第31話
俺達は王都に戻ると、すぐ王に呼ばれた。
王との謁見を待つと、クレアが笑顔で近づく。
「エステル様、この短期間で立派になられましたね」
「ゲットのおかげですわ」
「俺は、エステルに負担をかけてしまった」
「いえ！そのような事はありませんわ！ゲットはわたくしを導いてくれましたわ！ゲットはわたくしを育てる為、危険を冒して苦難に挑戦しましたわ。わたくしが王女と知りつつ、危険を冒す行為。その重圧は分かっているつもりですわ」
「俺は、自分の為にやっていただけだ」
普通に楽しくダンジョンで過ごしていた。
ゲーム感覚なのは問題かもしれない。
そこに勇者ダストが現れる。
「お前！何で生きてるんだ！ざまあチケットで死んでおけよ！」
「お前のせいで死にかけたんだ！」
「じゃあ何で死んでねえんだよおおおおおおおおおおおおおおおお！」
「この方は勇者ダストですのね。報告通り人格に問題があるようですわ」
エステルはかわいそうな者を見るような目でダストを見た。
「エステルう！お前は俺のパーティーに入る人間だああああ！」
「意味が分かりませんわ」
「ダストはこういう人間だにゃあ」
「アリシアああ！お前もお！そしてそこにいるクレアも俺のパーティーになるためにいるんだよおお！」
「お前、ここは王城だ。騒ぎを起こすのは良くない」
「話を逸らすなあああ！！お前はただの『炎強化』しか取り柄が無い無能だ！だが俺は選ばれた『勇者』の力を持つ特別な人間なんだよおおお！」
「ダスト、『炎強化』の固有スキルは、努力さえ出来れば強いですよ！あなたは人の事を言う前に努力して『勇者』の力を磨くべきです！」
この世界は識字率が低く、字が読めても難しそうな魔法書を読もうとする者は少ない。
そういう理由で魔法の固有スキルは低く見られがちだ。
だが『炎強化』の効果は炎魔法の威力が１．５倍になる。
炎魔法さえ覚えれば『炎強化』は強スキルだ。
ゲームで１．５倍の攻撃力はかなり強い部類だと思うが、分からないのか？
「俺は特別で、お前はただの一般人の無能なんだよおおおお！」
「ゲットの偉業は数えきれませんわ。大盗賊のギルスを討伐し、立ち寄った村や街の魔物を倒しましたわ。始まりの村であなたの評判は悪く、ゲットの評判は高いのですわ」
「エステル、クレア。ダストに何を言っても無駄だ。こいつはこういう人間でずっと変わらない」
「お前は大したことをしてねえんだよ」
「ダスト、お前は何をしたんだ？」
「ああん！俺は魔物を狩ってみんなから守ってやってるんだよ」
「そう言う話は一切聞いた事が無い」
「ゲット！お前は陰でこそこそやって取り入るだけの無能だ」
「俺がどうやって取り入ったんだ？」
「へ！そりゃあおめー。うまくやっんだろ！」
「だからどうやったんだ？俺はただ村や街を立ち寄って魔物を倒しているだけだ」
「てめえがずる賢い事をしたんだろーが！」
「だから俺が何をしたか聞いている！！」
「俺は皆に見えない範囲で魔物を狩っているんだよ！ずる賢いゲットとは違う」
「だから俺が何をしたか聞いている！何度話を逸らせば気が済むんだ！」
「ゲット！てめー！人の話を聞けよ！」
駄目だこいつ。
ダストは基本人を馬鹿にしてくるが、細かく話を聞いていくと、苦しくなって急に話題を変える。
そしてまた人を馬鹿にしてきて細かく話を聞いていくとまた苦しくなって話を変える。
話を戻そうとすると『話を聞けよ』と怒り出す。
人の話を聞かず自分の話を少しでも遮られると怒る。
自分には甘く、人に厳しすぎるせいで、狂人のように見える。
「そうかそうか。ダストは人の話は聞けないけど」
「てめえ！殺すぞ！！！」
ダストは俺の話を遮り、そして剣を抜いた。
「ここで剣を抜くか！」
「双方武器を納めよ！」
王が出て来て俺とダストの喧嘩を止めた。
俺達は謁見の間に入っていく。
「へ、へへへ、ゲット、お前はこれから自分の無能を知るぜ」
あいつのあの自信はどこから来るんだ？
俺はもう１つの目的『ダストにやられた分をやり返す』を思い出していた。
かかって来るならメイスで返り討ちにする！
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます