第55話 成長

「ほほ、なるほどなるほど……私が教えられる事はもうありませんね」


ランク戦前日。レヴィとの修行で免許皆伝を貰った。まだ、この人の厚みに剣技だけで勝つことは出来ないがこれならば余程の敵が来ない限りはなんとかなるだろう。


「はい、ありがとうございました……!!」

「ほほ、同盟関係ですから当然のこと……お気になさらず……」


レヴィはそう言うと、ログアウトしようとする。

そこで俺は「待って下さい」と言った。


「どうしたのですかな?赤星殿?」

「その……レヴィさんは父さんと会ったことあるんですか?」

「ほほ、初めて会ったのは貝瀬殿がまだ、20代の頃でした。真っ直ぐな瞳をした良い男性でしたよ」

「そうですか……!!」

「しかし、今のあなたのような孤高な存在ではなかったですがね」


レヴィは俺の頭をそっと撫でると最後にこう言った。


「赤星殿。もっと沢山の出逢いを求めなさい。さすればあなたはもっと強くなれる!!」

「…………でも、俺は……」

「確かに失う事は誰でも悲しい。でも、人間は1人では生きてはいけないのです。重々それを承知なされ……!!」


俺は黙り込んでしまった。

何故ならまだ1歩が踏み出せずに入れられたからだ。


「ほほ、では。また会いましょう。赤星殿……健闘を祈ります……」


レヴィは今度こそログアウトしてしまった。

父さんを失った時みたいにまた、失う事は怖い。

でも、俺は1歩を踏み出せるだろうか?


俺は思わず悩んでしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る