第十一幕 46 『水攻め』
第77階層のボス、
そして今気が付いたのだが……戦いの開始とともに円形闘技場の周囲は結界のようなもので閉ざされてしまっていた。
更には……
「海水が!?」
「水攻めですか」
「要するに……」
「タイムリミット付きと言う事ですわ!」
そう。
結界に閉ざされた上に、周囲からは海水が流れ込んで来ており、すり鉢状の底に溜まって少しずつ水位が上がっていく。
戦いに時間をかけるほどに不利になってしまうだろう。
それどころか、満杯になってしまえば溺れ死んでしまう。
短期決戦が要求されるが……敵は見るからに強大で、撃破するのは困難を極めるだろう。
だが悔やんでも仕方がない。
全力で持てる力を結集して挑む他はない!
「みんな!様子見は無しで最初から全開で行くよ!!」
そう言いながら私はリヴェラを薙刀モードに変えて、ディザール様の
カイトも同様に
ルシェーラは……おお!?
圧縮された闘気が身体を纏い、何だか淡く光ってますけど。
またも一段とレベルアップしたんだね…
そのうち黒髪が逆立って金髪になりそうだよ。
ケイトリンはクレイモアを手に中衛に陣取り遊・要撃の構え。
ロウエンさんはクロスボウで支援しつつ、大魔法の準備に入ったリーゼさんの護りに付く。
そしてミーティアは…
「じゃん!
以前に『奇術師』との戦闘時に見せた少女モードとなって、私と同じくディザール様の
それは凄く頼もしいのだけど……その口上はなあに?
キラ〜ン!と、ばっちりポーズまで決めちゃって……頭の上に乗ったミロンまで同じポーズを取っているし!
うちの娘はいったい何処へ行こうとしてるのだろうか?
と、ともかく!
皆が持てる最大の力で戦いに望む!
まず口火を切ったのはルシェーラだ。
すり鉢状の闘技場の階段を一気に駆け下りて、途中で大きく跳躍。
「はぁーーーーっ!!!」
ぶぉんっ!!
そして、闘気を纏ったルーン・ハルバードを振るい、遠心力がたっぷり乗った一撃を見舞う!!
『[水壁]』
だが、瞬時に水の防壁によってその一撃の勢いは大きく削がれる。
水壁を破壊することはできたが、ルシェーラの初撃も不発に終わる。
その隙に左右から回り込んだ私とカイトが肉薄して、交錯しながら海蛇竜の首に斬撃を入れる!!
ザシュッ!!
よしっ!手応えありっ!!
……なんだけど、傷口からは血の代わりに水が吹き出した?
どうもまともなダメージは与えてないような?
…っと!!
ぶんっ!!
反撃で太く長い尾が私達を薙ぎ払うように襲いかかる!
それを紙一重で身を屈めて躱し、一度後退する。
それと入れ替えでミーティアが双剣を振るって私とカイトが斬ったところに再度斬撃を入れる!!
ザンっ!!
何と!
彼女の攻撃は海蛇竜の太い胴体を切断してしまった!!
「やった!!」
「まだだよ!!油断しないで!!」
見るからに致命ダメージなのだが……そう思っていると、切り離された双方の胴体の断面から水が吹き出て、それは水流となって2つの胴体を結んで引き寄せ……何事もなかったかのように復元してしまった。
「あ〜!!元に戻っちゃった!?」
悔しそうにするミーティアに向かって今度は海蛇竜の顎が襲いかかった!
「わわっ!?っとぉっ!!」
ガチンっ!と噛み合わされる顎からギリギリで逃れて退避した。
そこでリーゼさんの魔法が完成する!!
「[爆雷・散]!!」
無数の拳大の雷光の爆弾が敵に向かっていく!!
ババババッバァーーーンッ!!
耳を劈く連続した爆裂音が響き、花火のように弾ける雷撃が海蛇竜に炸裂した!
それによって巨体のあちこちに大穴が穿たれたり、胴体が分断されたのだが……
やはり傷口からは大量の水が吹き出して、今度はこちらに向かって激流が向かってきた!!
怒涛の如き攻撃を、みんな何とかやり過ごす。
そして、海蛇竜の方はと言うと……再び元の姿を取り戻していた。
「くっ……攻撃が効いてない!?」
「また弱点を見つけて、そこを攻撃しないとダメなのかも!」
今回も王樹の時と同じように弱点となる核を見つけて攻撃する必要があるのかも知れない。
だが、先程の水流の攻撃によって、周囲から流れ込む海水と合わせて闘技場の水位はかなり上昇してしまった。
タイムリミットは刻一刻と迫るのであった…!
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