第十一幕 36 『突破口』

 樹海の試練。

 数多のトレントに囲まれながらの『王樹』との戦いは熾烈を極めていた。


 圧倒的な物量が押し寄せるのを凌ぎながら巨大なボスとの戦闘を強いられるのは、まさしく試練であった。



 何とか突破口は無いものかと模索しているとき、ミーティアが発見したのは王樹のうろ・・だった。


 そこから漏れ出る光…そこに突破口があるのかも知れないと、私は思うのだった。




「みんな!少しの間お願い!!」


「カティア様…?」


「私はあそこのうろ・・を調べて見る!!だから、その間……」


 この状況で一人抜けるのは危険だが…このままでも何れはやられてしまう。

 だったら、イチかバチか……



「任されましたわ!!」


「俺もシギルを発動する!だからその間に!」


「私も、もう魔力の温存は考えません!!」


「みんな……ありがとう!!」


 みんなも賭けに乗ってくれたようだ。



「ですが、どうやってあそこまで…?」


 ケイトリンの問も尤もだ。

 王樹の高さは少なく見積もっても50メートルは下らないだろう。

 うろはその半ばほどの高さに口を空けており、そこまでの間には取っ掛かりとなる枝等も無いので到達するのが困難だ。


 シフィルがいれば、飛翔の魔法が使えたのだが。


 しかし……


 私は魔法を使うため本来の杖形態にしていたリヴェラに、あるイメージを伝える。

 それを汲んでリヴェラは形態を変化させた。


「こうするんだよ!」


 私はそう言いながら、リヴェラが変化した……先端に鉤の付いた長い鎖を振り回し、勢いをつけてうろの少し上にある枝に向かって投げつけた!


「おお!」


 ジャラジャラと音を立てた鎖は、狙い違わず枝に巻き付く。

 そして、それを頼りに私は跳躍して、王樹の幹を蹴りながら登っていく。



 しかし、それを邪魔しようと王樹の枝が襲いかかってくる!



 ドォーーーンッッ!!



 だが、その攻撃は爆発によって逸らされた。

 少し爆風にあおられるが、駆け登るのは止めない!



「ママのジャマはさせないの!!」


 どうやらミーティアが[爆裂]の魔法で支援してくれたようだ。


「ミーティア!助かったよ!あともう少し…!」


 巨体をくねらせ、私を払い落とすように枝が襲いかかってくるが、ミーティアの支援によって何とか登っていく。


 そして、ついに……!!



「よしっ!!」



 私は一気に飛び込むようにうろの中にはいった!


















 ……これが、王樹の中?


 勢い余って前回り受け身を取りながら中に入った私は、直ぐに立ち上がってうろの内部を見渡した。

 リヴェラは再び変化させて、片手剣形態にしている。



 その空間は思ったよりも遥かに広い。

 明らかに王樹の外観よりも大きな空間だ。

 ぼんやりと光に照らされて視界は悪くない。


 そして目を引くのは、淡い緑の光を放つ球体。

 直径1メートル程のそれは、根のようなもので空中に繋がれていた。


 そこから魔力の波動が放たれている。





 やはり……これが魔核か。


 これを破壊すればきっと……!



 私は一気に近付いて、魔核を破壊するべく剣を振りかぶる。


 しかし…



 キィーーーーンッッ!!




「くっ!?」



 超音波のような衝撃波が襲い来る!


 流石に王樹もただ破壊されるのを待つだけではないか。


 だが、これくらいなら……

 無理矢理押し通す!!



「せやぁーーーーっっ!!!」


 衝撃波に押し負けないように、裂帛の気合を発して渾身の一撃を振るう!!



 ガキィンッッ!!



「なっ!?」


 硬い金属音を発して私の攻撃は弾かれた。


 リヴェラは神器なのに……いや、魔核に当たる寸前に何かの結界のようなものがあったような気がする。



 だったら…!



 私はここでディザール様のシギルを発動!

 青い光に包まれてリヴェラが輝きを放つ。



 今度は破壊の力を一点に集中するべく、神速の突きを繰り出す!



 キィーーーーンッッ!!



 再び衝撃波が襲ってくるが、構わずに踏み込む!


 突き出した右腕の血管が破裂し血しぶきが舞う。

 それでも痛みを無視して渾身の一撃を見舞う!


 リヴェラの先端が魔核に届こうとするとき、直前で確かに何らかの障壁に阻まれようとする。


 構うもんか!

 無理矢理一点突破だっ!!



 そして、ついに……!



 バリィンッッ!!




 ガラスが割れるような甲高い破砕音とともに、結界もろとも魔核は砕け散るのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る