第104話 殺された騎士の息子視点3 俺の王女殿下は最強でした。

決闘場で、俺はアンネローゼ様を前に跪いていた。


「王女殿下。ぜひとも私をあなたの騎士にして下さい」

俺は彼女を前にして頼み込んでいたのだ。こんな事は卑怯だ。彼女はこの地で平和に暮らしていたほうが良いのは判っているのに。頼み込んでしまったのだ。


「えっ、メルケルさん、私は今は平民のアンよ」

殿下は当然のごとく否定してきた。


「アン、何言っているのよ。メルケルはあなたのために今戦おうとしているのよ。あなたは正しくメルケルのお姫様じゃない」

「そうよ。アン。メルケルはあなたのために戦うんだから、騎士の誓いを受けないと」

周りの女性陣が俺の味方になってくれた。

王太子はものすごく渋い顔をしている。


「そうだ。アン、騎士の誓いをしてやらないと」

騎士団長を父に持つアルフが宣言してくれた。でも、良いのか? 俺は最悪君の主の婚約者の王女を隣国に連れ去るかもしれないのに・・・・。


この国に来るまでは王女なんて期待をしていなかった。でも、アンネローゼ様を見ていると日々惹かれていく自分がいた。


アンネローゼ様が剣を俺の肩に当てて宣言してくれたのだ。


「我アンネローゼは、汝、メルケル・シーデーンを我が騎士に任命する。いついかなる時も民の盾となり、その力を民のために使え」


さすがアンネ様だ。その力を自分のためにとは決して言わない。民のために使えと言ってくれた。それでこそ我が主だ。


「御意」

俺は頭を垂れて頷くと、アンネローゼ様から剣を受け取った。


これで憎き、ブルーノの娘を叩き切ってやる。我が国の反逆者で大魔術師の娘と言っても所詮小娘。俺の敵ではない。


王太子からはものすごい視線を感じたが、ここは無視だ。



「何を下らない事をしているのよ! そこの平民の男は、王女の私ではなく、反逆者の元王女、いや、平民の娘の騎士になったのね。さすが反逆者に最後まで従った騎士の息子なだけはあるわ」

偽物王女がなにか言っている。


「ふんっ、俺は簒奪した女王の娘の貴様の騎士になろうとは全く思わなかったんだが、アンネローゼ様を一目見た瞬間に、この方こそ、騎士としてこの身を一生涯捧げるに値するお方だと天啓を得たのだ。偽物王女の貴様に何がわかる」

俺は馬鹿にしていってやった。そうだ。今のうちだ。好きに言っていられるのは。何しろ俺にここで叩きのめされるのだ。俺は腕がなった。



しかし、決闘が始まって思い知ったのだ。こいつは強い。それも強すぎると。


俺は必死に剣を振ったが、絶対に偽物王女に届かなかった。


嘘だ。こんなはずは。俺は焦ったが、どうしようも無かった。完全に実力差がありすぎたのだ。俺は相手にもならなかったのだ。



「食らえ、衝撃波!」

傲慢王女の衝撃波をモロに受けて俺は吹っ飛んでいいた。


「ふんっ油断したぜ」

頭を振りつつ、俺は立上ったが、しかし、それまでだった。


次々に衝撃波が命中する。


でも、まだまだだ。何しろ俺たちの王女殿下は悪魔のこの国の大魔道士にやられてもやられても立ち上がっておられたではないか。こんなのでやられる訳にはいかない。


「ふんっ、そろそろ降伏したら」

仁王立ちした傲慢王女が降伏勧告したが。


「まだ、まだ。まだ負けん」

頭を振りつつも俺は立ち上がる。


しかし、更に衝撃波を受けて弾き飛ばされた。

俺は剣を杖にして必死に立上っていた。もう立っているだけで精一杯だった。


「き、貴様のような偽王女に負けはせん」

「よくもそこまで言えるわね。判ったわ。終わらせてあげる」

傲慢王女はニタリと笑った。


「吹き飛べ、爆裂魔術」

さすが悪魔のブルーノの娘。決闘場で爆裂魔術を放つとは。

俺は自分の無力さが悔しかった。今までの努力しなかったつけがここで回ってきたのだ。


俺は死を覚悟した。


ズッドーーーーン

凄まじい、爆発が起こった。



俺は死んだと思った。


しかし、俺の前には赤白の人形が立っていたのだ。しかし、そのシルエットは俺にはアンネローゼ様に見えたのだ。


アンネローゼ様が俺を守ってくれた。俺は朦朧としながらアンネローゼ様が出してくれた人形が偽物王女と戦うのをみていた。


アンネローゼ様の人形は圧倒的に強かった。偽物王女なんて相手にもならなかったのだ。さすがブルーノの襲撃を跳ね返したお方だ。俺の出番なんて全く無かった。


アンネローゼ様の為に戦おうとした俺は全くアンネローゼ様の役には全然立たなかった。足手まといにしかならなかったのだ。俺はもっと必死に訓練しようと心に再度誓ったのだ。


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