モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~
第109話 友達に王太子との婚約の件を相談したら、それは決定事項だから絶対に変えられないと言い切られてしまいました
第109話 友達に王太子との婚約の件を相談したら、それは決定事項だから絶対に変えられないと言い切られてしまいました
その日の午後の授業は、フィル様に抱きつかれた事とスカンディーナの連中に挨拶されたことで、混乱して、頭に全く入らなかった。
基本的に、と言うかなんというか、私は今は平民のアンなのだ。
たしかに元は、スカンディーナの王女でフィル様の婚約者だ。
でも、今は違う。単なるオースティン王国の平民アンなのだ。
王太子殿下の横に立つ事は、本当におこがましいと思う。まあ、私もオースティン王国に生きている女の子だ。見目麗しい王子様が迎えに来てくれたら、と子供の頃夢見たことはあったけど。
前世の記憶が戻ってからは、特にフィル様が私の心の中のイチオシで、学園に来てお会いできて感激し、隣の席になって感激し、デートできて感激した。さっきなんて抱きしめられて、もう死んでもいいと感激したのは事実だ。
このゲームに転生させてもらって良かった。神様、ありがとうと感謝した。
前世の引きこもりと違って本当に好い目に会わせてもらった。
もうこの世界に思い残すことなんて何も無いと思うくらいに。それでブルーノに殺されるとなるとまた違うが、いつまでも平民アンが麗しのフィル様の横にいていいのかと悩んでるのだ。
その上でスカンディーナのことなんだけど・・・・。メルケルは良いやつだと思う。
でも、今日の感じだと、元々この国に来たのは、元王女の私に会う為みたいだ。
私を正当な王位継承者にするためらしい。彼ら反対勢力の旗印として。
でも、はっきり言って、私自身はスカンディーナのことは授業で習った以外はよく判らない。考えれば母からは折に触れて隣国のことは色々聞いてはいたが、スカンディーナの出身だとも父や母のことなども詳しくは聞いたことがなかったのだ。
前世でゲームをしたことはあったが、スカンディーナのことなんて殆ど出てこなかった。
そこにいきなり、王女殿下と言われて頼られるのは違うと思う。
そもそも私自身がアンネローゼというのが未だに殆ど信じられないんだけど・・・・。
このオースティン王国の平民だと思っていたし、実際今でもそうだ。
私としては、この国の乙女の大半の憧れのフィル様と一緒にいるのは夢だった。それは前世からの夢でもある。
でも、スカンディーナの王女に戻ってくれって言われても、青天の霹靂、実感が無いというか、今まで全く感心がなかったとか、無視していたというか、判らなかった。
私の感覚ではスカンディーナは私の両親を殺して、私の命を狙ってくる怖い国という認識だ。その国をもとに戻すために役立ってくれって言われてもよく判らない。
確かに、私が親の仇を討ちたいかと言われるとそれは道義的には討ったほうが良いのではなかろうかとは思う。
でも、現実問題として、私はたかだか一平民なのだ。一人ではスカンディーナ王国相手に何も出来ない。頼めば手伝ってくれる人がいるかもしれないが、他の人間を巻き込むことはいけないことだと思う。何しろ相手は国家なのだ。仇を討つということは国家に逆らうことになる。
そんな私に手を貸すのは良くないだろうし、頼むのも良くないことだ。最悪外交問題になる。
それを考えると、仇を討つのは良くないのではないかと思ってしまう。
そして、そうして欲しい、反体制派が私に近づいてくれば私の存在自体がオースティン王国の足かせになるのではないだろうか。
一平民アンを保護するのと、それを王太子の婚約者にしておくのとでは全然違う。スカンディーナとの外交問題になるような者を婚約者においておくのは良くないのだ。
イングリッド邸での合宿の相部屋は何故かエルダだった。
皆で演劇練習してワイワイやった後、部屋に帰って
「アンどうしたの? 午後から心ここにあらずって感じだけど」
心配してエルダが聞いてきた。
「ああ、ごめん」
私はエルダに相談することにした。今日あったことをかいつまんで説明したのだ。
そして、自分の考えを述べた。
