第47話
【ダスト視点】
俺は宿で何日も食っては寝て過ごした。
「ダスト様、ガルウイン様から伝言です。読み上げてもよろしいでしょうか?」
2人の斥候が訪ねてくる。
ガルウイン!
あの野郎、俺様を置き去りにしやがって、だが、伝言を聞いてから殴りに行ってやる。俺はまともだからよお!伝言は聞いてやるよお!
「読み上げろ!」
「君なら簡単に試練を乗り越えられただろうね。おめでとう。今から城に案内しよう、との事です。しかし素晴らしいです。勇者ダスト様なら試練のダンジョンなど息をするように簡単にクリアしてしまったのでしょう。
たまにいるのですよ。
試練のダンジョンに行くよう勧められると怒り出すゴミクズが。
その点ダスト様なら、ガルウイン様からの信頼も厚く、簡単すぎて拍子抜けしてしまったのでしょう」
「まったくです。無能はダンジョンに送られそうになると自分は出来ないと素直に言わずただただ激怒する者が多いのですよ。出来ないなら出来ないと言えば良いのに自分の無能を隠すように怒り出す者が何と多い事か!その点才能あふれるダスト様は器が大きく仕事がはかどります」
「……まあな」
「では早速城に案内したいのですが宜しいでしょうか?ダスト様ほどの方となればあのようなダンジョンなど、疲弊する事すらないのでしょう。聞くこと自体失礼かとは思ったのですが、一応聞く決まりとなっております」
「失礼な事を聞いてしまい申し訳ありません。ダスト様ならすぐに身支度を整えて頂けますよね」
「ふむ、その通りだ」
「それでは城に案内します」
◇
俺は城の前にたどり着いたが、何故か仮面を渡されている。
この仮面は俺に変装効果をもたらすらしい。
どうやら俺の賞金首が解除されていないらしい。
解除するには試練をクリアした後城に赴き、手続きをする必要があるんだとか。
これだから無能は、だが、俺はこのラストダンジョンに用がある。
ここには俺の最強装備があるんだよ!
俺の装備は貰う!
その為に早く城に入りたかった。
城に入るとガルウインが出迎えた。
「やあ、試練は簡単にだっただろう?」
「当然だ」
「城を案内するよ」
俺はガルウインの後について城を回る。
「そうだ、ここは氷の宝物庫で君の最強アイテムがあるけど、入るのはやめて欲しいんだ。宝物庫を守っているアイスゴーレムは紋章をメンテナンス中でHPが極端に少ないんだよ。君なら簡単に侵入出来て、最強アイテムと大量の経験値をサクッと手に入れられる。他にもいい武具があるのは分かっていると思う。でも、君は今賞金首だからね。仮面をつけたまま我慢しておとなしくしていて欲しいんだよ」
「分かっている。俺を信頼しろよ。仲間だろ?」
「そうだね、君は試練を乗り越えた仲間だよ。長旅ご苦労だったね。今日の所はこの城で休んで欲しいんだ。明日また話をしよう」
そういって俺はガルウインと別れた。
俺は夜になってから部屋を抜け出した。
氷の宝物庫に用があるのだ。
俺は氷の宝物庫の中に入る。
グオオオオオオオオオ!
「ファイア!ファイア!」
2体いるアイスゴーレムを瞬殺した。
「へへへへ、HPが少ないってのは本当だったみたいだな。お!レベルアップか。ははは、おっといけねえ。気配を消さねえとな」
俺は宝物庫を漁った。
「へへへへへ、宝に、あった、スターダストオーブだ!」
スターダストオーブは俺専用の最強装備に変化する。
更に他の宝もうまい。
後ろから気配がする!
俺は素早く隠れた!
宝物庫の入り口からカンオケが投げつけられた。
中からこの国の皇帝が出てきたが、死んでいるのか!
凍って死んでいる!?
更に外から声が聞こえる。
「ああああああ!大変だあああああ!皇帝が殺されたあああ!この中に勇者がいるううう!勇者が皇帝を殺したあああ!狂った勇者が現れたああああ!」
「くそ!どうなってやがる!」
【ガルウイン視点】
部下が報告に来た。
「ガルウイン様、報告します!ダストが罠にかかりました!」
「ご苦労様、うまく逃げて暴れそうかな?」
「はい、兵士を斬り倒し、皇帝を殺した事実を広めてくれています」
「そうか、今までご苦労だったね」
「はひ!?」
僕は兵士を風の刃で真っ二つになる。
「ふー!隠蔽完了っと」
マイルド王国に勇者が誕生した事で、勇者はこの国に警戒されていた。
調べてみると勇者は転生者で、そして短絡的な人間だった。
利用できると思ったが問題が起きた。
勇者が弱すぎる。
勇者には皇帝を殺した罪を被って貰い、更には派手に暴れて目立って貰う必要があった。
氷の宝物庫なら凍った皇帝を宝物庫に投げ入れる事で殺した時刻をばれないようにすることも可能だし、あそこには勇者用装備がある。
もっと派手に暴れて王を殺したことをアピールしてくれ。
そして死んでもらえばすべて解決する。
僕が皇帝を殺そうとしている事に感づいている者もいた。
でも、勇者が殺したとなれば僕のせいにはならないだろう。
勇者は誘導しやすく、思うように踊ってくれた。
弱い事以外は扱いやすかったよ。
情報操作も簡単だった。
ダストの性格を包み隠さず広めるだけでいいからね。
これで皇帝は消えた。
奴の無能な戦略によって剛腕と骨がマイルド王国に向かってしまった。
だがもう終わりだ。
戦力の逐次投入など、愚か者の行いだ。
僕は効率が悪くて馬鹿な皇帝が嫌いだった。
僕ならもっとうまくやれる。
皇帝の次に力を持っているのは6将だ。
だが、国を運営できそうなクグツはもういない。
次に能力がありそうな骨のエムルもマイルド王国に向かった。
今帝国を管理出来るのは僕だけだ。
今の内に僕が帝国を貰おう。
僕が効率よく国を管理してあげよう。
全力でこの国を僕が掌握する!
しかし、剛腕は僕と同じ転生者なのに、皇帝の命令を喜んで聞いてマイルド王国に向かっていったらしい。
エステルを狙っていたからね。
ま、剛腕が攻めるなら、マイルド王国は落ちるだろう。
出来れば5将すべてで一気にねじ伏せたかったんだけど、仕方がない。
剛腕、エステルは君が好きにすればいいよ。
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