第75話

「生徒会長になるには3つ。そして次年度の継続も含めると全部で5通りある」


 そう告げる柊生徒会長は教卓まで歩き、チョークを持ってスラスラと黒板に文章を書いていく。


 ~生徒会長の選出方法&継続方法~

 その1――選挙。※出馬生徒は必ず過去に生徒会役員の経歴がある事。※中等部可。正し、他中学及び他高校不可。

 その2――先代生徒会長からの指名。※出馬生徒がおらず、選挙が行われない時に限る。

 その3――学校側からの指名。※出馬生徒がおらず、また先代生徒会長の指名を相手側が全員断った場合に限り、内部進学予定の中等部3年生・高等部1、2年生の成績上位者の中から指名する。

 その4――部活動の予算案の成果で決める。例、毎年地区大会止まり部活動の部費を上げた際、その歳に全国大会に進むなど、昨年よりも良い成績を残す。※正し、真逆の結果になった場合は来年次の生徒会長選挙の出馬禁止。更には役員になる事も禁止。

 その5――中等部二年生の頃から生徒会長だった場合、本人が希望する場合に限り上記全てを無視して高等部の生徒会長とする。※私がこれ。


「その1と2と3が選出で、残り2つが継続だ」


 と、書き終わったチョークで黒板を数回叩く。私と二宮君は黒板の前まで訪れてはその内容を見ていく。

 

 そして黙読完了後、気になった点を現生徒会長に質問します。


「この4はあれかい? 成果が良ければ出馬生徒が居たとしても選挙は行われないので?」


「良い質問だ。それに関しては成果の度合いによる。仮に我が学校の野球部を毎年地区予選敗退、しかも初戦敗退の糞雑魚野球部と仮定しよう。その野球部の予算を3倍にしました。そしたら予算を増額した事で野球部がその歳の甲子園で優勝しました」


「「全国の有名選手を金で買った?」」


「戦略的な引き抜きと言いたまえよ。――で、もしそうなったら例え出馬生徒が居たとしても問答無用で生徒会長継続だ。まぁその本人が今年で卒業だったり、また継続する気がなければ選挙が行われるけどね」


「なら中途半端だったらどうなるんだ? 甲子園に行かなくとも地方予選の決勝進出とか? ――って、それでも十分過ぎる成果か」


「そうなった場合は予算案の会議前に決められた目標――学校側と顧問を含めた部活動側との間で取り決められた目標が達成されたかどうかで判断される。ちなみにうちの学校は各部活動の目標を決めてから予算案の会議が行われるんだ。その方が前と違って健全だからね」


 前と違って健全? と、浮かんだ疑問に首を傾げるが二宮君が話を進めた。


「選挙の事は大体わかった。それで? 梨に頼みってなんだ?」


「!」


「? なんだ?」


 二宮君が私の名前を呼んだ瞬間、柊生徒会長の目が大きく見開く。しかしその大きくなった視線の先に居た二宮君は勿論、その隣に居た私も生徒会長が何に驚いているのか分からず首を傾げた。


「――いや、なんでもないさ」


 そう言って柊生徒会長は何処か嬉しそうに、でも微かに寂しそうな表情に切り替わる。今の彼女はまるで自分の子供の知らない大人な部分を見た親御さんのようです。


「生徒会長選挙に出馬するとある男子生徒の当選阻止と、私の妹である真琴まことを次期生徒会長にしたい。それの協力をしてくれたまえ。――それとこれは頼みじゃない。さっきも言ったけど拒否権は最初からないよ」


「?」


「おい柊。何があった?」


 親御さんの表情から打って変わって真剣そのものの表情を浮かべた柊生徒会長。首を傾げ続ける私に代わって二宮君が聞き返す。


 次の瞬間、柊生徒会長の台詞に青ざめる。


「赤羽葵。旧姓――獅々神ししがみ


「なっ!? 獅々神ってまさか……」


「あぁ。私達がやっとの思いで退学させた獅々神茜の弟だ。ソイツが生徒会長選挙に出馬する。しかも運動部の過半数の票を確保した状態で」


「!?」


「だから言ったろ? 厄介な芽が出てきたって。本当に勘弁してほしいよ……」


「?」


 冷や汗を掻く二人と、またしても何も知らない私が首を傾げる。もうね? 首を傾げすぎて痛いです。

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