第十一幕 16 『賢者は誘う』
ダンジョンに関する賢者リュートの研究成果。
その結論を一言で言えば…
ダンジョンとは一種の魔法装置…と言う事になる。
現在の通説ではダンジョンは一種の魔物ではないか、と言われている。
それはこの本でも言及されていて、特に否定もされていない。
ただ…その発生プロセスは他の魔物たちとは異なり、人為的に仕組まれたものではないか?と言う推論に基づいて考察を重ね、実地で確認して結論に至ったと言う事らしい。
装置と言うからには目的がある。
ダンジョンの存在意義、その目的とは……異界の扉を封じること。
これには私も驚いた。
だが、その結論に至った決定的な理由については詳しく書かれていなかった。
と言うか、それについては……
『詳しくはWEBで!!』
…イラッ!
真面目にやれ!!
『……ではなく、アクサレナ丘陵ダンジョンの第5階層に隠し部屋があるので、そこに行けば更に詳しいことが分かる。この本が鍵となって道が開かれるだろう』
…と言うことらしい。
実際にその目で確かめてみろ、と。
果たしてそこに何があるのか…それは見てみないと分からないけど。
とにかく…賢者の
翌日、教室に顔を出すと早速ルシェーラ達に本の事を聞かれた。
メリエルちゃんやガエル君も態々ウチのクラスにきてくれた。
なお、レティには賢者の塔の経緯も含めて
人のこと言えないけど、やっぱり夜更ししてたよ。
そして、『流石、主人公だね』って言われた。
何か反論出来なかったよ…
「……と言う訳なんだよ」
「異界の扉を封じる…ですか」
一通り説明し終わると、皆神妙な面持ちになる。
異界の魂関連の話は、レティやルシェーラ、ステラであれば、ある程度は事情も知ってると思うけど、他の皆は詳しい経緯は知らないだろうし突然こんな話を聞いても戸惑うよね。
一応、口止めはお願いしておいた。
「そうすると…カティアさんがダンジョンに潜って確認すると言う事でしょうか?」
「うん、そうしようと思ってる。でも、色々予定があるから…上手く調整して空き時間を作らないと…週末になっちゃうかな?」
学園はもちろん、公務や歌劇団の仕事もあるから…ゆっくり休む暇がないねぇ…
「でしたら、是非私も連れて行って下さいな。私達は10階層まで攻略してますし、ご案内出来るかと思いますわ」
「そうね、私も連れて行って頂戴。何だか面白そうだし」
「シフィル…遊びじゃないのよ。でも、私も力になりたいわ」
「私も!!」
皆がそう申し出てくれる。
確かに単独で探索するのは危険だし、劇団の皆も忙しいだろうし…ここは好意を素直に受け取っておこう。
「ありがとう、皆。是非お願いするよ」
「俺っちも!……と言いたいとこなんだけど、俺らは週末予定が入っちまったなぁ…」
「ですね」
男子組は予定があると。
まあ、気持ちだけでも受け取っておく。
「ううん、その気持ちだけでも嬉しいよ。ありがとうね」
「ま、今回に限らず何かあったら言ってくれ。都合が合えば協力するぜ」
「うむ」
「まぁ、僕らじゃ頼りないかもしれませんけど」
「そんなことないよ、ユーグ。皆休みの間に随分腕を上げたんでしょ?分かるよ」
男子三日会わざれば…じゃないけど、相当な経験を積んだのが纏う空気で何となく察せられた。
「カティアさんにそう言ってもらえるのは嬉しいですね」
「だな」
「日々精進あるのみだ」
この三人、性格なんかはバラバラだけど随分気が合うんだね。
何か、そう言う男同士の友情と言うのも良いものだな…なんて思ったりするのだった。
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