は基本的に外部者は立入禁止である。

 しかし、この文化祭の時には、解放される。

 そして、親を呼び、三者面談を行うのだ。

 ちなみに、ウチは母親がくる。


「あ、文化祭の実行委員を先に決めろ。誰か立候補はいないかー? いないなー。じゃあ、山崎と篠山がやれ!」


 伊藤先生は勝手に指名した。


「え!?」

「何で、俺!?」

「目が合ったからだ」


 中々にひどい選出理由である。

 ってか、あんたが話しているんだから、皆、あんたを見るだろ。


「ひでー」

「いいから前に出ろ。じゃあ、私は職員室に戻るから決まったら教えてくれ」


 伊藤先生はそう言って、さっさと教室から出ていった。


「えーと、じゃあ、何かしたいことはある?」


 山崎と篠山は前に出ると、篠山が仕切りだした。

 まあ、山崎のアホが仕切れるとは思えないので、妥当な判断だ。


「何かって、言われてもなー」

「急に言われても……」


 クラスの連中は特にやりたいことがなさそうだ。

 俺もない。

 文化祭はあちこち(お姉ちゃんのクラス)を見て回るので忙しいのだ。


「皆、何かやりたいことないのかな?」


 隣にいるシズルが話しかけてきた。

 

「ないんじゃない? お前が歌えば?」

「無理よ。まだ、一応、事務所に所属してるし」


 そういえば、前にそんなことを言ってたな。


「お前はやりたいことないの?」

「うーん……ダンジョン学園って、何をするの?」

「別に他の学校と変わらないぞ。店をやるクラスもあれば、演劇をやるところもある。俺は去年、川崎支部でたこ焼きを焼いていた」


 結構、儲かったな。

 マヨネーズが大活躍だったのを覚えている。


「へー。楽しそう」

「だってさ」


 俺は目の前にいる篠山を見た。


「たこ焼き屋がいいの?」


 俺達の話を聞いていた篠山がシズルに聞く。

 

「いや、別に、たこ焼きに限定はしてないよ」

「俺は2年連続でたこ焼きは嫌だわー」


 あれは地味に暑いし、疲れる。


「とりあえず、飲食店って意見ね。山崎、書いて」

「ほい」


 篠山は山崎を顎で使う。

 山崎はこんな立ち位置である。


「他にある?」

「俺は楽なのがいいなー」

「あんたは黙ってて。クラスの和を乱すな」


 ひどい。

 完全に厄介者扱いだ。

 何故か、俺はこんな立ち位置である。


「飲食店でいいんじゃね?」

「まあ、演劇とかは大変だしね」


 後ろから飲食店擁護の声が聞こえてくる。

 

 どうも、流れ的に飲食店になりそうである。


 俺はちょっと反対だ。

 飲食店の嫌なところは俺を戦力に数えられる可能性が高いことである。


「飲食店だと、何がいいかな?」


 篠山も飲食店の意見に傾いているようだ。


「飲み物を売るのがいいぞ。業務用スーパーで安く仕入れれば、安価で提供できる。そして、楽だ」


 店番が数人いれば、事足りる。


「あんたは本当に黙ってて」


 すげー睨まれた。

 画期的なアイディアなのに。


「シズル、あんたは何がいいの?」


 篠山はシズルに話を振った。


「うーん、飲食店って、何があるかな?」

「定番は焼きそばとかじゃない? まあ、出店っぽいけどね。あとは古いけど、メイド喫茶とか」

「ルミナ君、メイドになりたい?」


 篠山と話していたシズルが俺を見てきた。

 

「絶対にやらねーぞ」


 何で、俺がやるんだよ!

 お前らがやれ!

 あと、コスプレするのは好きだが、やらされるのは嫌いだ。

 

「ルミナ君にメイドは無理かー」

「っていうか、こいつに接客は無理でしょ」


 いらっしゃいませー!

 

 うーん、やりたくない!!


