第106話 殺された騎士の息子視点5 伯爵の息子に王女を味方にするように迫られました。

俺はその日も演劇の練習を終えて、ガーブルエル様の言われた障壁の練習をして自分の部屋に戻った。


すると、そこには二クラス・ヴァルドネルらがいた。俺が世話になっている伯爵家の息子だ。今回留学するにあたって、俺と一緒にこのスカンディーナに来た一人だ。



他にも頭の良い平民のミーケルと騎士候補のナータン、それに子爵家のマックスが部屋には揃っていた。


クラス分けはB組がミーケルと二クラス、C組がマックス D組がナータンだ。



「本当にここの勉強は大変だな。スカンディーナに比べて難し過ぎる」

二クラスが文句を言った。


「本当に大変な思いで勉強しないついていけないですよね」

頭の良いミーケルまで言っているなんて、この学園は異常だ。まあ、世界最高級の教育機関かもしれないが・・・・。


「それに、何故、今、演劇なんかしなければいけないんだ。そんな余裕はないだろう」

二クラスがまだ、ブツブツ呟いている。


「敵の王女と一緒にいる上に演劇なんて最悪だぞ。」

二クラスが更に言い募っている。


本来二クラスは伯爵家でアンネローゼ様の遠縁だ。絶対にA組になると思っていたのだろう。それが蓋を開けるとそんなに出来ない俺がA組で二クラスはB組というのもショックらしかった。


最も、俺がアンネローゼ様の騎士になったのはとても喜んでくれたが。


「俺にらの演劇は悲惨だぞ」

二クラスがつぶやく。


「どんなふうにですか?」

一応、俺の上司の子供だ。俺は敬語を使っている。A組は敬語はいらないと言われていたが、俺は平民なので、基本は敬語だ。まあ、朝練仲間のアルフとかは子爵家でもタメ口だが。



「留学してきた王女様を、昔この国に追放された悪逆非道な王女が仲間と一緒になっていじめるんだ。それをこの国の聖女達が助ける話さ」

「何なんだよ。それは、正反対の話になっているんじゃないか!」

俺はムッとしていった。

「そうだ。真実とは真逆だ。アンネローゼ様を貶めようとしているんだ。あの偽物王女が脚本を持って来たからな! 本国でも色々画策しているみたいだぞ。何でもこの国でも同じような演劇を上演しようとしているらしい」

「そんなのが許されるのか」

朝練仲間のナータンが文句を言うが、


「この国の貴族も、一つではない。何しろ王太子殿下の婚約者が我が国の元王女のアンネローゼ様だ。不満を持つやつもいるだろう。当然アンネローゼ様に好意をもたない奴も多いさ。我がクラスの聖女を中心にな!」

「そうだな」

ニクラスの言葉に俺も頷かない訳にはいかなかった。


「それで、どうだ。メルケル。その後アンネローゼ様と少しは仲良くなれたのか」

二クラスが聞いてきた。


「さすがにそんなにすぐには親しくなるのは無理ですよ。アンネローゼ様の回りにはこの国の王太子殿下をはじめ公爵令嬢や侯爵令嬢がいらっしゃいますから」

俺はそう言った。そうだ。王太子のガードがやたらと硬いのだ。


「それはそうだが、親父とかが煩いんだよ。早くしろと。親父としては、できるだけ早く、事を始めたいらしい。その旗印にぜひともアンネローゼ様を持っていきたいみたいだ」

「しかし、アンネローゼ様がどうお考えになられているかだと思いますよ。なんでも、今まで全くスカンディーナの王女だとは知らされておられなかったみたいですし」

「そこは判っているが、とりあえず、メルケル、俺をアンネローゼ様に紹介してくれないか。父も俺が知り合いになったと判れば、少しは気持ちも収まると思うんだ」

二クラスはこう言うが、伯爵としてはうまく行けばアンネローゼを息子の婚約者にして、反乱軍の主導権を握りたいというのもあるはずだ。


今は王太子のアンネローゼ様に対しての執着がすごくて、なかなかメルケルでさえ、話せていないのだ。そんな所に紹介なんてしようものなら、どうなることか判ったものではなかった。

そうは言っても、面倒見てもらっている方の息子に頼まれれば聞くしか無かった。


できる限り、王太子のいないところで紹介しようとメルケルは考えたのだった。

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