第十幕 51 『魔将の能力』
決戦の火蓋が切られ、私達はラミアクイーンを取り囲む。
先ずは様子見だ。
六本の腕のそれぞれに曲刀を構えていて、攻防ともに厄介な相手なのは一見して分かるが、他にどんな能力を持っているか分からないので、慎重に相手をしなければならない。
通常のラミアには特別な能力は無かったと記憶しているが…目の前の相手も同じだとは断定はできない。
「お見合いしてたって仕方がねぇ。行くぜっ!!」
「…ふっ!!」
「おっしゃあーー!!」
先ずは一太刀とばかりに、父さんとティダ兄、ラウルさんが突貫する!!
「続くよ!!」
「ああ!!」
「…行く」
「よしっ!!」
更にお義母さま、テオ、イースレイさん、イスファハン王子が続く!!
私は、このメンバーでは唯一の魔法使いなので、一先ずは支援に回ることにした。
腕輪状態の『聖杖リヴェラ』を本来の杖の形に戻して、魔法を行使する。
「[瞬閃]!!」
反応速度を向上させる支援魔法だ。
聖杖によって本来よりもかなり効果が見込めるはずだ。
…ティダ兄あたりは既に人間の限界に達していそうだけど。
「うおおーーっ!!」
先ずは先頭を切った父さんのフルスイングが叩き込まれる!!
ガギィンンッッ!!!
重量のたっぷり乗った破壊的な一撃は、しかし六本の曲刀によって阻まれる。
だが、その隙に背後に回り込んだティダ兄が、双剣で首を狩り取るような斬撃を見舞う!!
ぶおんっ!!
魔物の首に双剣が吸い込まれると思った矢先、丸太のような大蛇の尾が物凄いスピードで振るわれて、羽虫を追い払うがごとくティダ兄に襲いかかる!!
「チッ!!」
既のところで攻撃を中断し何とか身を捻って回避したが、仕切り直しの追撃のチャンスは与えてもらえなかったようだ。
だが、まだまだこちらの攻撃は途切れることなく続く。
「オラァっ!!」
ドンッ!!
という震脚の音を轟かせて、ラウルさんが拳を突き出すと、凝縮された闘気がラミアクイーンに放たれる!
「…ふっ!!」
それに合わせて、イースレイさんの双蛇剣が絡みつくように襲いかかり…
「はぁーーーっ!!」
「せえぃっ!!」
「でやぁーーっ!!」
お義母さま、テオ、イスファハン王子が隙間を埋めるように三方から同時に斬りかかった!!
即席とは思えないくらいに息の合った連携攻撃だ。
四方八方からの飽和攻撃とも言えるそれは、逃げ場など無さそうだが…!
「シャァーーッッ!!!」
すると、ラミアクイーンから蛇が威嚇するような音が発せられる!
「ぐっ!?」
「!」
「うぉっと!?」
どうやら超音波にも似た衝撃波が全周囲に放たれたようで、こちらの攻撃は全て弾かれてしまった。
「みんな!!?」
「大丈夫だ!!威力はそれほどではない!!」
思わず心配の声を上げたが、テオが問題ないと応えてくれて一先ず安心する。
しかし…やっぱり一筋縄ではいかないみたいだね。
こちらの攻撃は1ターン目が終了。
次の攻撃に移ろうとしたところで、ラミアクイーンが攻撃行動に入った。
大きく息を吸い込み……ブレス攻撃か!?
その予想に違わず、大きく吐き出された息は毒々しい紫色の霧のようなものだった。
それはたちまちのうちに広がって、辺りを覆い尽くさんとする!
「うおっ!?何だかヤベェ感じだぞ!迂闊に吸い込むなよ!!」
「カティア!!何とかならないか!?」
「うん!!風で吹き飛ばすから皆こっち側に来て!!」
急速に広がる毒霧を吸い込まないように退避しながら素早く詠唱を行い魔法を放つ!!
「[清風]!!」
発動と共に清涼な風が吹き抜けて毒霧を押し返す。
微弱ながら浄化の力もあるので、ある程度の解毒効果も期待できる。
…かなりヤバそうな雰囲気だったから気休めかも知れないけど。
「中々多彩な能力を持つようだな…」
「…そうだね。素の能力も侮れないし……魔族が絡んでるなら『異界の魂』由来の魔物の可能性が高いし、私の滅魔の光を当てられれば致命傷を与えられるとは思うんだけど」
確実に滅ぼすには、どうにかしてクリーンヒットさせられる隙を作ってもらわなければ。
だけど、今まで見せたものが能力の全てでは無いかもしれないし、中々に困難な道のりだね…
ともあれ。
魔将との戦いはまだ始まったばかりである。
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