第105話 殺された騎士の息子視点4 大魔術師に魔術の使い方を習いました

俺はそれから変わった。こんなのでは全然ダメだ。今のままでは全然アンネローゼ様の力になれない。せめてブルーノに一太刀浴びせられるまでにならないと。


俺は朝昼夜と必死に稽古をした。魔術も強化するために魔術の教師に頼み込んでもみた。


「先生、お願いします。強くなるために私でも使える魔術を教えて下さい」

俺は風魔術の先生に土下座をせんばかりに頭を下げていた。


それを何か忌々しそうなものでも見るように王太子は見ていた。

何もそんな目で見ることは無いだろうと俺は思うのだが。


「うーん、そうは言ってもなメルケル。お前の魔力ではなかなか教えられる魔術が無いんだが」

風魔術の先生が困惑した顔をしてくれる。まあ、ダメで元々なんだけど、今のままの俺では駄目だ。


「そこの小僧。それだけ強くなりたいのか」

俺は声のした方向を見ると、そこにはこの前アンネローゼ様を徹底的に鬼のようにしごいていた、この国の大魔術師のガーブリエル様がいたのだ。


「ガーブリエル様!」

先生も大魔術師の登場に驚いていた。


「はいっ。今のままでは私は無力すぎます。少しでも我が主のためになればと、何卒お教え下さい」

俺はガーブリエル様の前に土下座していた。


「まあ、その心意気や良しだ。そばにいる尻の穴の小さい王太子とは違うの」

ガーブリエル様が言われる。


「何を言われるのですか。ガーブリエル様。私は教えるなとは一言も申しておりません」

王太子が文句を言うが、

「ふんっ、そう言いつつ、アンの騎士が強くなるのは気に入らんか」

「そんな訳ないでしょう。アンは今でも危険です。その騎士が強ければそれに越したことはありません」

ブスッとして王太子が言うのだが。



「ふんっ、まあ、良かろう。そこの騎士。貴様はアンの騎士と聞く。アンの役に立つこともあろう」

ガーブリエル様は俺を見てくれた。


「風魔術を使ってみよ」

「はい」

俺は習いたての風魔術を剣に纏って剣を強化する魔術を発動した。


「うーむ、もう少し大きくは出来ないか」

「これでいかがですか」

俺は必死に魔術を纏った。しかし、そんなに増えていない。元々魔力は少ないのだ。


「それで、限界か」

ガーブリエル様に聞かれて

「もう少し」

しかし、それ以上はいくらやっても出来ずに、俺は魔力切れで思わず倒れそうになって地面に座り込んだ。


「見た感じ、お主には魔力があまりなさそうじゃな」

倒れ込んた俺を見てガーブリエル様が言われた。俺は慌てた。このままではガーブリエル様にまで見捨てられる。なんとしても防がねば。


「魔力のない分は努力でなんとかします。なんとしてでもアンネローゼ様のお役に立ちたいんです」

俺は必死に言い募った。


「ふんっ、努力でなんとかなるほどの魔力もなさそうじゃが」

ガーブリエル様は俺を上から下まで見てくれた。


「まあ、アンの盾くらいは務まるか」

ガーブリエル様は一人で納得すると俺を手招きしてくれた。


「貴様の心臓の前に障壁を張ってみよ」

「障壁でごすか」

俺は障壁を出そうとして失敗した。そう、障壁はなかなか難しいのだ。


「自分で壁をイメージして出すのじゃ」

「壁をイメージですか」

俺は透明の壁をイメージして見る。しかし、全然出来ない。


「貴様の魔力ではそんな大きいのはなかなか厳しかろう。まず、これくらいの大きさで作ってみるのだ」

ガーブリエル様は親指と人差指を合わせて10円玉大の円を作られた。


「えっ、そんな小さいのですか」

「貴様が魔力がなくて、できんからその大きさなのであろうが」

そう言ってガーブリエル様は俺の頭を叩いてくれた。


「はい。すいません」

俺は言われた大きさで、障壁を張った。その大きさならば出来た。

でも、こんなので役に立つんだろうか?


「貴様の魔力ではそれが精一杯だろうて」

ガーブリエル様が言われる。


「それを何十回、何百回何万回と出すのだ」

「はい」

俺は言われたように、作っては消してまた作るのを繰り返した。


「それを完全に体に染み込ませるのじゃ」

「体にですか」

俺はガーブリエル様の言葉を復唱した。


「そうじゃ。そして、今度はそれを動かすのじゃ」

「動かすのですか」

俺は驚いてガーブリエル様を見た。


「そうじゃ。儂が見本を見せてみよう。その方、思いっきり儂に打ちかかってこい」

「宜しいのですか?」

「構わん。貴様の大きさの障壁で防いでくれよう」

ガーブリエル様が小さな障壁を前に出された。


俺は思いっきり模擬剣で斬りかかった。

それをガーブリエル様は小さな障壁で防がれる。


俺は次に横から斬りつけた。


しかし、ガーブリエル様はその小さな障壁を横に動かさて防がれた。


俺は何回も打ち掛かるがガーブリエル様は全て小さな障壁を動かされて防がれたのだ。


「な、なるほど」

「納得するな。ここまでなるのには貴様では10年くらいかかるかもしれんぞ」

「いえ、必ず物にしてみせます」

俺は言い切った。そうだ。アンネローゼ様の盾になるために、必死に頑張らねば。


「まあ、そうじゃな。それが少しでもうまくいくようになれば、ブルーノの初撃くらいは防げるようになろうて」

そう言うとガーブリエル様は大声で笑われると転移で消えられた。


「ありがとうございました」

俺は消えられた方にいつまでも頭を下げていたのだ。

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