第23話 戸惑いの大規模更新

今日は、魔onのアップデート当日。


現在、朝9時。


アップデート開始予定は10時だ。

すでに、ノヴェト達は『刻忘れの森の廃都』で待機していた。

先日のパーティと同じメンバーだが、今は五人だ。


猫娘ノヴェトをリーダーに。

犬少年カゲチヨ、犬少女アキラ、兎娘ロザリー、猫幼女リンリン。

猫娘リゼットは、少し遅れるという連絡があった。


それぞれのクラスに変更はない。

何度かの戦闘で、パーティメンバーのレベルは上がっている。

すでに、この周辺では適正レベルを超えそうなほどだ。


ノヴェトは落ち着かなかった。

それは、他のメンバーも変わらない。


「ヤベェ……、テンション上がり過ぎてヤベェ……。」


「でもまだ、あと1時間はあるッスよ……?」


ソワソワとするノヴェトに、声をかけるリンリン。


だが、リンリン自身も無駄にウロウロしている。

実は、早めに待機しておこうと早めの行動を心掛けた。

その結果、思いのほかすんなり準備が終わったのだ。

結局、パーティ全員で、このソワソワを共有する羽目になってしまった。


すでに廃都は、駆けつけたプレイヤーたちでごった返していた。


彼らが待っているのは、目の前で色鮮やかに改変される世界。

魔onのアップデートはログインしたまま、リアルタイムに世界が改変される。

これは、魔onの見どころの一つでもあった。


カゲチヨも同様にソワソワしていた。


「なんだかドキドキしてきました……。」


「だ、大丈夫よ。おねーちゃんがついてるからね……。」


アキラは、カゲチヨの手をギュッと握る。


カゲチヨとアキラは、こういうイベントに参加するのは初めてだった。

今は緊張半分、ワクワク半分というところ。

なにせ、周囲の人々は妙な熱気にあてられている状態。

廃都全体が異様な雰囲気なのだ。

子供には落ち着かないだろう。


そんな空気の中、兎娘ロザリーは手持ち無沙汰にノヴェトへ話題を振る。


「そう言えば、ノヴェト様。あの噂聞きましたか?……魔王様の。」


「……ん?ああ、聞いた聞いた。なんでそんな話?と思ったけど、新エリアの詳細なんて知らんし、判断できんよね。なんで、そんな話になったのやら……?」


「ですよねぇ……。私もどう考えていいのか……。」


「なに?何の話?私たち初心者なんだから、分かるように説明してよ!」


アキラは睨みつけるように、ノヴェトに言い放つ。


「はいはい、初心者様にも分かるように説明しますよー。」


ノヴェトはダルそうに答える。

この手のやりとりにも、もう慣れてしまった。


「噂だよ、噂。ネットでよく分からん噂が流れてんだわ。えっと……、まず、今回のアップデートで、この森に『魔宮』が実装されるらしいんだよね。」


「『魔球』?……曲がるの?消えるの?」


「んん?……オマエ、なんか違うもの想像してない?そういやオマエ、俺の野球漫画勝手に読んでたな……。そうじゃなくて、魔宮ってのは、『禍々しい宮殿』みたいなイメージかな。ダンジョンなのか、なんなのかは知らんけど。」


ポカーンとしているアキラ。

カゲチヨも似たような顔をしている。

理解しているかどうか分からないが、とりあえずノヴェトは話を続ける。


「今回のアップデートは、『シヴァデュナートの深淵アビス』ってタイトルなんだよ。細かい話は省くが、設定を知っていれば、この廃都が関連しそうなのは分かるんだ。魔宮もそう。まぁあるんだろうな、ってのは予想がつく。」


「シヴァデュナートといえば、森の都を滅ぼしたとされる破壊の神の名前なんッスよ。そして今も、次元の狭間にある魔宮に封印されている……、って設定ッス。メインストーリーでも、時代背景として名前だけは出てくるッスね。」


