第十四幕 23 『メンバー』


「カティア、いらっしゃい。テオとメリエルも。それに……三人ははじめまして、ね」


「はじめまして、エメリール様。お会いできて光栄ですわ。私はカティアさんの友人で、ルシェーラと申します」


「同じく、シフィルです」


「ステラです。カティアさんにはいつもお世話になっております」



 今回初めて神界に呼ばれた三人と、リル姉さんが挨拶を交わす。



「ふふ……カティアと仲良くしてれてありがとうね」


「リルお姉ちゃん、カティアちゃんのお母さんみたいだね」









 さて、神界のリナ姉さんの家にやって来た私達。

 橋のような細い陸地で繋がった湖上にある小島に建ったそれは、赤い煉瓦造りの小さな家だった。

 おとぎ話に出てくるような可愛らしさだ。

 リナ姉さんは可愛いもの好きなんだね。


 家の前の庭にテーブルセットが置かれ、私達が来たときには既にティーセットが広げられていた。

 多分リル姉さんが準備してくれてたのだろう。



「さあ、話を聞かせてくれるかしら。あなたの……運命に関わる話を」


 リル姉さんは本当は私に危険な事はして欲しくないんだよね……

 でも、それを飲み込んで覚悟しているような雰囲気だ。


 きっと、リュートから聞いた話をすれば……『黒き神の神殿』に向う事を告げれば、その心配も大きくなると思う。

 それは本意ではないけど……私も覚悟を決めますか。



 私は一つ頷いてから、ウィラーの聖域で出会ったリュート(のコピー)から聞いた驚くべき話を、リル姉さんに話すことにした。


「リュートから聞いた話、皆に全部・・話すよ」


「カティア……良いのか?」


 テオが確認してくる。

 彼が気にしてるのは、私が『全部話す』と言ったからだろう。

 つまり、私の前世に関わる話も含めて、と言うことだ。

 この場で私が転生者であることを知っているのは、リル姉さんとリナ姉さん、テオだけだ。

 ルシェーラ達には『黒き神の神殿』に関する話は伝えたけど、私自身に関わる事は話していない。



「うん、この場にいる人達には話しても良いかな……って思う。ううん、聞いてもらいたい。父様や父さんたちにも何れは話をしようと思ってたし」


 私の大切な人たちなら、きっと受け入れてくれる。

 だから、知ってもらいたい。




 そして、私は話し始める。

 ルシェーラ達には、私が転生した経緯も補足しながら。

 皆、静かに私の話を聞き入るのだった。
















「……なるほど、ですわ。まぁ何というか、腑に落ちた……と申しましょうか。テオフィルス様は既に聞いてらっしゃったのですわね?」


「ああ。やはり、以前に神界に来たときにな」


「そうですか……そして、今回は私達にも秘密を打ち明けて下さった、と」


「えへへ……カティアが信頼してくれてるって事だよね!」


「だね。嬉しいじゃないの。ねえ、ステラ」


「ええ、本当に……びっくりしましたけど」



 反応はそれぞれだけど、一先ず受け入れられてはいるようだ。

 やはり怖くもあったので、ホッとした。



「遺跡ダンジョンの時のアレは、そういうことでしたのね……どう考えても知ってるとしか思えませんでしたもの」


「あはは……でも、まるっきり記憶と同じってわけじゃわないからね。あの時はたまたま合致してたけど」


 ブレゼンタム東部遺跡の時の話だ。

 ゲームの記憶を頼りに、『勘です!』って無理やり納得させながら道案内したけど、まぁ怪しかったよね。



「それにしても……アニマに偏重しているというのは気が付かなかったわ……。あ、うっかりとかじゃないからね!私でもよく注視しないと気が付かないって事なのよ!」



リル姉さん、気にしてるのか……



「そ、そんなに焦って言わなくても分かってるよ。メリアさんも最初は分からなかったみたいだし……」


 ホントはちょっと『うっかり』を疑ってたけど。


「(じと……)ホントに?」


「ホントホント」


 うっかりでも、鋭いんだよなぁ……




「コホン……それはともかく。その『黒き神の神殿』に行くのね」


「うん。きっと何かが起きる……って、リュートやメリアさんは言ってた。私もそう思ってる」



「……分かったわ。なら、あなたが不在の間は……私達があなたが帰るべき地の守護に当たりましょう。既に他の神々には話を通してあるから」


「うん、ありがとう……リル姉さん」


 リナ姉さんからも聞いてたけど、神々が私達の住む世界を護ってくれるなら、これほど心強いことはないよ。



「それで、一緒に行くメンバーは決まってるのかしら?」


「え?え〜と……」


「もちろん、私はカティアと一緒に行きます」


 リル姉さんの問に、咄嗟に答えられないでいると、間髪入れずにテオが表明する。


 そして……


「私もですわ!!」


「私も!今度こそ……!」


「私も…!」


「もちろん私も行くよ!!」


 ルシェーラ、シフィル、ステラ、メリエルちゃんも迷いなく宣言する。



「皆……いいの?何が起こるか分からないよ?」


「もし邪神なんてものが復活したのなら……どこにいても安全とは言えないと思いますわ」


「ルシェーラの言う通りね。だったら、自分の手で運命を切り開きたい……でしょう?」


「……そうだね。私も、皆の力を貸してもらいたい」



 大転移魔法[天道律]は、リュートから聞いた話では転移できる人数に限りがあるとの事だ。

 最大でも10人ほどとか……


 だから、最終的に『黒き神の神殿』へ向うメンバーは厳選しないとだけど、彼女たちが来てくれるのなら助かる。



「……最終的に、『黒き神の神殿』に向うメンバーが決まったら、また神界に来てもらえるかしら。他の神々も集めて……あなた達にできる限りの事をしてあげたいから」


「ありがとう、リル姉さん。じゃあ、その時になったら……アクサレナのエメリール神殿に行くね」



 アクサレナに戻ったら父様達にも話をして……メンバーを決めないとだね。

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