第四幕 2.5 『ふたり、ひとつに』

 …これは、いつもの夢か。




「こんにちは、【俺】わたし



 その声に振り返る。



「こんにちは、【私】わたし



 そこには、今の私と変わらない、15歳の姿のカティアわたしがいた。

 これは、ついに…なのか?


「もしかして、これで最後…なのかな?」


「ええ、そうね。もはやあなたとわたしの間に殆ど境界はない。今、この時をもって【俺】わたし【私】わたしの魂は完全に一つになる。…今までありがとね」


「そっか。でも、やっぱり寂しいね」


「前にも言ったでしょ、別に私達は…」


「うん、分かってるよ。それでも、この気持ちを表す言葉は、やっぱり『寂しい』なんだ」


「…ふふ、甘えん坊なんだから。ミーティアみたいだよ」


「ちょっ!?私はあんなに小さな子供じゃないよ!」


「同じだよ。あの子はこの世界に何の寄る辺もない異界の魂だった」


「でも、今は私がいる。カイトがいる。一座の仲間がいる」


「そうだね。そして、それはあなたも同じ」


「…そっか。私はもうこの世界の一員なんだね」


「そうだよ。だから、寂しがる必要なんてないんだよ」


「うん…そうだね」


「ふふ、カイトもいるしね。もう、あんなに熱烈な…」


「わ〜っ!?」


 いや、確かに!

 雰囲気に流されてしまった感は否めないけども!


「なによ、恥ずかしがる事ないじゃない。同じ私なんだから」


「いや、そうだけど。そうだからキミだって顔が真っ赤になってるよ」


「…まあね。だって凄かったんだもの。キスってあんなに蕩けるようなものなのね…。その先…なんて想像もつかないわ」


「…何か覗かれてた気分だよ」


「それにしても、前世の記憶に思い悩んでた割に、グイグイ行ったよねぇ」


「…まあ、告白して、吹っ切れて、舞い上がってたのは認める。溜め込んだ分反動も大きかったんだよ」


「いいじゃない、その調子だよ。これからは私も一緒だからね、もっとグイグイ攻めるわよ!」


「…あれ?おかしいな…もうほとんど境界が無いって割に、性格が大分違うような…」


「そりゃあ、一人の人間の中にも色々な面があるものよ」


「ああ、ペルソナってやつなのかな?それとは違う気もするけど」


「とにかく、これからも頑張るよ!」


「お、お〜?」




 その後も、名残惜しむように二人はいろいろな話をした。













「さて…そろそろかな」


「うん、そうだね」


 そして、ついにそのときは来た。


 【私】わたしが右手を前に突き出す。

 【俺】わたしもそれに合わせる。


 二人の私が近付いていき、突き出した手が重なり、そこから一つに溶け合っていく…






 そして。


 私たちの魂は、完全に一つになった。


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