「……で、結構前のリークで、その魔宮に新エリアへのワープ装置があるって話でさ。ネットでは、深淵的な新エリアか!?って盛り上がってたんだわ。」


「高レベルの裏世界なんじゃないかー?とか、言われてましたッスよね。ただ、低レベルの装備もあるらしいって続報が出て、そこからまた色々憶測が。」


「ふぅん……。」


アキラはもう話に飽き始めているのか、ボーっと遠くを見ている。


「ところが、最近変な噂が流れてな。ここからが本題。……聞いてる?」


「き、聞いてるわ!……ちょ、ちょっと眠くなっただけ!」


「たぶん、半分くらい聞いてねぇな。まぁいいや。で、だ。この魔宮。実は魔王の罠だって噂が、急に出始めてな。それもここ最近、突然な。それで、みんなで破壊しようぜとかって、妙な流れでなぁ……。」


兎娘ロザリーも思うところがあるようで、神妙な面持ちで答える。


「そうですね……。私もそれ、変な感じがしましたね。世界を滅亡させる兵器だ!とか。今回のアップデート内容からは、随分外れた内容でしたし。なんだか、無理矢理こじつけられてるようで……。」


「そうッスよね。今回のアップデートって、古き神の話らしいので、魔王さんには直接関係しないはずなんッスが……。」


「問題は……。それを鵜呑みにしたヤツらが、即席の大規模パーティ組んでるらしくてな。今、森で野営してるらしいぜ?魔宮出現の予想ポイントで。ほら、ゲーム外にまっちゃんがなんか作ってる場所。って言っても、現実リアル側は、結界張って近付けないらしいけど。まぁ、あくまでもゲーム内の話。」


