第十四幕 32 『加護』
最終的に『黒き神の神殿』へ向うメンバーを決定した。
そして私達はそのままエメリール神殿総本山に向う。
その道すがら街の様子を窺うが、普段通りの賑わいを見せつつも、人々の表情はどこか不安げな様子だ。
グラナの侵攻が始まる事は周知されているので、当然とも言えるか。
まぁ、イスパルの民は、いざとなったら武器を手にとって自分の身は自分で守るくらいの気概を持った人が多いのだけど。
でも、そんな事にはならないようにするのが、私達の役割だ。
エメリール神殿総本山では、普段にもまして多くの人が祈りを捧げている。
これも戦乱の不安によるものだろう。
私達も皆と同じように跪いて祈りを捧げる。
そして、いつもの感覚がやって来て……
「……ここが神界?」
初めて神界にやって来たシェラさんが呟きをもらす。
私達が立っているのは……いつぞやの、神々の宴に呼ばれた時のような小高い丘の上の草原だ。
そして、あのときと同じように、神々が勢揃いして私達を迎えてくれる。
……いや、リナ姉さんだけ居ないか。
「カティア、そして共に戦う勇士たち。よく来てくれました。……シェラ、あなたにも会えて嬉しいわ」
「え?…あ、私もお会いできて光栄です」
リル姉さんに名指しで言われたシェラさんが、戸惑いつつも挨拶を返す。
リル姉さんはシェラさんの事を、かつてのリディアのパーティーの一員として気にしていたけど、シェラさん自身はそれを知らないからね。
ともかく、リル姉さんと約束した通り皆を連れてきたわけだけど。
「リル姉さん、約束通り来たけど……これからどうするの?」
「これから邪神と対峙するかもしれない貴方達に……私達の力の一端、加護を与えます」
……!
神々の加護……それは間違いなく、これからの戦いで大きな力になる。
「神々の加護が……私達に……凄いことですわ」
ルシェーラが驚き呆然と呟くが、他の皆も概ねそのような感じ。
神の加護なんて、長い歴史の中でも限られた人間にしか与えられなかったものだからね。
私は既に、リル姉さん、リナ姉さん、リリア姉さんの加護をもらってるけど、何れも強力なものだった。
「ちなみに、リナの加護は前回あなた達が神界に来たときに……回復魔法の使い手であるメリエルに与えてるわ」
「え?いつの間に……」
「そう言えばリナ姉さんはどうしたの?」
「リナは今、ウィラー王国軍に帯同してグラナ国境 付近での戦闘支援に向かってるわよ。アルマ地方は300年前の大戦で最も激戦が繰り広げられた地。私もこのあと、リナを目印にして地上に降臨するつもりよ」
そうか、もう既に現場に向かっていてくれてるのか。
「我らもそれぞれが戦線へと降り立つつもりだ」
「ま、どこまで力を振るえるかは分からねぇがな。出来るだけの事はするさ」
「ディザール様、オキュパロス様……」
本当に、神様たちが地上に降臨するんだ……
改めてそのスケールの大きさを実感する。
これならば、私も安心して『黒き神の神殿』に向かうことができる。
「どうか……お願いします。一緒にこの世界を護って下さい」
切なる想いを込めて頭を下げながら、私たちはお願いするのだった。
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