第九幕 21 『着せ替え人形 再び』
「さて、私の目的は果たせたから…あとは皆の買い物かな?」
「ねーねー、皆で服を見に行こうよ!」
メリエルちゃんはさっきもそう言ってたね。
結構オシャレ好きなのかな?
気が合いそうだ。
「私も服は見に行きたいと思ってたから付き合うよ。皆もそれで良い?」
「「「は〜い」」」
「う〜ん…」
ん?
レティが何だか渋い顔をしている。
「どうしたの、レティ?服を見るのが嫌だったら…」
「ああ!いや!そうじゃないの!…ただ、私って女物の服のことが良くわからなくて…自分で選んだことって無いんだよね」
ああ…もと男子としての悩みか。
その辺の悩みは、【私】の記憶も持つ私には無縁なんだよね。
「あら?そうなの?今日の格好だって凄く似合ってると思うけど…」
「これはパーシャが選んでくれたからね。最近は外に出ることも多いから、ウチのメイド部隊が張り切っちゃって…」
ああ…あの荒ぶるメイド魂を持った…
なかなかお世話をさせてくれないって嘆いていたから、きっとまた荒ぶってるんだろうな。
「じゃあ試しに自分で選んでみたら?私達もアドバイスするよ」
「わぁ!何だか楽しそう。レティちゃんのオシャレ大作戦だね!」
ふむ…レティは、と言うか皆もだけど、素材が良いから着せ替えのしがいがあるね。
「(ゾクッ…)何かイヤな予感がするんだけど…」
「まあまあ、とにかく行きましょ。ユリシアさん、お願いしますね!」
「はい、ご案内します。服飾は2階ですので、こちらへどうぞ」
そうして私達はユリシアさんに案内されて、服飾品売り場に向かうのだった。
「きゃーっ!!レティちゃん、コレすっごく似合うよ!」
「あの…これも似合うと思います」
「うふふふ…レティシアさん、次はこちらを試してみては?」
「いえ、こっちも似合うと思うわよ!」
「ひえ〜っ!?ご勘弁をっ!」
…カオスだった。
いつぞやのミーティアのように、次から次へと服を着せ替えられてレティは目を回している。
このメンバーの中で一番小柄で可愛い系なのはメリエルちゃんで、真っ先に着せ替えの犠牲になりそうなものだが…
レティ自身が前振りをしてたからしょうがないね。
それに…私と身長体型はほぼ同じだが、レティも可愛い系妹キャラだから。
「みんな!落ち着いて!」
「あ…カティア…助けて!」
レティが縋るような目で助けを求める。
だが、私は無情にも宣告する!
「次はこれを着てもらうんだから!」
「ぎゃふんっ!?」
「「きゃ〜!それもカワイイ!」」
「やめてぇ〜!ピンクのフリフリはやめてっ!」
……レティの苦難は続く。
「うう…ひどい目にあった…ウチのメイド部隊より酷かったよ」
ああ…モーリス家メイド隊は、はっちゃけてるよね。
主人に対してもあのノリなんだ。
「まあまあ、お陰で良い服が選べたじゃないの」
「…私が着せ替えさせられてる間に、ちゃっかりみんな交代で自分の服を選んでたよね」
「え?うん、そうだよ?時間は有効に使わないと」
「悪びれずっ!?」
結局、服飾品売り場での買い物は一時間以上もかかってようやく終わった。
着せ替えファッションショーの犠牲となったレティは、ややお疲れの様子。
まあ、皆がセンスを競うように選んだ服は本当によく似合っていたし、良い買い物が出来たと思うから勘弁してほしいところだ。
それよりも、ユリシアさんを付き合わせてしまった方が心苦しい気がしたが…彼女も楽しそうに付き合ってくれたので、まあ大丈夫かな?
レティ以外、特に買う予定が無かった娘も含めて、みんな自分のものを選んでご購入。
ここの服はブレゼンタムのお店と同じく、ユリシアさんデザインのものだったので私的には非常に刺さったのだけど、皆にも好評だったみたい。
その後は各々のリクエストに従って売り場を巡って、一通り買い物は終わった。
レティとルシェーラは、宝飾品や紳士小物の売り場でリュシアンさんへのプレゼントを。
ステラは何だかよくわからない素材の数々。
化学クラブで使うとか言ってたけど…ホントに錬金術師みたいになってるね。
シフィルもクラブ用に魔法競技用の杖を。
ホントに何でも売ってるな…
メリエルちゃんは、かなり服を買い込んで満足していた。
何でも、王都に来る際に殆ど荷物を持ってこなかったから、服が足りなかったらしい。
それで良いのか王女サマ……
「ユリシアさん、プルシアさん、ご案内ありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!」」」
「いえ、こちらこそ。沢山のお買い上げありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
「毎度ありがとうございました!今後ともご贔屓に〜」
そうして私達はユリシアさん、プルシアさんにお礼を言って別れを告げ、アズール商会をあとにした。
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