「もしかしたら、アップデートのスタートダッシュを邪魔したい、誰かの陰謀なんじゃ?せっかくのお祭りに、水を差されるのは勘弁してほしいッスね。」


「魔宮が壊される、……なんてことはないだろうけど。イベントが邪魔される可能性はあるかもなー。めんどくせぇ。」


「ところで、そもそもこれも含めて、魔王さんの演出って線はないんッスかね?」


「うーん?考えられ……、うーん?なんか……、こういうの、まっちゃんぽくない気がするんだよなぁ。」


ノヴェトは廃都の雑踏を眺め、誰かに言い聞かせるようにそう言った。





「……あと、3分ッスね。」


いよいよアップデートまで数分。リンリンが残り時間を告げた。


「……10!……9!」


テンションの高いアキラは、勝手に間違った秒読みを始める。

それに対しカゲチヨも、ハモるように同調する。


「……いや早ぇから。まだ3分あるぞ。」


「……8!……7!……んー、100!……キャハハハ!!」


アキラのフェイントに、カゲチヨはびっくり。

二人とも笑い出した。


「楽しそうね……。」


開始前から気の抜けたノヴェト。

周りを見ると、メニューを開いて時計を確認している人が多数。

みんな、気持ちは同じようだ。


そして、本当にアップデートが迫ってきた。


どこからともなく、プレイヤーによるカウントダウンの声が聞こえてくる。

そして事前に打ち合わせていたかのように、全員が大合唱のように同調する。


「10!……9!……8!……7!……6!……5!……4!……3!……2!……1!……0!」


一瞬の静寂。


そして、鐘の音が響く。

それは長めに3回ほど響いて、止まる。


「く、くるぞぉ!!!」


誰かの叫び声が響く。


……と同時に、光の帯が出現。

それは、目の前を通り過ぎていく。

そして、次々と新しい光の帯が出現。

さまざまな輝きを灯しながら、空間を駆け抜けた。


それは、走り抜ける虹。


その虹の帯は、視界のすべてを埋め尽くすと、世界は改変されていった。

そこにあったものが消え、逆に無かったものが現れる。

目の前で瞬時に世界が変わっていく。

その様は、まるで早回しの映像の中に迷い込んだような錯覚を覚える。


改変される世界の中で、カゲチヨとアキラの視線は彷徨う。


「う、うわぁああ!!!」


「え、なに!?なに!?」


目まぐるしく変わっていく世界。

圧倒される二人。

それを見て、ノヴェトは笑う。


「これが魔onマオン名物、リアルタイム・アップデートだ!!」


ノヴェトは叫んだ。

カゲチヨたちの驚きは、ノヴェト自身も体験済みだ。

目の前で、みるみる変わる景色。

この驚きを見せたかったのだ。


「これが見たくて、俺たち、わざわざアップデートの一番の変更ポイントに来てんだからな!」


「ひぇえ!!……何度も見た景色ッスけど、やっぱすごいッス!!」


「おう!このお祭り感!!テンション爆上がるわ!!」


「うわぁ……!!町がどんどん変わっていきます!!」


「わ!?わ!?」


圧倒されるアキラ。


あまりにも予想外の状況に、彼女はカゲチヨの手をぎゅうぎゅうに握った。

……それも無自覚に。


だが、ここで予想外のことが起きる。

それは、ノヴェト達も体験したことのないものだった。


「……って、あれ?……途中で止まった……?」


アキラは周りを見渡す。

まだアップデート中だというのに、一時停止したかのように止まってしまった。


そして、空間に亀裂が入る。


砕けた空間の破片は、舞い散る花びらのようにあたりに降り注ぐ。

それは空から降り注ぎ、次第に町の景色も剥がれ、花びらのように落ちていく。


「な、なんだこれ!?こんなの見たことないぞ!?……新しい演出、なのか?」


ノヴェトも知らない状況に、戸惑いを隠せない。


そして、光。


遠くから、それは物凄いスピードで近付いて、一瞬で視界を包む。

真っ白い闇に包まれ、何も見えなくなった。


だが、それは一瞬だった。


光が止み、目を開けると、そこはさっきまでいた廃都だった。


「終わった……、のか?」


ノヴェトの周りには、カゲチヨ達全員がいる。


他のプレイヤーもいた。

おそらくは、アップデートが完了したのだろう。

廃都と呼ばれた村は、一見、以前と大きく変わらないように見える。

だが、チラホラと違う箇所がある。

家屋の軒先にあった、細かなオブジェが変わっていた。


また、少し向こう側には、以前はだだっ広いスペースがあった。

だが、今はそこに何やら大きめの建築物が見える。

おそらくはアップデートに関する施設だろう。

他にはNPCが増えていたり……、と細かい変更点は多いようだ。


「終わったんッスよね……?なんだったんッスかね?いつもと違う……。」


