第26話:これからよろしくね!




 奴隷といっても、首輪とか鎖とか入れ墨とか無いんだなぁ。

 見た目は全然普通のメイドであるマリンとスーザン。

 さん付けで呼んだら、アザトースとボールスどころか、ジョエルとアラン料理人達にまで叱られてしまった。


 奴隷だからではなく、使用人にはさん付けしてはいけないそうだ。

 会社の中では、年上の女性を敬称無しで呼ぶなんて怖くて出来なかったからなぁ。違和感しかない。

 男性は全然大丈夫!




「はい!奴隷の皆さん注目ー!!」

 俺は階段の3段目に乗り、両手を叩いた。

 奴隷の五人に制服に着替えて貰って、エントランスに集合してもらった。

 因みに料理人二人は、庭でシロとラッキーと遊んでいる。

 間違っても立ち聞きされないようにだな。


「これから言う事は、口外したら物理的に首が飛ぶ内容なので、心して聞くように」

 俺の横でアザトースが皆を脅す。

 そこまでじゃ無いと思うけど?

 何かウッカリ俺が口を滑らす未来が見えるよ。

 その場合は、俺の首が飛ぶ?



 そんな馬鹿な事を考えていたら、アザトースが今までの経緯を、簡単に皆に説明してくれた。

「あのデカイのはハティとスコルだ。これも他では言わないように。まぁ、言っても信じて貰えないだろうけど」

 アザトースの説明に固まったのは、従魔術師家族の旦那さんだ。


 彼の名前はエドアルド。犬科の魔獣を使役する。

 同じ犬科使役だからかな、皆より反応が大きい。

 スーザンと娘のテッサは、「遊べるかな」「抜け毛貰えないかな」とか目をキラキラさせている。

 テッサの従魔はあのピンクスパイダーだ。

 息子のルカは、ちょっと不安そうなのは、従魔が鳥系だからかな。

 大丈夫、食べないよ!



 皆で庭に移動をして、シロとラッキーと本格的な顔合わせ。

 皆の従魔も全員集合。

 犬系が三匹、狼系が二匹

 鳥は大小合わせて八羽居るそうだ。

 ピンクスパイダーは一匹しか居ない。


「シロ!ラッキー!」

 俺が呼ぶと、ジョエルとアランと遊んでいた二匹が駆けて来る。

 砂埃ひとつ立てないで走ってくる不思議。

 モンスターなんだなぁと、実感した。

<何?ヨシツグ!>

<あら、さっき会った人達ね>


 尻尾が凄いブルンブルンプロペラみたいだぞ。

 特にラッキーが。

 あれ?そういえば尻尾を振っても、周りに影響が無い!

 学習したんだねぇ、偉いねぇ。


 顔を擦り付けてくる二匹の頭を撫でる。

 万歳をするように腕を伸ばし、思いっ切り振るように動かさないといけないんだけどな。

 大変だけど、二匹が喜ぶなら頑張るよ、俺。



 シロとラッキーを紹介して、二匹には五人を紹介する。

「休憩時間なら、遊んでも良いぞ。勿論、自分達の従魔ともな」

 俺の言葉に、マリンだけはスンとした顔になった。

 いや、遊ばないといけないわけじゃないからね?


 従魔術師家族の従魔達は、とりあえず庭にある温室らしき所に住む事になった。

 別に部屋に入れても良いよと言ったら、元々従魔は従魔だけで暮らしていたそうだ。

 ペットとは違う扱いなんだなぁ。



 今日の彼等の仕事は、自分の住環境を整える事。

 温室は、ジャングル状態なので、希望が有れば整えると伝えた。

「あの、ヨッシー様。洗濯用の石鹸がありません」

ほうきチリ取りはありますが、雑巾とハタキがありません」

「あの、庭用の剪定せんていバサミが欲しいです」


 うん。明日、買い物に行こうか。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る