第十五幕 14 『悲壮なる決意』


 ミロンの活躍により、異界の亡者の無限湧きは止まり、その数は少しずつ減じている。


 私とミーティアのシギルの光に触れた亡者の多くは脆く崩れ去る。

 残った者も、テオの聖剣やルシェーラの神聖槍戦斧ルーンハルバードに切り裂かれ、ステラの銀矢に貫かれ、ポチの爪に引き裂かれて消滅する。

 そして、シフィルやメリエルちゃんの魔法によって、纏めて滅せられると……



 周囲を埋め尽くすほどだった黒き亡者の群れは、ついにその姿が見えなくなった。




「よし……!異界の魂は全て滅したぞ!」


「後は……」


「『調律師』だけですわ!!」



 そして、私も含めた全員が空を振り仰ぐ。


 そこでは、調律師とシェラさん達の激しい空中戦が繰り広げられていた。



「シフィル!ミーティア!」


「分かってるわ!![風神招来]!!」


「うん!![飛翔]!!」


 私の呼びかけに、即座に意図を察した二人は魔法によって空に舞い上がった!



「ステラ!メリエルちゃん!私達は地上から支援するよ!!」


「ええ!!任せて!!」


「りょーかい!!バンバン行くよ!!」


 空を飛べない私達は、魔法や弓で遠隔攻撃にて支援だ!




「……手出しが出来ないのは、歯痒いですわね」


「ルシェーラ、気を抜くなよ。地上に近づけば俺たちにも攻撃の機会があるかもしれん」


「ええ、もちろんですわ」


 前衛二人も、戦いの趨勢を見極めながら攻撃のチャンスを覗う。



 ここまでくれば……


 全員の力を結集して、調律師を打倒する!!














ーーーー シェラ ーーーー



 どうやら地上の方は決着がついたようね。


 ヴィーとの戦いは、一進一退の攻防が続いて膠着状態となっていたけど……


 地上からは、シフィルさんとミーティアちゃんが援軍として駆けつけてくれた。


 そして、地上に残るカティアさんたちも、魔法や弓で支援をしてくれるだろう。






「ヴィー!!ここまでよ!!」


 異能の『調律』は対策され、異界の亡者たちも全て滅ぼした。

 いかにヴィーの力が強大であったとしても……そう、思ったけど。 



「……まだです。まだ、私は……戦える!!」



 この子はまだ戦う意志を捨てない。



「なぜ……そこまでして……」


「リシィ……無駄だぜ。お前も分かっているはずだ」



 ……そう、分かっている。


 異界の魂に喰われた者は、もはや人であった時とは別人に成り果ててしまう。


 それでも、彼女が私を『姉さん』と呼ぶ限り……肉親の情を断ち切ることが出来なかった。



 それでも……!!



 私が意を決して、調律師に引導を渡すべく再び闘志を燃やすと……


 ヴィーは更に上空へと舞い上がり、星剣イクスヴァリスを頭上に高々と掲げた!!

 


「これが本当に最後の切り札……エメリール神も恐れたと言う、星剣イクスヴァリスの真の力を見るがいい!!」



 ……来る!!


 前回の戦いで、私を戦闘不能にまで追い込んだ力が!!




 キシッ……



 空間が軋む音が響く……!


 

 日中にも関わらず陽光が退き、まるで夜の帳が下りたかのように辺りが闇に包まれる。



 そして、天には星々の煌めきが満ち……無数の光が星剣の黒い刀身に集まっていく!!




 あれは自らの魂の力を削って放つ究極の魔法。


 かつて、テオフィールも一度だけ使ったことがあるけど……数時間は完全に行動不能になるほど、使用者に絶大な消耗を強いる両刃の剣だ。


 今の強大な力を持つヴィーであっても、大きな賭けになるのは間違いないはず。

















(……あなたが再びあの星の剣と対峙する時、それに対抗するためには…………)



 脳裏に、神界でお会いしたエメリール様の声が蘇る。



 そう……私は、あの方から、星剣の力に対抗する術を得ている。


 だけど、それが上手くいくかどうかは未知数。



 でも、覚悟を決めてやるしかない。






「さぁ……全てを滅せよ!![破軍流星]!!」




 そして、破滅的な力を持った流星群が降り注いだ……!!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る