第8話 誰もいない家は寂しいもんだな
馬車が到着し、まずサテラ嬢とニア、他はグッタリしている女性たちをなるべく乗せて出発させる。
サテラ嬢をラナケルド家に送るのが最優先だ。
最後まで残る監督役は俺が引き受けた。
財宝やらの取り分はもう決まっているし、サテラ嬢を助けたのはニアのパーティーだからラナケルド家にはニアを行かせるのがベストだ。サテラ嬢が隣にいるならトラブルにもならないだろう。
ニアなら襲われてもサテラ嬢を完璧に守って返り討ちに出来る。
対して俺は時間に余裕がある。不本意ながら。
次々と到着する馬車に人と物を詰め込み、最後に銀貨の詰まった箱を馬車に乗せてニアの腹心のマーグと一緒に送り出した。
残念ながら積載量があり過ぎて俺は乗れない。
まあ構わないけどな。
徒歩で帝都に帰る位、訳のない事だ。
十分儲かったしな。オケラなら足しにするために帰り道に魔獣でも狩らねばならないところだった。
根城を後にし、俺は街道を歩く。全くのどかなものだ。
久しぶりに牧歌的な気分に浸る。
暫く時間をかけてから、ようやく帝都に到着した。
ニア達の拠点に行くと炊き出しをしている。
捕われていた女達は満足に食事もできていなかったようで、だいぶ血色が良くなっていた。
数日休めば心はともかく、身体はだいぶ良くなる筈だ。
ニア達の拠点で女達を泊めるのは手狭という事で、俺は安宿を数日貸し切り、そこに泊めるようにした。
女達の中で比較的元気がある髪の長い女性が頭を下げる。
「助けていただいたばかりか、世話までして頂いてありがとうございます。この恩は忘れません」
「気にするな。当然の事だ。元いた場所に全員おくり届けてやる」
儲かった分の一部を還元しているだけだしな。
盗賊の被害者なのだから帝国に任せても良いが、不便な思いをするだろう。
それに冒険者のイメージを上げる美談にもなる。
送り届けるのは他の冒険者に依頼でも出してやるか。俺やニア達がそこまではやる時間がない。
そうする内にニアがラナケルド家から戻ってきた。
疲れたのか珍しくげっそりとしている。
「天騎士様が行ってくれたら良かったのに。慣れてるんだし」
「お前が慣れろ。いつまでも避けては通れないぞ」
「言っておくけど、侯爵様めちゃくちゃ怖かったんだからね。両手で握手されて感謝されたけど、攫った奴は必ずこの手でくびり殺すって言ってた。怖すぎる」
帝国の中でも武闘派だからなぁ、あそこ。
「侯爵令嬢が無傷で良かったな。ほんと。キズありにされてたらどうなっていた事やら」
「そうだねー。いやぁすぐ潰しに行って良かった良かった〜」
俺が出来る事はもうない。今回はギルドへの手続きも俺がやる必要もないし、報酬やら分け前やらは後日精算が終わってからだ。
あ、そういやそろそろ竜討伐の報酬受け取らないとな。
ニア達の拠点を後にし、新しく構えた自宅に帰る。
家具だのなんだのはまだ届いてないからひたすら広い。
張り切って広い家を借りてしまったな。
ソファーに腰掛け休む。寝るのもソファーだ。
あ、そういえば俺がいない間どうしよう。
前のパーティーで借りていた家は管理人付きだったからな……。
折角家に帰っても換気も掃除もしていないのは嫌だし。
家の管理用に奴隷でも買うのも良いかもしれないな。
帝国では奴隷制度は違法ではない。
奴隷になるのは口減らしの子供や、借金が返せなくなった人間やら、様々だ。
奴隷を買うという事は人を養うことでもある。
社会貢献とまではいかないがな。
家の設備は魔法も導入してかなり便利にしてあるから二人居れば良いかな。
一人暮らしも寂しい。冒険者に恋人は難しいのだ。
ああくそ、あの二人が頭に浮かんでくる。
なんだかんだで楽しかったからな……。
よし、明日奴隷を見繕うか。どうせなら目の保養になるやつが良い。
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