第44話 黒幕の登場

 ドガァァン!!!


「マジで攻撃が効かねぇぞ」

「グワァァー!!!」

「何とか無の世界ディナンで攻撃を無効化してはいるが、身体がきつくなってくるな」


 今のところ、オズとバハムートは五分五分の戦いをしている。

 しかし、バハムートは体力の消耗は見られない。

 一方のオズは、かなり疲れてきており、息が荒くなってきた。

 オズが苦戦しているのは、やはりバハムートの再生力である。

 何度も致命傷に近い攻撃を与えているが、すぐに再生して何もなかったかのようになる。

 この再生速度は、オズでも間に合わないほどの早さで異次元だ。

 それともう1つあり、それは、戦いの場が街であることだ。

 この街ごと破壊してしまえば、オズは簡単に勝てるだろう。

 しかし、ジークが避難さしているとはいえ、この街にはまだまだ建物に挟まれている人や、避難しきれていない人がいる。

 それを知っているオズは、建物を庇いながら戦っているのだ。


「オズ様、あいつに何か違和感がありました」

「なんだ?」

「魔力が弱くなってきています」

「本当か⁉」

「はい。僅かですが弱いです」

「ということは、完全ではなかったのか」


 ハムは、バハムートの僅かな魔力の変化に気が付いた。

 複製レプリカは、生み出した者の魔力が尽きた時に消滅する。

 それまでは永遠に活動をし続ける。

 しかし、このバハムートの様に魔力の減少が見られることが稀にある。

 それは、術者が完全に複製レプリカを使えなかったことが原因である。

 バハムートの魔力が強力過ぎた為に失敗したのだろう。

 これは、今のオズには好都合である。


「それなら、何とかなるな。持久戦だ」


 オズは、バハムートが自然消滅するまでの間、時間を稼ぐつもりだ。

 倒すというタスクが1つ減る為、オズは簡単にこなすことができる。

 そうして、オズは日が昇る頃まで戦い続けた。


「かおー」

「はぁ、はぁ、流石にこれだけ小さくなれば倒せるだろう」


 オズの体力もう既に限界だ。

 しかし、街の人の為に戦い続けた。

 オズは、最後の力を振り絞り、バハムートに攻撃する。


「これで終わりだ!」

虹の世界レインボーワールド!!!」


 ドガァァン!!!


 普段よりも遥かに弱くなっていたが、バハムートもそれなりに弱体化していたので、何とか倒すことができた。


「はぁ、はぁ、やっと終わった」

「魔王様!」


 長期戦で流石に疲れて倒れそうになったオズを、ジークが支える。


「その呼び方止めろって」

「すいません、つい……」


 ゴゴゴゴゴ!!!


 上を見ると、ゆっくりと大きな球が落ちてきていた。

 恐らく、この球は全属性の融合魔法であり、簡単には消し飛ばせない。


「ジーク、攻撃だ! 街を守るぞ!」


 ポンッ


 オズは、魔法を使おうとしたが、微かに風が吹いただけで何も起こらなかった。

 オズの魔力は、既に尽きており、魔法が使えないのである。


「くそっ、魔法が使えねぇ。このままじゃあ、街がやばいぞ!」

「魔王様、私に任せてください!」

「はあぁぁぁぁ!!!」


 ジークがオズの前に立つと、全力の魔法を繰り出した。


「くそっ、このままじゃ押し切られてしまいます!」


 ジークの全力の魔法であっても、その攻撃を打ち消すことが難しい。

 このままでは、街どころか周辺の村まで消え去ってしまう。


「ハム! 魔力残ってるか?」

「1発であれば大丈夫です」

「全力のを頼む!」

「グワーッ!!!」


 ハムは、全力の魔法を球にぶつけた。


「頼む、これ以上はどうしようもない」


 ゴゴゴゴゴ!!!


 球は、落ちてくるスピードは遅くなったものの、少しずつオズたちの元へと迫ってくる。


「これ以上は無理なのか……」


 ピカッ


 オズが諦めかけた時、球に一筋の光が射し込んだ。


 シュゥゥン


「き、消えた?」

「何が起こったんだ?」


 光が射し込んだと思ったら、突如、球は消滅した。

 オズたちは、何が起きたのか理解ができていなかった。


「ブヒー!」


 すると、後ろから聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきた。

 オズたちは、恐る恐る後ろを見てみる。


「ブヒ!(キラーン)」

「アウストヴァリリア……」


 後ろには、ドヤ顔をしたアウストヴァリリアが立っていた。

 アウストヴァリリアの一撃によって、強力なあの球を消し去ったのだ。


「ありがとな」


 オズは、笑顔でアウストヴァリリアに感謝を述べる。


 スゥー


「ハッ!」


 オズとジークは、何者かの人影に気が付いた。


「ジーク……」

「どうしてあの方があそこに……」


 その人影は、オズが魔王の時に側近として頼りにしていたゼシルであったのだ。

 オズとジークは、どうしてそこにゼシルがいるのかは分からないが、この1件がゼシルの仕業であるということは明らかであった。


「追いかけましょう」

「止めとけ。今の状況じゃあ勝ち目がない」

「クッ、仕方がないですね」

「僕は疲れたから寝る」

「ここでですか!?」

「スゥーハァー、スゥーハァー」


 疲れ果てたオズは、その場で眠りだした。

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