85 モンハン会01
土曜日、学校なし。バイトなし。
そして僕は朝からホットケーキを焼いている。
夜がキムチ鍋だからね。朝昼はアリスの好きそうなのを作ろうということでホットケーキにしてみました。
アリスはスーパーで見つけたクイックミルクという商品を試すべく、牛乳をコップに注いでいる。
これはストローの中にいろんな味の粒が入っていて、牛乳を吸い込んだ時に溶けて味が付くというもの。
今回はチョコレート味。
「ほほう! 面白い!」
まだホットケーキが焼けていないのに飲んでるし。
呆れながらフライパンを見る。
表面がぷつぷつしだしたころに裏返して……と。
うーん、焦げたかな。
ホットケーキって一枚目はうまくいかない。
とりあえず七枚ほど焼く。
三枚ずつ皿に積む。
バターをのっけて完成。
一枚は神棚にお供え。
「はい。後はお好きなように」
「うむ!」
メープルシロップに各種ジャムにあんこバターと色々用意した。
アリスは嬉しそうにメープルシロップをどばどばとかけている。
僕は、一枚目はバターのみで。
二枚目はジャムとかあんこバターとかをちょこちょこと付ける。
三枚目で半分をメープルシロップで、残りの半分は基本に帰ってバターのみ。
牛乳を飲んでおしまい。
一色と掛井君は部活があるので来るのは昼食後。
一色は陸上部。
掛井君はバスケ部だ。
メープルシロップでひたひたになったホットケーキにジャムとか色々追加していくアリスを横目にスマホで怪談を見る。
そういえば最近、ゆっくりとこういうのを見ていない。
アリスといると刺激に困らないしね。
「……昨夜の先輩ってなんだったのかな?」
怪談を読んでいたら思い出した。
するっと流してしまったけど、あれはおかしな状況だった。
あんなものが普通なはずもない。
「もうちょっと、なにかした方がよかったかな?」
「向こうが助けを求めているわけでもないし、仕事でもない。無理して関わる必要などないさ」
「うーん」
「どうしても関わりたいなら止めはしないがな」
「一色に聞いてみようかな」
彼女と同じ陸上部って言ってたからなにか知ってるかもしれないし。
アリスが食べ終わったのを確認して皿を片付ける。
神棚を見るとこちらの皿も空だ。
「足りた?」
声をかけると冷蔵庫の横からひょこっとミズハが顔を出して頷く。
「よかった。他になにかいる?」
ミズハが首を振る。
「そっか。今日は友達来るからうるさくなるかもだけど」
「大丈夫」
小さな声で答えるとミズハは冷蔵庫の影に隠れた。
何気に首だけ動かして追いかけてみるけど、もうそこにはいない。神棚の中に入ってしまったのだろうと思い、食器を洗う。
部屋の掃除は魔法のおかげであっという間に終わってしまうので夕飯の準備をしておく。
鍋に張った水に昆布を付けて火を入れておき、その間に野菜をざっくりと切る。
それからアリスにオークの塊肉を出してもらって薄切りにしていく。
さっきの鍋と別の小鍋で湯を沸かし、薄切りにした肉を軽く湯に通して脂と灰汁を落とす。
「それにしてもカナタは料理を良くするな」
「ん? そうかな?」
一人で狩りをしていたアリスがやって来て言う。
「そうだろう。我などまったくできん!」
「ん~自慢ではないなぁ」
と答えつつ、まぁそんなものなのかもしれないと思う。
「特別、習ったりとかしたわけじゃないよ。母さんがご飯を作ってるときにちょっと手伝ったり、横で見たりしてただけ」
「……そうか」
「それを思い出して真似したりしてるだけだよ」
だから、特別凝った料理ができるわけでもない。
具材を切り終わり、後はスープの素を入れて一緒に煮込むだけの状態にしてから冷蔵庫に入れておく。
「さて……お昼ご飯どうしよう?」
「朝あれだけ食べたからいらんぞ」
それもそうか。
「それなら、二人を迎えに行くまで狩りでもする?」
「うむ。こうなったからには舐められぬように少しでも装備を向上させておかねばな」
「なにげにハマってるよね?」
「そそそ! そんなことなかろう! この我が、たかが遊戯なんぞに!」
「でも、楽しいでしょ?」
「ぐむ!」
「遊戯は楽しいことに意味があるからね。それで、どの素材を狙うの?」
「むむ……」
そんな感じで時間が来るまで二人で狩りをした。
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