第9話 奴隷にはまる気持ちは分からないでもない
善は急げと、次の日に俺は早速奴隷商人の元へ訪れた。
俺が訪れた先は奴隷を扱う商会の中でもかなり大きい。
事前に連絡はしてあるので、商会の会長が応対してくれる。
まぁ上級冒険者は金持ってるからな。向こうも良いのを高く売りたい。
「カーガン商会の会長、カーガンでごさいます。名高い天騎士様にご利用いただければ、我々としても名誉でございます」
「そうか。俺が欲しいのは留守中に家を維持管理してくれる奴隷だ」
「勿論そういった役割が出来る奴隷はご用意しております。此方へお越しください」
カーガンのおっさんに連れられて建物内を歩く。
奴隷商会なんてパーティーを組んでたら来れない。
当然初めて来たのだが、随分と奇麗なものだ。
流石に見世物小屋のようにはしないか。そんなので買う気は起こらん。
「こちらに候補の奴隷を用意しております。お入りください」
カーガンが奥の部屋のドアを開けると、8人ほどの少女が座っていた。
俺が室内に入ると同時に全員が立ち上がる。一糸乱れぬ様子に少しばかり驚いた。
そして少女たちの対面に椅子が用意され、俺はそこに座る。
カーガンは横に控えた。
ああ、これは面接だな。些か想像とは違うが、俺の求める人材には間違いなく沿うだろう。
少女達の服装は色こそバラバラだったが、みんなワンピースで統一されており、髪にワンポイントのアクセサリもつけている。
どの少女も奴隷にはとても見えない。
貴族とは言わないが良い所のお嬢さんが並んでいると言われても疑わないぞ。
広場でダンスでも躍らせればお捻りが沢山貰えるだろうな。とどうでも良い事を思った。
カーガンの指示で少女はそれぞれ自己紹介と得意なこと、アピールポイントなどを言い、最後にスカートの両端を掴み俺にお辞儀をして座る。
どの少女達もよく教育されているようだった。俺の質問にもハキハキと答えるし、返答もわかりやすい。
甲乙つけがたい。人間、それも少女を評価するなんてとかつてのパーティーメンバーのレナティシアが知ったら怒りそうだ。
全員買って連れ帰ってもいい。俺にはそれだけの金があるし。
いやいや、接待のような場だから浮かれた考えになってしまった。
俺が欲しいのはあくまで家の管理や家事、雑用だ。
二人いれば十分だ。
俺は少女達の顔を眺めながら、好みで決める。
元々この場に集められた時点で基準は超えているんだ。
一番左の亜麻色の髪と、右から二番目の銀色の髪の少女を選ぶ。
この二人で俺が買った家の半分ほどの値段がする。俺は即金で支払い、10日後に受け取りに来ると伝える。それまでは家事でも更に鍛えさせてくれ。
他の少女たちは俺に頭を下げて退席し、カーガンと買った二人が残る。
「改めまして、私はノエルと申します。姓はございません。精一杯尽くします」
「私はアーネラと申します。買って頂きありがとうございます。私もご満足いただけるように努力します」
「期待している」
若い少女二人にこう言われると、悦に入る人間の気持ちもわかる。
なかには奴隷でハーレムを作る人間もいる位だ。
この少女二人は流石に女として抱くには幼い。
十分育ったら相手をさせても良いな。
奴隷に関する契約書や帝国の現法、諸注意などをカーガンからレクチャーされる。
こういった契約だのは面倒なんだが、疎かにすると余計大変な目に合うのが常だ。
「それじゃあ、迎えに来た時はよろしくな」
少女二人はそろって返事をする。双子でもないのによく揃うな。
差し出した俺の手を二人とも両手で包むように掴んだ。
演技なのは分かっているが、実際のところ気持ちよくなれるように演技してくれるならその方が良い。素の自分などというものは己で理解していればいい。
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