第25話

 俺・エステル・アリシア・クレアでパーティーを組み、北の王都を目指す。


「村が見えてきましたわ!」


 俺達は王都を目指しつつも、近くの村や街をめぐる方針で旅をしていた。

 この村にはブラックウルフの被害が出ていて、エステルが解決の為に首を突っ込むストーリーだったはずだ。


 村に入ると老人が出迎える。


「ようこそ、旅人を出迎えたい所じゃがこの村は今ブラックウルフの被害にあっており、余裕が無いんじゃ」

「わたくし達が退治しますわ!」


 ほらやっぱり!


「今から行って来るか」

「今は雨が降っていて、炎魔法に不利だにゃあ」


「いえ、クレアもいますわ。ブラックウルフ程度クレアとわたくしだけで充分ですのよ!」


 エステルはともかくクレアのレベルは高い。

 途中で抜けるけどお守りキャラの役割があるのだ。


「すぐに終わらせてこよう」


 俺はサクサクと話を進めてブラックウルフの住処の森に向かった。




「魔物の気配がするにゃあ!」


 23体のブラックウルフが俺達を囲む。

 そして、体長3メートルはあるブラックウルフが俺を見下ろす。


 エステルは緊張して杖を構えるが、クレアとアリシアはそこまで驚いてはいないようだ。


「エクスファイア!」


 ボオオオオオオオオオオオ!


 俺は業火でブラックウルフを焼き、ボスもろとも全滅させた。

 基本盗賊のギルスより強い敵はしばらく出てこない。

 エクスファイアのLV上げだ!


「な、なななな!なんですの!その炎は規格外ですわ!こんな簡単に炎魔法でボスもろとも全滅させるのはおかしいですわ!」

「今雨だから多少木が燃えても火事にはならない。大丈夫だ、問題無い!」


「そういう事ではありませんわ!あの大きなブラックウルフはボスクラスですのよ!こんなに簡単に倒せるのはおかしいですわ!」


「次に行くにゃあ」

「アリシアはともかく、クレアは驚かないのですか!」

「ゲットは昔から強かったですよ」


「わたくしのレベルは15から17に上がりましたわ。こんなに一気に上昇したのは初めてですわ」

「おお!レベルアップおめでとう」


「ありがとうございます、そ、そうではなくて、こんなに急激にレベルが上がるほどの無双は今までで初体験ですの。驚いていますわ」

「そうかそうか。エステルのレベルを30くらいには上げて行こうか」


「30まで上げればクレアと同レベルになりますわ!」


 クレアは国から信頼される騎士で、兵士長でもある。

 そのクレアと同じレベルに上がる事は、大きな意味を持つ。


「ゲットは規格外です。特にスキルLVの高さは異常ですよ。なんせあのゼス殿に10年以上の指南を受けているのですから」


「ゼス卿の!」

「そうです、メイスだけでなく回復魔法、そして攻撃魔法まで使いこなす万能のゼスです」

「あの!お父様が絶大な信頼を寄せる!」

「そうです、戦闘から練兵、更には内政にも尽力したゼス殿です。ゼス殿の指南から逃げ出さず、10年以上耐えたのはゲットだけでしょう」


 ゲームでもクレアとエステルはゼスの事を凄い人のような態度で接していたけど、ゼスじいは思ったよりも有名なのかもしれない。


「ん?ゼスじいは優しいぞ」

「ゲット、ゼス卿の訓練は厳しい事で知られていますわ」


「ゲットの武器LVと炎魔法LVは私の剣LVを超えているでしょう」

「クレアよりも上ですの!」

「そうです、しかも、大盗賊ギルスを打倒したのもゲットだと聞いています」


「本当だにゃあ、ギルスの持っていたダガーを貰ったにゃあ」

「これは、以前に強奪されたツインダガーです。焦げていますが、やはり真実だったのですね」


 ギルスのツインダガーは父さんの整備をされずアリシアが使っている。

 多分性能が落ちているけど、アリシアが言うには『すごく切れるにゃあ』だそうだ。


 今雨に打たれ続けている。

 皆風邪を引いてしまう。

 話を終わらせよう。


「帰ろう。エステルもしケガ人がいれば、回復して欲しい」

「はい!困った方がいれば無償で治しますよ!」


「それは皆助かるだろう。すぐに戻ろうか」


 村に戻ると俺達は囲まれた。


「村からドラゴンの炎が見えました!ドラゴンが現れたのか!?」

「いえ、ゲットのエクスファイアです」

「上級魔法の!おら初めて見ただ!」


「ブラックウルフはゲットが焼き尽くしました!」


 歓声が上がる。


「けが人がいれば治療しますわ」

「だども、おらたち、金がねーだ」

「無料です」


「そんな!ブラックウルフを倒して、上級魔法を使いこなし、更に回復魔法をただで使ってくれるのか!」


「この国のみなさんを助けたいのですわ」


 エステルが治療を始めると、俺達は皆に感謝された。


 クレアが耳元で俺にささやく。


「ゲットも回復魔法を使えるでしょう?」


 クレアが近くて、ささやくような声に反応してしまう。

 クレアもかなり魅力的だ。

 そこまで顔を近くに寄せられるとドキドキしてしまう。


「俺は、エステルが使えなくなったら使おう。エステルは嬉しそうにみんなを癒している。邪魔したくない」


 エステルは王女で外に出る機会が無く、いつもやってもらう側だったので頼りにされるのが嬉しいのだ。


 俺達は村で一泊して次の目的地を目指すが、エステルが俺をちらちら見るようになった。


 俺は観察されている?

 エステルは皆を治療し、俺たち全員が村人に感謝された。


 斥候のエマがやってきた。


「ゲットに、ゼス卿から、伝言」

「ゼスじいは元気だったか」


 エマはこくりと頷いた。


「旅をして、皆を、助けて欲しい。そう伝えるよう言われた」

「そうか、分かった」


 皆を、助けよう。

 少し、浮かれすぎた。



【次の街】


「この街にゴブリンの群れが攻めてきて困ってるんだ」

「分かった倒そう」


「エクスファイア!」


 俺はゴブリンを全滅させた。

 俺は最低限の動きで効率プレーを心掛け、次に進んでいく。




「オークが村人を襲って困っているの」


「エクスファイア!」


 すぐに倒して即村に戻る。




 俺はどんどんイベントを消化する。


「エクスファイア!」




「エクスファイア!」


「エクスファイア!」


「エクスファイア!」



 ドンドン消化してサクサク進むのだ! 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る