第12話:夕食の時間です




 今日の仕事が終わり、それぞれが自宅へ……帰らずに王宮の食堂でディナーですよ!

 この世界に来てから昨日までは、まだ慣れないだろうからと部屋へ夕食を運んでくれていた。


 今日は、宰相である先生と薬師師長のファランさんと弟子のワカティさんも一緒なので、お試しも兼ねて食堂で食事をしてみようという事になったのだ。

 俺の後ろには、こんだけの大物がいるんだぜ!って、皆に知らしめる目的もあるんだけどね!



 食事の味付けは、ちょっと大味だけどそれなりに美味しい。

 和食に慣れた日本人には、かつお出汁だしや昆布出汁が欲しくなるけど、多分、どこかに有るだろう。

 絶対にどこかに日本的な国があるはず!

 そして米も、味噌も、醤油もそこが細々と輸出してて、俺が皆に米の炊き方を教えたりして、美味しい白飯を広め……


「ヨッシー様は、パンとご飯はどちらにしますか?」

 あれ?あれれ?

「えっと、ご飯で」


 バイキング形式というか、会社の食堂っぽいな、ここ。

 先生にならってトレーを持って列に並ぶ。


 ファランさんとワカティさんがトレーを2枚持っているのは、なぜ!?

 二人を凝視していたようで、先生が苦笑する。

「ホント、エルフって大食いですよね。食堂での食事は給料天引きなんですが、エルフだけ異様に高額だと経理が笑ってましたよ」

 ここのエルフは、大食いの方か!


 ベジタリアンかヴィーガンとかか、お肉大好きの大食いかのどっちかが多いエルフ。

 どちらかだったら、同じ物を食べられる大食いの方が親近感が湧く……かな。



 席は六人用か八人用のテーブルなので、殆どが相席になる。

 四人が座れる席となると、空いていないなぁ。

「あ!ファランさん!俺達食べ終わりましたよ!」

 六人がけの席に座っていた二人の薬師がこちらに向かって手を振っている。

 ワカティさんと同じ服だから、薬師で合っていると思う。



 六人がけの席に薬師二人と、空席が2つ。

 そして二人が向かい合わせで座っている。この二人は、騎士と魔導士だ。

 会話が無いから単なる相席なのかもな。

 ところで魔導士で呼び方は合ってるのか?

 魔法省って言うから、魔法師の方が良いのかな。


 薬師二人と入れ替わりで席に座る。

 隣から視線を感じて顔を向けると、騎士の方と目が合った。

 ペコリと頭を下げられたので、日本人の習性でお辞儀を返す。


「元気そうで良かった」

 ボソリと呟かれた声に聞き覚えがあった。

 あの召喚初日に会った騎士だ!

 あの時は鎧兜だったから顔が見えなかったが、凄いイケメンだった。



 騎士はイケメン。


 こんなテンプレは要らない!

 俺には何も得が無い!!

 しかも絶対コイツ強いんだろ?

 家柄も良かったりすんだろ?

 くっそぅ。


「あの魔法陣、埋めちゃったぜ」

 騎士の前に座る魔導士が声をひそめて声を掛けてきた。

 あぁ!あのいかにもな黒魔導士か!

 フードと杖が無かったから判んなかったよ。


 え?

 これは、何かのフラグですか?



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