第六幕 21 『受験勉強』
翌朝、私はミーティアとマリーシャ、ケイトリンと共に王城に向かう。
本日の予定は…お勉強だ。
国立アクサレナ高等学園の過去何年か分の試験問題を手配してもらったので、それを見て試験対策を行うのだ。
自分が現時点でどの程度問題を解くことができて、どこを重点的に勉強すれば良いのか。
それが確認できれば、効率的な勉強の計画と、講師の手配をしてもらえるという事だ。
題して、『カティア姫絶対合格プロジェクト』だ!
……そこまでしてもらって合格できなかったらどうしよ。
「カティア様、私はこれから他の任務があるので別の護衛と交代しますね。あ、ミーティアちゃん、ママはこれからお勉強だから、クラーナ様のところに遊びに行こうか?私が送っていくよ」
「うん!わかった!ママ、がんばってね!」
「うん、ありがと。クラーナと仲良くね」
「では、カティア様、また明日!お勉強頑張ってくださいね〜」
「ケイトリンもありがとう。また明日よろしくね」
私の部屋の前まで来ると、ケイトリンはそう言ってミーティアと一緒に去っていった。
代わりに別の男性騎士が護衛として部屋の前に立つらしい。
…?
この前は城内では護衛なんて付かなかったけど…
…まあ、いいか。
立場的に別に不思議でもないし。
普通はそういうものなんだろう。
「それではカティア様、こちらが宰相閣下が手配して下さった、過去5年分の試験問題になります」
そう言ってマリーシャが紙の束を渡してくれる。
結構な分量があるなぁ…
「ありがとう、マリーシャ。どれどれ…うわ〜、結構問題数がありそうだね…」
「教科にもよりますが…大体設問は50前後くらいでしょうか。選択問題、記述問題…あとは論述問題など、満遍なくありますね」
「ふむふむ…それで、教科は…文学、歴史学、政治・経済学、地理学、数学、自然科学、神学、魔法学、武術そして…教養かぁ」
「はい。その中から6教科選択ですが…教養は必須ですね」
「はぁ…一番心配なのが必須なのか。まあ、それは良いとして、あと私が出来そうなのは…」
文学:前世で言うところの国語だね。図書館通いで割と文学には親しんでるし、そこそこ行けそうな気がする。
歴史学:これはそのまんまだね。やっぱり図書館で歴史書とかも読んでるので、これも行けるんじゃないかな?
政治・経済学:う〜ん…パス!…と、言いたいところだけど。これから一番必要なのはこれだよねぇ…立場的に。
地理学:社会科の地理だね。職業柄そこそこ詳しいので、これはアリかな?
数学:前世の【俺】の得意分野だね。これは受けておこう。
自然科学:理科だね。化学とか物理じゃなくて『理科』ね。これも前世の得意分野だ。受けましょう。
神学:これ神代語だね。ぱっと見行けそう。よし、これも受けよう。
魔法学:学院主席の姉さんの薫陶を受けてるからね。まあまあ自信あり。実技試験もあるらしい。よし、貰った!
武術:剣でも槍でも弓でも…実技がものを言う。これも自信あり。
教養:…必須なので受けなきゃいけないんだけど。礼儀作法全般だね。しかもこれ、実技だったり…。む?音楽もここになるんだ…歌とかでもいいのかな?それなら得意なんだけど。
「う〜ん…この中からなら、数学、自然科学、神学、魔法学、武術、教養かな?」
「完全に6教科選択して受ける、でも良いのですが…全教科試験を受けて点数が良いものから6教科合計という事もできますよ」
「あ、そうなんだ…じゃあそうしようかな。重点的に対策するのは6教科にして、試験は念のため全教科受ける、ということにしようか」
「はい、私もそれがよろしいかと存じます」
少しでも確率は上げないとだね。
という事で、先ずは去年の数学と自然科学の問題を解いてみる。
一番自信がある教科がどの程度できるか見てみることにしたのだ。
試験は1教科2時間とのこと。
結構長丁場だけど、1問当たりに使える時間は2分ちょっと。
記述問題や論述問題は時間かかるし、決して時間的な余裕があるわけではないだろう。
試験時間が長いから、全教科受けるとなると…1日3〜4教科で3日間かけてやるらしい。
なかなかハードだね。
しかし…こう言った試験対策は前世で随分やったけど、こんなところで【俺】の経験が生きるとはなぁ…
そんなこんなで早速問題を解いてみたのだが、流石に得意教科というだけあって1教科1時間ほどで全問回答することができた。
数学の問題は四則演算程度…なんてことはなく、関数、数列、行列、確率、素因数分解、幾何学などなど…微分積分なんかは無かったが、前世で言うところの高校までに習うことは出る感じだった。
自然科学は理科…小学校からせいぜい中学校程度の簡単な力学くらいまでか。
数学と比べて偏ってる気がするけど…魔法があることの影響なのかなぁ…?
回答を書き終わった答案用紙をマリーシャに渡して採点してもらう。
しばらくしてから、どうやら採点が終わったようだ。
「…ど、どうかな?」
ちょっとドキドキして聞いてみる。
感触は悪くなかったけど…
「…カティア様、正直私は驚きました」
「え?…ダメだった?」
「逆ですよ。両方とも満点です。カティア様が博識というのは聞いておりましたが…ここまででいらっしゃるとは。感服いたしました」
ほっ。
自信あるって豪語しちゃったから、もしダメだったら凹んでいたところだよ。
しかし、満点とは…結構覚えているものだね。
というか、
「2教科満点なら、他がよっぽど点が取れない限り合格は問題ないと思います」
え、そうなの?
あ〜…確かレティが『あなた』なら大丈夫って言っていたけど、そういう事だったのかな?
「でも、せっかくなら他の教科もいい点数が取りたいね」
「はい。良い心がけかと存じます。やはり王族として注目されるかと思いますので、良い成績であるのに越したことはないでしょう」
そだね…おバカで注目はされたくないもんね。
やっぱり当初の計画通り、しっかり勉強はしておこう。
そして、お昼を挟んで他の教科もやってみる。
流石に全部やるほどの時間はないので、神学と魔法学だけ。
神学は神代語や神々の伝承などに関する知識を問うもの。
魔法学は魔法語やそれを組み合わせた詠唱に関する理論、魔法の発展の歴史などに関する問題だった。
さて、それらの結果はどうだったかというと…
「こちらも素晴らしいですね。満点とはいきませんでしたが、それに近いです」
「お〜、良かったよ。合格するだけなら問題なさそうだね。とは言え…確実にするためには繰り返し問題を解くのと、間違ったところはしっかり出来るようにしておかないとね。あとはどれだけ高得点を目指せるか…他の教科も見てみないと」
「はい。私があれこれ言わずともやるべきことをご理解されているご様子ですし、私も安心しました」
もちろん油断大敵ではあるけれど、まだ時間もあるしコツコツやっていけばきっと合格をモノにできるだろう。
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