「もう、焼きそばでいいじゃん。簡単だし、誰でも作れるぞ」


 俺はやらないけどな。


「焼きそばねー。何か捻りがないというか……」


 篠山も真面目だねー。

 適当でいいのに。

 

「じゃあ、豚肉の代わりにオーク肉でも使えよ。オークなら弱いし、前日に集められるだろ」

「オーク肉の焼きそばか……確かに、それならダンジョン学園っぽいね。でも、オークは弱くない」

「じゃあ、俺が補充係になってやるぞ」


 オークなら楽勝だし、これで文化祭は遊べる。


「うーん、皆はどう思う?」


 篠山が皆に意見を聞く。

 

「誰かさんにしては、良いアイディアじゃん」

「うん。焼きそばなら私でも作れそう。誰かさんも、たまには良いことを言うね」


 俺のあだ名が誰かさんになってる!


「特に反対意見はなさそうね。じゃあ、誰かさんのアイディアを採用して、オーク焼きそばにします」


 無理やり、誰かさん呼ばわりしてんじゃねーよ!


「焼きそばだってさ」

「うん。誰かさ……ルミナ君はオーク狩りを頑張ってね」


 シズルは前にちーちゃんとオークを狩りまくったから、嫌気がさしている。

 

 これは手伝ってくれそうにないな。

 1人は嫌だし、アカネちゃんとカナタを誘おう。

 後輩なら手伝ってくれるだろ!





攻略のヒント

 みんな~、元気ー!

 あきちゃんは超元気!!

 今日も有名なエクスプローラを紹介してくよー。

 

 第3回目は予告通り、この人!


 長谷川ショウコさんでーす。

 

 クラン≪ヴァルキリーズ≫の副リーダーさんだよー。


 この前もブログで書いたけど、ショウコさんはあきちゃんと同じ第二世代で、大学の同級生なんだー。

 しかも、高校も同じだよ!

 

 ショウコさんはサエコちゃんと幼なじみなんだけど、同じ高校には通えなかったんだ。

 

 何故って?

 

 ププ、私とショウコさんが通っていた高校は偏差値が良いんだ。(←自慢!)

 

 でも、サエコちゃんは…………ね?

 

 おーっと、これ以上言うと、また、いじめられちゃうから言わないぞ~。


 ショウコさんの話に戻るけど、ショウコさんはすっごく強いんだよ!

 ショウコさんの二つ名は≪難攻不落≫。

 

 ショウコさんは鑑定をいっぱい持ってるから、ローグ的な役割をすることが多いんだけど、実は魔法も使えるし、近接戦闘も得意なんだよ。

 

 ショウコさんのジョブが何なのかは教えてくれないから知らないけど、きっと、すっごいジョブだと思う!


 あと、実質≪ヴァルキリーズ≫を運営しているもショウコさん。

 もうショウコさんがリーダーでいいよね?

 

 完璧超人!

 


 じゃあ、今回も裏話を話しちゃうぞー!


 ショウコさんはすっごい良いとこのお嬢さんなんだよ。

 ショウコさんのお家に遊びに行ったことがあるけど、ちょービビる。

 

 それにショウコさんは高校の時、本当にキレイで、まさしく、お嬢様って感じだったんだ。

 今はいつもジャージだからわからないと思うけど。

 大学に行ったら急にあんな芋系のジャージ女になっちゃったんだよね。


 どうした、ショウコさん?


 あ、あと、皆が大好きな≪陥陣営≫ことルミナ君が頭が上がらない人の1人だよ。


 まあ、あの人は優しくしたり、褒めたりすると、すぐに懐くから篭絡しやすいんだけどね。(←某受付嬢が言ってた!)

 


 次の更新は誰を紹介しようかな~。

 お楽しみにー!!

 みんなちゃーんと、毎日チェックしてね?


『≪モンコン≫ことBランクエクスプローラ春田秋子のブログ』より

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