第十四幕 13 『道』
賢者リュートは、『黒き神の神殿』へと至る『道』を遺したと言う。
その『道』を使うためには3つの鍵が必要だと。
そして、私達は既にそれらを手にしている。
一つ、『異界を導くもの』は
一つ、『異界を生み出すもの』は
そして……『神の如き力を行使するもの』は、私たちの大切な娘であるミーティアの事だった。
「ミーティアやミロンがダンジョンコアを使って道を開いてくれる……という事ですか?」
「そうだ。[神帰回廊]という魔法は知ってるかい?」
「え、ええ……転移の魔法ですよね。魔族やミーティアが使ってました。でも、あの魔法はそれほど遠距離は転移できないはず」
リル姉さんに以前聞いた話では、アクサレナの王城から精々が数街区程度の距離しか転移できない……と言う事だった。
「あぁ、転移の魔法にも等級があってね。最下級が[神帰回廊]。そして、私が『道』と呼ぶのは、転移系最上級の……大転移魔法[天道律]だ。本来は特定の星の巡りと大掛かりな儀式が必要なんだけど……」
「……もしかして、3つの『鍵』がそれらを肩代わりしてくれる?」
「その通りだ。具体的には……ダンジョンコアで先ず擬似的なダンジョンを生み出す。次に導き手であるミロンが、私が『黒き神の神殿』に付けた目印を捕捉する。最後に神の依代……君たちの娘が魔法を行使。ダンジョンコアが生み出した異界に『道』を拓く。こう言う手順だね」
それほどの手順を踏まなければ使えない大魔法……
「でも、ミーティアって、今の幼女の姿だと使える魔法にも制限があるみたいなんだよね……まぁ、少女モードになれば使えるのかな?」
[神帰回廊]も、少女モードじゃないと使えないみたいだし。
逆に言うと、少女モードなら私たちの知らないような強力な魔法もバンバン使ってたけど。
「元々、神の依代には様々な魔法の知識をインプットしてあるはずだ。……多分、普段は強力な力を抑えるためにリミッターを施してるんだろうね」
「……ミーティアは優しい子だからな」
「うん、そうだね」
テオの言うとおりだと思うけど……要所要所では躊躇わずにリミッター解除してくれるんだよね。
本当、頼もしい子だと思うよ。
「なかなか良い関係を築いてるみたいだね。何よりだよ。……それで話の続きなんだけど、実は魔法を行使する場所も重要なんだ」
「場所……地脈の集まるところとか?」
「お、いい線いってる。その通り……と言いたいところなんだけど、結構細かな条件があってね。実は私は[天道律]を行使するのに最適な場所を既に整えてある。私が『次に向かうべき場所を指し示す』と言ったのは、その場所の事だよ」
大転移魔法を行使するのに最適な場所……?
それはいったい……
「その場所は……君達が私の足跡を辿る事になった、『始まりの地』だ」
「「出たな、中二病」」
私とメリアさんの言葉がハモった。
まあ、今回は答えは分かったよ。
賢者の足跡を辿るきっかけになった地と言えば。
「……学都アスティカント。もしかして、賢者の塔にまだ秘密が隠されている?」
「そうだ。君達が記録映像を見たであろう隠し部屋に、更に仕掛けを施したんだよ。それもミロンがいれば分かるはずだ」
う〜ん……ミロンかぁ……大丈夫かなぁ?
ちょっとポンコツなんだよなぁ……なんて失礼な事を思ってしまった。
でも最近はすっかりマスコットキャラみたいな感じだったしなぁ……
アクサレナ市街戦では黒魔巨兵相手に戦ってくれたけど。
ともかく。
これで『黒き神の神殿』の場所と、そこへ行く手段が分かったのは大きな収穫なのは間違いないね。
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