第113話 隣国王女視点4 王太子を探していたら、赤毛に邪魔されたので、赤毛に釘を刺そうとして大魔術師から雷撃を喰らいました

決闘場にて、私は、赤毛の元王女の小生意気な平民の騎士を叩き潰す気満々だった。

奴は所詮、三流騎士。私の魔術の前に力尽きるに違いなかった。


赤毛の方について、私に楯突いたことを死ぬ気で後悔させてやる。


私は赤毛の前で赤毛の騎士をいたぶることにしたのだ。徹底的に。




そして決闘が開始された。


最初こそ、私が力を抜いていたからこそ、騎士は善戦できた。


しかし、私が少し本気を出せば、騎士は衝撃波を次々に浴びて、弾き飛ばされたのだ。


しかし、この騎士、気力だけはあるみたいで、倒しても倒しても立ち上がってくる。


フンッ、命乞いすれば命だけは助けてやったものを。


「き、貴様のような偽王女に負けはせん」

「よくもそこまで言えるわね。判ったわ。終わらせてあげる」

私はニタリと笑った。


「吹き飛べ、爆裂魔術」

私は殺す気満々で爆裂魔術を使った。

流石にこれで終わりだ。


私は大笑いしてやろうかと構えた時だ。


爆裂魔術の噴煙の消えた後にメルケルの盾となってそいつは立っていたのだ。


赤と白のけばけばしい出で立ちの小人だ。


この騎士は召喚術が使えたのか?


我が父ですらあまり出来ないというのに。


「き、貴様何奴だ」

私は思わず叫んでいた。


「わっはっはっは。私は星の彼方、M78星雲から、メルケル君に呼ばれてやってきたメルケルマンだ」

そいつは今までの騎士の面影すらなく、大口を開けて笑っていた。


「な、何ですって、こいつ召喚魔術まで使えたの? それに『魔法聖女エレ』にも出てきたわ。これが宇宙人なの?」

そう、魔法聖女エレに確かにこの星の向こうに宇宙人がいると記されていた巻があった。


でも、宇宙人はとても小さく、その出した魔術も本当にちゃちだった。それが隠された太古の消えた魔術だとは私は気づかなかったのだ。


ポヨンポヨンポヨンポヨンと火の玉が、人を馬鹿にしたように飛んできたのだ。こんなので私がやられるわけないでしょう! 不覚にも私はそう、思ってしまったのだ。


でも、何故か皆伏せているんだけど、馬鹿じゃないの? と私は思ってしまったのだ。


私が火の玉に触れた瞬間だ。


ピカッ


凄まじい光が走った。


ドカーーーーーン


そこにミニ太陽が出現して私は気絶していたのだ。





本当に不覚だった。こんな裏技があるとは。


私はメルケルには手を出すのは止めた。


しかし、赤毛はこれを良いことに王太子殿下を独り占めしだしたのだ。許されざることだった。外務卿の息子にも文句を言ったが、息子は

「殿下にはお話しておきます」

と言ったきりだ。


悪逆非道の前王の元王女、平民の娘風情が、私を押し退けてこの国の王太子といるなど許されることではない。このままでは我がスカンディーナが舐められてしまうではないか。




ちょうどそこに父から秘密の連絡が来た。


何でも反体制派と目されて私のクラスにもいるニコラスの地元ヴァンドネル伯爵領にて、原因不明の病が流行りだしたとのことだった。その致死率は5割。かかった多くのものが次々に死んていると言う。恐ろしい病だ。


しかし、我がスカンディーナの研究機関がその病に対して特効薬を見つけ出したというのだ。私はそこにきな臭いお父様の意思を感じたが、ここは黙ってお父様の駒になることにした。お父様は具体的な指示をしてきたのだ。



私は早速、策を練ることにしたのだ。


まず、この国の単細胞な聖女を利用することにした。

隣国に原因不明の病が流行っていて、国境地帯にその病気が入っていないか、調べに行く必要があるのではないかと私は聖女に唆したのだ。

聖女は最初はやる気の無さ全開だったが、王太子をそれを理由に連れ出せばいいと言うと俄然やる気になったのだ。


早速二人で王宮に王太子に会いに行ったのだが、王太子は赤毛しか見ておらず、取り付く島も無かった。


「おのれ、赤毛め、そこまで私の邪魔をするのか」

私は赤毛が如何に身の程知らずなのを知らしめてやろうと思ったのだ。


私は赤毛のいるところを聖女頼んで調べてもらった。


なんでもこの時間は魔術の塔の側にいるらしい。


魔術の塔など我がスカンディーナにもない。


所詮、魔術後進国のオースティンの魔術の塔など大したことはないと思ったのだ。


聖女と一緒に行くと、老人と赤毛が魔術訓練をしていた。


赤毛が出している水はとても細くて、ちゃちだった。こんなおままごとをしているなど、余程暇人だ。これで我がスカンディーナに対抗するつもりなのか。私は赤毛もこの老人も大したことはないと思ったのだ。


「なにこれ、本当にちゃちな水ね」

聖女も言ってきた。


「アン、後ろに水を放て」

老人の指示する方向に赤毛が水を放つ。


その細い、水の流れはそのまま聖女に向かったのだ。


ダーーーーーン

次の瞬間、水が聖女に激突すると聖女は一瞬で王宮の庭に弾き飛ばされていた。


私は唖然とした。まさか、この水の威力がそこまで凄いとは思ってもいなかったのだ。



「何奴だ」

老人が叫んでいた。


下品な老人だ。私が隣国の王女だと知っていないのか。魔術師達は世間に疎いと言うが本当のことだ。

私は馬鹿にしたように笑った。


「アンネローゼ。王太子殿下と楽しんでいられるのも今のうちよ」

私は老人を無視して笑って言った。


「じきに私があなたを修道院にでも送り込んであげるわ」

「礼のなっておらぬ小娘じゃの。アン、この者も聖女といっしよに流してやれ」

「やれるものなら、やってご覧なさいよ。外交問題になるから。私はそこの偽物王女のアンネローゼと違って、スカンディーナの正当な王女テレーサと言うのよ。覚えておきなさい。そこの老いぼれも」

私は言い切ってやったのだ。所詮、魔術後進国のオースティンなど大したことはないと私は思っていたのだ。


「小娘、貴様の父はブルーノか」

爺さんの目が少し光った。こんな老人怒らせても大したことはないはずだ。


「そうよ。お父様は史上最強の魔術師なのよ。お前らなど到底敵わないほどのね」

私は思いっきり高笑いしてやろうと思った時だ。


「そうか、そうか。ならば少し遊んでやろう」

老人はそうニタリと笑った。


と、同時にピカッと光る。何がと思う間もなかった。


次の瞬間だ。大容量の雷撃の直撃を私は受けて弾き飛ばされていたのだった。

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