「やっぱり、私、フィル様の婚約者でいるのを止めたほうが良いよね」
私はエルダに相談していた。
「アン。何言っているのよ。フィルはそんな事は判っているわよ。その上であなたを守るって言っているのよ」
「えっ、でも」
「でも、くそもないわよ。
元々フィルはあなたが行方不明になっている10歳の時に王妃様に言われて婚約者選定のパーティーを開かせられているのよ」
「えっ、そうだったんだ」
私は驚いたが、それは現実的なことだと思った。王太子の婚約者が行方不明は良くないだろう。
「でも、彼はその時に本当に能面だったの。行方不明の婚約者がいるのに婚約者を決めろって言われてふてくされていたのよ」
「えっ、そうなんだ」
そんなときから私のこと気にしてくれていたんだ。私はそれを聞いて嬉しかった。
「そんな、彼にイングリッドが言ったのよ。
『あなた、今回のお茶会、ひどくない? あなたには行方不明のアンネローゼ様がいるじゃない。今もどこかで苦労しているのよ。その子は。飢えているかもしれないし、死にそうになっているかもしれない。なのに、こんなお茶会なんて開いて! その子が落ちぶれたからって、その子を捨てるの? そんな薄情な王太子に誰がついていくのよ』って」
「えっ、イングリッド、そんな事言ってくれたの。会ったこともない私のために」
「そうよ。アン。フィルはそれで婚約者選定パーティを止めて、陛下と妃殿下に言い切ったのよ。どんな事があっても俺の婚約者はアンだって。だからあなたはフィルの婚約者でいていいのよ。というかいないと駄目なの」
「えっ、でも」
「でもも、糞もないわよ。うちの母もあなたとフィルの婚約が決まった時にあなたのお母様に約束しているのよ。たとえどんな事があっても絶対にあなたを守るって。それはイングリツドのところも同じよ。だから私のところのオールソン家もイングリッドのところのバーマン侯爵家もあなたの後ろ盾なのよ」
「でも、スカンディーナとの関係が悪くなるんじゃない」
「それは簒奪したブルーノが悪いのよ。スカンディーナ側の問題なんて関係ないのよ。我が家はどんな事があっても一度約束したことは違えない。これは建国以来の我が家の家訓なのよ。だからアンもどーんと大船に乗った気持ちでいてね」
「ありがとう。エルダ。でも、それで良いのかな」
「良いも悪いもないわ。それ以外の道はないのよ。アン。スカンディーナの反体制派をどうするかはまた別の問題だけど、しばらく静観するしか無いんじゃないの。私達はまだまだそんな事に手を出している余裕はないわよ」
はっきりエルダに言われて私はそれもそうだと思ってしまったのだった。
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
私の物語紹介で次の物語は
『王太子に婚約破棄されたので、ぶった斬りました!何を?!出来損ない令嬢の波乱万丈恋愛物語』
https://kakuyomu.jp/works/16816927862630135568
「貴様との婚約を破棄する!」学園の卒業パーティーにて皆の前で私は王太子に婚約破棄されてしまった。いくら私が出来損ないと言われているからといってそんな!普通は泣き叫ぶか、許してくれと懇願するかそんなところだと思うのだが、「ヤッターーーー。バンザーイ」私は喜びのあまり飛び上がっていた・・・・だってこの王太子、良いのは顔だけ。いろんな女にうつつを抜かす超遊び人なのだ。しかし、悪巧みを働く力はあるみたいで、あろうことか私を修道院に送る途中で襲わせて慰み者にしようと企んでいたみたいで、ほう、私に対してそのようなことをしようとするとは・・・・。私自身、剣は兄に相手にされず、魔術は姉の足元にも及ばない、辺境伯の出来損ないなのだ。でも、我が武の名門辺境伯の令嬢として、受けた辱めは相手をぶった斬って晴らします!出来損ないの私に出来るのかですって? そんなのやって見ないと判らないじゃない!
南国と国が共同して我が領地に攻めてきたり、帝国皇子がやってきて纏わり付いたりもう大変。でも諦めずに前に向いてがんばります。
面白いので是非とも読んで下さい。
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