「あ、ああ。……こんなのは初めてだ。」


「……アレに似てませんか?ワープ装置の……。」


「ああ!あの光、たしかに。でもリアルタイム・アップデートなら、ワープの必要なんてないと思うけど……。なんか仕様が変わったとか……?」


「こ、これで終わり……?」


気がつくとアキラは、カゲチヨにがっちりとしがみついていた。

キョロキョロと辺りを見回している。


「ふ、ははは。」


そんなアキラの情けない姿を見て、ノヴェトは少し笑う。

だが……。


一瞬、おかしなものを目にした。


それは、カゲチヨとアキラに起こった。

二人の姿が、一瞬だけ違うものになった。

現在の犬獣人の姿でなく、元の人の姿に。

だがそれは、変わる……、といったものではなく。

一瞬だけ透けるように見えただけだ。


「……?」


ノヴェトは理解できない。


「……なに?私の顔に、なんか付いてる?」


アキラは、そんなノヴェトの顔をそっと覗き込む。


「い、いや……、なんでも……、ない。」


今、体験したものは、ただのバグかもしれない。

だがその時、ノヴェトはそのことを誰にも言わなかった。





魔onの大規模アップデートが完了し、ノヴェト達は町を歩いていた。


「そういえば……、何も始まらない……、ッスね?」


「うーん?……イベントの発生条件、変わったのかもなぁ。」


たしかに町の景色は変わっているが、アップデートの実感は薄い。


以前はアップデート完了後、すぐにオープニングイベントが始まっていた。

中空に文字が現れ、音楽が流れてくるのだ。


だが、今回はそういったことがない。

他のプレイヤーたちも戸惑っているようで、同じようにウロウロしている。


「まぁバージョンは上がってるから、問題はないと思うけど……。」


ノヴェトはウィンドウメニューを開き、ゲームの設定項目を見ている。

そこからアップデート履歴も閲覧可能だ。

その日付からもアップデートが完了したことも確認できる。


「まぁこういう場合は、どっかにイベント発生フラグがあるパターンかな。NPCに話しかけるとか、エリアに入るとか。」


「ね、ねぇ!あれ、前なかったよね?カゲチヨ!行ってみようよ、ホラ!」


「え?……あ、うん!!」


「あ、こら。っていいか。あのデカい建物、いかにもって感じで怪しいな。」


以前はなかった建物だ。

他と同様に石造りの建造物で、建築様式は同じだ。

だが、ツタや苔は一切無い。

全面壁に覆われている建物ではなく、一部吹きっさらしのようになっている。


ノヴェト達も、カゲチヨとアキラを追うように建物へ向かって歩いていく。


そこには、他のプレイヤーたちも集まってきていた。

急に出現した怪しい建物なのだ。

真っ先に確かめたくなるのは当然だろう。


「カゲチヨ!こっち!」


「ああ、待ってください!」


カゲチヨ達が建物に入っていく。


「あ、カゲチヨきゅん!危ないよー?……おねーさんと一緒に入ろう?」


そう言って、兎娘ロザリーはカゲチヨの手を握る。


「ねー、一緒に入ろうねー。」


「ちょ、ちょっとなにしてんのよ!手、放しなさいよ!?」


「あ、ほら。アキラちゃんも。」


兎娘ロザリーはそう言って、アキラにも空いている方の手を伸ばす。

アキラの尻尾は不意に下がる。


「な!?……そ、そんな子供っぽいこと……。」


「いいから、ほら!」


ロザリーは、アキラの手を無理矢理握る。


「うふふ、みんな仲良し!」


「えへへ、楽しみですね!」


「そうね……。」


「さぁ、みんなで入りましょうね。」


ロザリーに手を握られたカゲチヨとアキラ。

アキラは、不服そうに若干不貞腐れている。

ただ、カゲチヨとアキラの尻尾は、とても元気にブンブンと振られていた。


そして、パーティメンバーらが建物に入ると、急に音楽が聞こえてきた。


建物の入り口のすぐ内側に、野外演奏をするような楽団がいた。

彼らはNPCだと思われる。

ただ、彼らの曲はゆっくりとしたテンポで、音量は抑え気味。

背景音楽のようであった。


建物の中は、きちんと採光を考えられているのか、思ったよりも明るい。

柱だけで壁のないところもあるせいか、あまり建物の中にいる感覚はない。

パッと見た印象からは、何のための建造物かまったく想像がつかなかった。


カゲチヨとアキラも惚けたように聞いている。

他のプレイヤーらもそこで立ち止まり、演奏を聴いていた。


そして、いち早くリンリンが気付く。


「……あ、この曲!」


「ん?……ああ!!」


「え?なに?」


ノヴェトもそれに気付いた。

だが、アキラは気付いていない。


「これ、今回のアップデートのテーマ曲だよ。これ、もしかして……、オープニングイベント……、ってこと?」


