第53話

【ダスト視点】


 俺は魔物を使役し、魔物の大軍を作り上げた。

 ガルウインの所に行かなかった理由はざまあチケットだ。

 奴がもし、ざまあチケットを3枚以上持っていたらまずい。

 普通に戦えば俺様が負けることはねえ。


 だがざまあチケットだけはまずい。

 3枚揃ったざまあチケットを食らっちまうのは無しだ。


 俺は各地で魔物を襲撃させ、6将を分散させた。

 6将の誰かが転生者なら、そいつがざまあチケットを持っている可能性もある。


 だが遂にそれも終わる。

魔物の斥候を放ち、ガルウインのいる村を包囲し、夜を待ってガルウインを襲わせた。


 俺は気配を消して、ガルウインを監視する。


 ガルウインは大量の魔物を相手にし、風の刃と風属性の剣で魔物を倒していく。

 だが、不利と分かると風魔法で空に飛び、逃げようとする。


「は!そう来ると思っていた!だが無駄なんだよ!」


 飛竜、ガーゴイル、グリフォンが行く手を阻む。


 ガルウインは風の刃で飛竜を倒す。


「無駄だ!たった1体を倒した程度で逃げられると思うなよ!MPが切れて地上に降りるしかねえんだよ!」


 ガルウインは地上に降りて、剣を使って戦う。

 MP切れか。

 地上にも空にも魔物の大軍がいる!

 お前の味方はすべて殺した。


「ガルウイン、苦しんで死ね!」


 ガルウインは剣で魔物を斬るが、どんどん動きが悪くなっていく。


「今だ!集中砲火!」


 飛竜が魔物を巻き添えにしながら炎を吐く。

 ガーゴイルが土魔法を使い石を飛ばす。


 地上にいるトレントも土魔法で石を飛ばし、ゴブリンが矢の雨を降らせる。


 ガルウインの近くにいる魔物もろとも吹き飛ばしていった。


 俺は倒れたガルウインに近づいた。


「こ、ぽ、君は?ダスト」

「ぎゃははははははは!ゴミはゴミらしく地面に這いつくばるのがお似合いだな!俺を殺そうとする奴は許さねえ!つまりガルウイン!お前は死ぬんだよ!」


「こっぽー!やっと出て来てくれたね!こひゅうう!!こっぽー!」

「おいおい!もう狂っちまったか」

「さすがダスト、ゴミそのものだよ。間抜けでクズで馬鹿なダスト!ざまあチケット!発動!」


 ガルウインは素早くざまあチケットを発動させた。

 ガルウインの胸から3本の光が俺に飛んでくる。


 俺の固有スキル、魔王が消えた!

 才能値が全部Bランクに戻った!


「馬鹿な!お前は死にかけのはずだ!」


 ガルウインは腕をまくる。


「そ!それは守りの腕輪!それでHPを回復させたのか!」

「こっぽー!ようやく気付いたようだね!僕はワザとおいつめられたふりをしていたのさ!ダスト、魔王の力を失って、魔物使役を出来なくなり、才能値もオールBに戻って、この魔物の群れとどう戦うんだい?ほら、後ろから魔物がダストを狙っているよ!!」


 俺が振り返るとガルウインは風をまとって飛んで逃げていく。


「くっそがあああ!騙しやってええ!」


 俺様が使役していた魔物が俺に目を向ける。


「舐めるなああ!俺のレベルは100だ!スターダストオーブ!鉄仮面になる暇があったら俺の固有スキルを元に戻せよ!」


『魔王への修復は不可能です。修復と同時に体が崩壊し、死に至ります』


「くそがああああああああ!」


 飛竜が俺に炎のブレスを吐いた。

 俺の体を炎が焼く


「俺のレベルは100なんだよおおおお!そんなもので倒せると思うな!」


 俺は走ってゴブリンを斬り、トレントを斬り、ガーゴイルを斬る。


 何度も何度も斬るが、何度も何度も魔法攻撃を浴び、矢の雨を浴び、タックルを食らい、ヒールでHPを回復させつつ戦う。


 苦しい。


 地獄だ。


 1発食らった程度じゃ死なねえ!


 だが、俺をじわじわと嬲り殺すように何度も攻撃してきやがる。

 体を少しずつ削り取られるように失っていく。


 前後左右、いや、上からも攻撃が襲ってきやがる。

 たくさんの魔物を斬り、何度も何度もヒールで回復するが、MPが切れた。


 くそ、もう、ポーション、ああ、さっき、飲んで使い切ったばかりか。

 強い防具と強いレベルのせいでじわじわと拷問のように恐怖を感じながら、俺は魔物に食われ、焼かれ、凍らされ、死んでいく。



 もう、目が、見えねえ。


 俺が、俺の体が!


 しに、たくねえ


 俺は、死んだ。


 なんで死んだって分かる!?


 俺は、怨霊になったのか?


 俺は、体が、もう、死んでいる!




【ガルウイン視点】


 僕は数日後、黒騎士のダイヤ、竜化のリリスを共にダストが死んだ場所で魔物を狩る。


 帝国6将の内3将が揃い、更に軍を動かして魔物を狩っていく。

 黒騎士のダイヤはガトリングのように土魔法の弾丸を放ち、近づく魔物は大楯と剣で倒していく。

 竜化のリリスは竜に変身して魔物を焼き、僕はその後ろから風魔法と風の剣で魔物を倒す。


 そして魔物が攻撃を受けたその隙に後ろから帝国兵が攻撃を仕掛けて魔物を倒していった。


「やっと半分くらい倒したね。ん?ダストのアイテム。回収しないとね」


 ダストの体は魔物に食われて肉の塊になっていた。

 四肢と頭は無くなり、残った胴体も小さい魔物が食らった為か半分ほど無くなっていた。


 ダストの装備を回収すると、黒い鉄仮面を見つけた。


「これは?ダストがつけていた仮面?」


 僕は漆黒の鉄仮面を拾い上げる。

 その瞬間黒い影が僕を襲った。


 黒い影が消えると僕の顔には鉄仮面がついていて、剥す事が出来ない。


「これは、ダストの魂?怨霊化したのか?」


 頭の中で声が響く。


 死ね!ガルウイン!

 僕は死なない!


 死ね!ゲット!

 だれ、だ?ゲット!モブのゲットか?ゲットだ!


 死ね!ガルウイン!

 僕は絶対に死なない!


 死ね!ゲット!

 僕以外なら、どうなっても、く!


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 僕は憎しみに支配された。


 ゲットを殺す!


 殺さずにはいられない!


 殺さないと、苦しいままだ!


 早く殺さないと、怨霊が消える前に、僕は、壊れる!


「ゲット、ころ、す」





 あとがき


・エムルが女性である表記を過去の3話分に挿入しました。

 サキュバスと表記した為、僕としては女性と伝えてある認識で書いていましたが、分かりにくいとの反応が多かったのです。

 次からは結論をはっきりと明記するよう気を付けていきたいと思います。


 ではまた!







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る