第十四幕 26 『帰国』

第十四幕 26 『帰国』



「じゃあ、またね、カティアちゃん」


「うん。リナ姉さん、色々とありがとうね」



 エメリナ大神殿を後にした私達は、イスパルに帰国するべく、飛竜籠が待機している大樹広場へとやって来た。

 既に騎士団の人たちの手により飛竜籠の準備は整っているようだ。

 周囲には多くの野次馬も集まってる。



 リナ姉さんとはここで一旦お別れだ。

 また神界に行くことになってるから、また直ぐに会う事になると思うけど。



「カティア殿、よろしく頼む。……何か凄いな?」


 イスファハン王子と合流したが……私の姿を見るなり、目を丸くして言う。


 やっぱり目立つよねぇ……

 そんなに派手なわけではないんだけど。



「まぁ、色々ありまして……道中でお話しますよ」



 邪神の件も話しておかなければいけないし。

 前線の部隊に合流する予定のイスファハン王子にとっては、グラナ侵攻の際には神々の助力が得られると言うのは朗報だろう。




「じゃあ、ロコちゃん達、お願いね」


『『『キュオッ!!』』』


 さあ、出発だ!







 そして飛竜籠は大空へと舞い上がる。

 眼下に森都を見下ろしてぐんぐんと上昇していく。

 あれほど巨大だった精霊樹も、見る見るうちに小さくなってしまった。


 数日間だけだったけど……ここでは色々なことがあった。

 さようなら、森都モリ=ノーイエ。

 またいつか来る日まで……






















 帰路は往路と同じように、聖都ブリュネを経由し、そこで一泊してからアクサレナへと降り立った。



「「カティア様!!」」


「あ、ケイトリンにオズマ!ただいま!」


「ご無事で何よりです」


 飛竜籠を降りた私達を最初に出迎えてくれたのは、私の護衛役であるケイトリンとオズマだった。


 今回は半ば無理やり出てきたから……随分と心配をかけたかもしれない。



「二人とも……騎士団に同行したって聞いてたけど?」


 ウィラー救援軍……今では対グラナ戦線での支援を行うため、リュシアンさんを将として騎士団が派遣されているはず。


「カティア様がアクサレナに帰還されると聞いたので、本来の役目を果たすため戻ったのです」


「そっか。またよろしくね」


「「はっ!」」



 同行していたルシェーラ達やイスファハン王子とは、ここで一旦お別れだ。


 私とテオは到着早々に、これまでの報告を行うべく父様の執務室へと向う。

 通信魔導具スマホで逐一連絡はとっていたけど、総括と今後の予定を話し合うには、やはり対面の方が良いね。



「グラナの様子は?」


 執務室に向う途中、歩きながらケイトリン達に最新の情報を聞いてみる。



「今の所は特に動きはありませんね。ただ……日に日に不穏な気配が高まってきているように感じる、とか」


「実際に瘴気のようなものが濃くなってるなんて話も上がってます」


 なるほど……いよいよ猶予はなさそうだ。














「失礼します。父様、ただいま戻りました」


「カティアにテオか。今回はご苦労だった」


 執務室の中に入ると、いつも通り書類仕事で忙しそうにしている父様が、手を止めて私達を迎え入れる。



「良くやってくれたな。こちらの方にもウィラー王から感謝の言葉が届いている」


「盟約の国同士の強い結束が示せたのは良かったですね。それに……邪神に関する情報も大きな収穫でした」



 そして私は、ウィラーでの出来事についての詳細を父様に報告するのだった。

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