「それにしては、随分地味ッスね……。これ、バックミュージック用にアレンジしたようなカンジッスよ?」


他のプレイヤーたちもどんどん集まってくる。

すると、楽団は急に演奏を止めた。


だが、それは一瞬。


まるで溜めこんだものを一斉に吐き出すように、楽団は本気の演奏を始めた。


それは今回のテーマ曲。

建物の脇にいた鳥達が、一斉に空へと羽ばたいていく。


「……おお。うおお!!」


急にはじまった演奏会に、他のプレイヤーたちも盛り上がる。

どうやらこれがオープニング・イベントらしい。

他のプレイヤーたちもそれに気付き、手拍子をしたり踊り出したりしている。


カゲチヨとアキラも彼らの陽気につられ、ニコニコと一緒に踊り出す。

そして、先ほどまでいなかったはずの猫娘リゼットも一緒に踊っている。


「……って、あれ?リゼットちゃん?いつの間に?」


驚くノヴェトたち。

踊りながら猫娘リゼットが、ニヤッと口角を上げる。


「猫巫女リゼットにゃん、ただいま参上なのにゃ!!にゃんにゃのにゃ!!……こんにちにゃん!!」


「こ、こんにちにゃん……。」


リゼットのにゃん語挨拶に、にゃん語で返答するカゲチヨ。

顔が赤い。


「リゼットちゃん、遅かったねぇ。」


「ちょっと野暮用にゃん!で……、イベントは?もうやったのにゃ?」


「うんにゃ。これから探すとこにゃ。」


ノヴェトも若干、リゼットのにゃん語に引っ張られる。

だが、口をキュッと閉じ、一度リセットする。


「……んー、あの楽団がオープニングイベントっぽいね。でも例のあの、文字が浮き上がるいつものやつ、止めたんかね。こっちの方が現実っぽくて、面白いかもしれんけど。」


「自然な感じはしますね。」


「じゃあ、これからイベント発生NPC探すのにゃ!!」


「うし、そうすっか。……オマエら、こっから怪しいNPC探すぞ!!」


ノヴェトは、カゲチヨとアキラの頭をポンポンと叩きながら言った。


「怪しい!?不審者を探せばいいの?……あ、いた!」


「え?……あ、いや、違う。あれは、露出したいだけの変態の人だな……。」


アキラが指差したのは、少し離れた場所にいた。

上半身裸でズタ袋の覆面をした大男だった。

ムキムキの体に、大きな斧を背負っている。

高レベルに多い、ネタ装備の変態プレイヤーだろう。


「あれよ!絶対アイツよ!絶対、不審者だわ!!」


「分かったから!声でけぇし!そして、指差すな!!」


だが、ムキムキの大男は、こちらに気付いてしまった。

彼はこちらに正対し、両腕を上げて、グッと力む。謎のポーズ。


「ひ、ひぃ!?」


怯えるカゲチヨ。


「ちょ!い……、威嚇してるわよ!?……ど、どうすんの!?た、倒す!?」


「倒さねぇよ!ちょっと黙れ!相手が変態でも失礼だろうが!」


ノヴェトは、相手に分かるように軽くお辞儀をした。

すると、大男の胸にある、凶暴な大胸筋がピクンと動いた。

そして大男は、再び楽団の方に向き直る。


その時、ノヴェトは、なぜだか分からないが理解してしまった。

その筋肉が『大丈夫だ!気にしないでくれ、ボーイ!』と言っているように。


「だ、大丈夫って言ってます!気にしないでくれ、ボーイ!って。」


「え?な!?……カ、カゲチヨにもそう聞こえたのか。な、何者……!?というか、なんでそんな紳士なんだ、あの変態は……。」


ノヴェトは向き直り、気持ちを切り替える。

そして、話題を戻す。


「えっとだな。新エリアに行くのに必要なんだよ。たとえば、魔宮が出現したから、敵を倒してきてくれ!みたいなNPCがいるって話さ。怪しいって言ったのは、そういうNPCって意味だよ。……変態って意味じゃねぇからな?」


「ふぅん……。でも、私たち、元のストーリーってまったくやってないよ?先に魔王倒さなくていいの?」


「ああそれは問題ない。ストーリーは個別だから。だってさ、新しいアップデートの広告見た人が面白そう!って始めたのに、元のストーリー終わらせてね、って言われたらどう思うよ。ダル過ぎるわ。」


「あの……、もし?」


ノヴェト達が話している時、不意に背後から声をかけられる。


「え?あ……、ああ、えっと……?」


それは知らない人物だった。


「こんにちわ。初めまして。あなたはこのパーティのリーダーさんでしょうか?折り入って相談があるのですが、今お時間宜しいでしょうか?……あ、申し遅れました。私、こちらの魔宮を管理しておりまして……。」


「こちらの……、魔宮……?」


「……ええ。私、管理人の『シヴァデュナート』と申します。」


魔宮とシヴァデュナート。


ノヴェト達にとって、それは完全に予想外のイベント開始だった。

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