第132話 モンスターパレード 5
校舎からは次々と魔物が出続けていた。しかしよく見てみると、建物の左側の窓から出てくる魔物のほうが多い。堂本がそれを見て、現場の方向を推測する。
魔物を斬り進めながらなんとか校舎の入り口にたどり着き、中を見るとどうやら入り口に入るとエントランスのように広めの空間があり、そこをまっすぐ進むように成っていた。
そのエントランスと思われる空間にはもともと飾ってあったと思われる人の銅像などが倒されベコベコに凹んでいた。
「ひでえな、これ、銅像じゃねえ?」
「魔物にとっちゃ人間も飾りも変わらないんだろう」
魔物は建物の外に出るために、押し合いへし合いで廊下を進んできたのだろう。壁にかかった絵画は破れ、壺のようなものも倒れ割れている。下を見ればモンスターパレードが発生時に校舎に居た人間だろう。無残な状態で何人も倒れていた。
その中からまだまだ魔物は出てくる。堂本たちは魔物の来る方向へあえて向かっていく。
魔物たちの流れは一見校舎の出入り口に向けて流れているようにも見えるが実際は違う。反対側の部屋のドアも破壊され、その向こうには割れたガラス窓も見える、四方に向かっているようだ
「校舎の向こう側にも出ていってるな……」
「おいおい。大丈夫かよ。結構被害者が出そうじゃね?」
「だが、少しでも周りに散ってもらった方が俺たちは助かる」
「連邦軍に任せる感じか……」
実際に堂本達もモンスターパレードを食い止めよう何という考えはサラサラ無い。ただ現場にいる桜木の安否を確認したいが為の行動だ。
校舎は玄関から入ると真っ直ぐに道が進み建物の真ん中あたりで左右に長い廊下になっている。おそらく廊下の両側に教室が並んでいる感じなのだろうか。三人は校舎というイメージで日本の学校の教室が並ぶイメージをしていたのだが、実際には違う。
どちらかというと大学の講堂のような多人数が受講する部屋と、実技や研究をここに行うゼミのような研究室が並んでいる感じだ。その他、資料を置く部屋もあるが、魔法学校に通う生徒たちは裕福な者も多いため、ラウンジや娯楽室などまで揃っている。
ちなみに、連邦軍の賢者の三人もこの校舎の最上階に個室が用意されていたりと、かなり利用の用途も広い。
校舎の廊下を必死に流れに逆らうように進む。すべての魔物が3人に襲いかかると思いきや、それがそうでもない。正面で戦っている魔物以外は、外に向かって行く魔物が多いのだ。三人は外に向かう魔物をなるべく刺激しないように必死に正面の敵を潰しながら進んでいく。
「堂本変われ、少し安め」
「すまん」
しばらく堂本が先頭に立ち戦っていたが、戦い続ければやはり体力の限界は来る。しかも大物が来た時は堂本頼りになるだろう。そう考え、辻と佐藤が前に出て魔物に向かう。堂本は二人の後ろでフォローに入る。
「辻、俺にも強化くれ!」
「あいよ」
普段から、堂本と比べ強さが落ちる二人は、組んで戦うことが多い。二人共に割と純粋な前衛系のファイターだが連携は問題ない。
二人が戦っている後ろで、少し息をつきながら魔物の流れを見ていた堂本がつぶやく。
「……少し魔物の雰囲気が変わったか?」
「どういうことだ?」
「始めの猿や、魔獣達は、なんとなく戸惑っている感じがあった」
「戸惑って?」
「ああ、考えてみれば当然だ。モンスターパレードが別の世界からの穴が空いて出来たのであれば、魔物としても突然この世界に引っ張られたわけだ。すぐに攻撃衝動に移れるものか?」
「……確かに」
「ゴリラや、虎のような強そうな魔物の誘導で、取り巻きが先導して俺たちを襲ってきた感じがある」
「なるほど」
「今は、なにかに追い立てられる様に、外に向かってる感じがしないか?」
「……たしかに」
「この先に、魔物を駆り立ててる何かが居るのかもしれない」
「勘弁してほしいぜ」
堂本の推測に二人も嫌な予感を覚える。だが三人は止まること無く、着実に前に進んでいた。
◇◇◇
学園に向かう重人達は、その頃ようやく貴族門を抜けようとしていた。だが、城から鳴り響く魔物の襲撃を告げる警報が鳴り響き、門番は必死に門を閉めようとしていた。
それを見てスペルセスが門番に怒鳴りつける。
「何をしてる!」
「スペルセス様! いや今は警報が出てるので門を閉ざさないとっ!」
「何を考えておる。これだけ人が逃げてきているのにか? すぐに兵士がここに集まる。門を開放し、避難民を受け入れながら戦え!」
「し、しかし決まりが」
「ええい! 開けんか!」
スペルセスに怒鳴られた門番達は戸惑いつつ目線をさまよわせる。国家の頭脳である賢者は、軍の相談役を任されてはいたが、軍の命令系統には入っていない。そんなやり取りを見ながらふと思い至る。
俺は……天位は、軍の所属じゃないのか?
そんなガラじゃないと思いながらも俺はスペルセスの隣に立つ。
「頼む。開けてくれ」
「……え……シゲト様! その……」
そうか、やはり軍人には俺の言葉のほうが効くか。明らかにシドロモドロな口調に成る。
「とりあえず、俺たちを通してくれ。新市街に行く」
「外は危険で――」
「門を破壊したほうが速いか?」
「い、いえ! お、おい。開けろ!」
苛立ちなのか焦りなのか、強引な言葉で門を開けさせてしまった。
……いや、今はそれでいい。
門が開くと、数は多くないが猿のような魔物が人々を襲っているのが見えた。
刀を抜く。これからモンスターパレードの中に入っていくなら魔力を温存しないといけない。抜刀は控えよう。
俺たちは門を飛び出し、人々を追いかける魔物に向かって走る。君島もカバンから薙刀を取り出し、付いてくる。
キキー。
溢れ出した魔物との初邂逅。
どの程度の強さか。流石に居合を封じて戦うと成れば不安もある。
俺は走りながら、刀を脇構えにし魔力を練る。
前方では酔っ払いが必死に割った空き瓶を魔物に向けている。そこに向け一気に走る。猿が俺の接近に気がつき、振り向いたときには既に間合いに入っている。走りのスピードを維持したまま脇から一気に剣を振る。猿の伸ばした腕の下をかいくぐり、一閃。
横を走り抜けながら分断された猿を確認しつつ、走る続ける。
行ける。
「こっちです」
君島が俺に声をかける。俺はそのまま君島の指示する方向へ走り続けた。
流石に魔物に慣れた社会ではある。所々で魔物と戦っている冒険者らしき姿や、兵士の姿も見られるが、まだ統率された軍隊的な動きは見られない。だが、これなら貴族門を開放しても軍が動けばなんとかなりそうだ。
「街の魔物は無視しろっ」
つい人を襲っている魔物を見ると助けに行きたく成ってしまうのをスペルセスに注意をされる。
くっそ……。
実際、全員を救うことなんて出来ない。
なんとも歯がゆい気持ちを抱えるも、俺はマニトバの街を走り抜けた。
※近況ノートにも書きましたが、noteでやっているジャンプ+の原作大賞に応募したいと思いまして、少しこちらの方スロー更新になりますが宜しくおねがいします。
あと、これから年賀状などもあるので、年末年始の更新は遅くなっても許してちょんまげ。
毎年60枚ほどですが、手書きで年賀状書いていたりするのですよね。
一年に一度だけ活躍する俺の万年筆。
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