第十一幕 24 『突き進む』
さて、初っ端からトラブルがあったが…
いや、ヤツはGランク…じゃなくてFランクだから第1階層に出現するのは普通なんだけど。
…つまり私にとっては序盤こそむしろ鬼門である、と。
とにかく。
1層2層はスルーして3層を目指す。
そして、その後はヤツに遭遇することもなく、サクサクと進んで階層を下っていき、第3階層まであっという間にやって来た。
このあたりから多少は魔物のランクも上がり、実入りもそこそこになってくる。
なので初級者なんかは経験を積むためにここを中心に探索する事が多いみたい。
「じゃあ、ここは少し探索してみようか。……確かこの階層で
「ええ、そうですわ。……またイレギュラーが発生するかもしれませんわね」
「……何で意味ありげに私を見るの?」
私が居るからって何も起きないよっ!
…多分。
とにかく第3階層は探索していくことにしたのだが、特にトラブルもなく見回っている。
途中、かなり広大な空間を持つ部屋があったのだけど、どうやらここで
確かに場所的にはお誂え向きだと思うが…
今回は何事もなく踏破。
魔物にも何度か遭遇したが、何れもこのメンバーなら瞬殺できる相手だった。
取得できたアイテムも特に目ぼしいものは無い。
「ん〜……第3層でもこんなとこか……まだ時間もあるし、このまま第5層まで行っちゃおうか?」
「ですわね。油断するわけではありませんけど、私達のレベルだと少々物足りないかもしれませんわね」
「第5層…確か、ボスがいるんだよな?」
「つよいまもの?」
「そうッスね。ボスと言ってもC〜Bランク程度のヤツらしいッスけど」
「その程度ならどうにでもなりそうですね〜」
「その、隠し部屋の場所というのは目星が付いてるんですか?」
そのリーゼさんの問は尤もだね。
一層あたりの広さもかなりのものだから、闇雲に探していたのでは大変である。
一応、ヒントのようなものは本に書かれていた。
『閉ざされし部屋の深奥に来たれ。この書を持つものに見えざる扉は開かれん』
だって。
…普通の言葉で書きなさいよ。
中二病が再発でもしてたのだろうか…
「この本の記載によれば、多分…そのボス部屋に隠し扉があるんじゃないかと」
ボス部屋は扉で閉ざされてるからね。
そのまんまの意味ならそこに隠し部屋があるのだろう。
「じゃあ、一気に第5層まで行くって事で良いかな?」
私がそう問いかけると、特に皆から否やは無かった。
と言う訳で、第3層も早々に探索を切り上げて、第4層もスルーして…第5層へと直行する事となった。
はい、ということで…やってまいりました第5層。
特にこれまでと見た目の雰囲気は変わらないけど、序盤の区切りということで、どこか空気がピリピリしているような気がする。
実際、出現する魔物もこれまではE〜Fランク中心で、稀にC〜D程度まで出る感じだったのが、この階層はDランク以上が殆どになる。
なので初級者がここまで来る事はまず無い。
「おっと、早速お出ましみたいッスね」
「何が来る?」
「気配が希薄ッス。多分スライムとかッスかね。天井にも注意するッスよ」
スライム…もちろん、某有名RPGのアレみたいに可愛らしいヤツなんかじゃなく、ドロドロのアメーバとか粘菌が巨大化したようなヤツだ。
魔物としては雑魚ではあるのだけど、ロウエンさんが注意を促すように、天井とかから不意打ちで襲われたりすると結構危険だったりする。
注意しながら慎重に進むと……
「……うじゃぁ〜」
「これまた…」
「かべも、てんじょうも、ゆかもブヨブヨなの!」
そこには床から壁から天井までビッシリと覆い尽くすスライムの大群が行く手を阻んでいた。
「いくら雑魚でも、これだけの数が一斉に襲いかかってきたら一溜まりもないですね…」
「まぁ、動きはトロいから大丈夫だとは思うッスけど。魔法戦力が居ないパーティーだとキツいッスね」
これだけの物量だと武器でチマチマやってたらキリがないし、囲まれる危険性がある。
魔法耐性は皆無だから一気に魔法で殲滅するのが一番だろう。
火でも雷でも氷でも…何でも良く効く。
「焼き払うのが手っ取り早いッス。んじゃ、リーゼちゃんよろしくッス」
「はい、お任せを。……[炎龍]!」
リーゼさんが使ったのは、[雷龍]の火属性バージョンだ。
炎の龍が通路を舐めるように渦を巻きながら進んでいくと、スライムたちは為すすべもなく尽く焼き払われていく。
スライム程度に上級魔法なんて…と思うかもしれないが、初級魔法で一匹ずつ…なんてやってたら結局消費魔力は上級並にかかってしまいそうなので、リーゼさんの判断は正しいだろう。
程なくして殲滅完了。
場合によっては脅威だが、対抗手段があれば…これこの通り、と言う訳だ。
第5階層、最初の洗礼も問題なく突破して、私達はボス部屋を目指して奥へと進むのであった。
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