卒業試験

あっという間に卒業間近。

1年生2年生は来年のクラスを決めるための、3年生は卒業時の順位を決めるための試験がある。


ウィルにとって筆記試験は簡単だった。

特に問題なく終了。

そのまま実技試験がスタート。

3回戦闘をするという内容だ。

もちろん武器はいつもの安全配慮武器。

1戦目はキースが相手だ。


「少しは見せ場作らないとな。」

「かかっておいで。」


「はじめ!」

試験官の合図で戦いが始まる。

キースは最初から全力だ。

爆発的な加速からの必殺の突き。

そこに迷いは無い。

横にかわしたウィルに対して、横薙ぎの追撃を放つ。

ウィルに弾かれてしまうが慌てない。

弾かれた剣を自然な流れで、予想通りと言わんばかりの袈裟斬りを放つ。

正面からウィルが受け止める。

キースがバックステップで距離を取る。

下がった次の瞬間には再び前に飛び出し近距離からの突き上げを片手で放つ。

鋭い突きであるが、ウィルは軽く避けてしまう。そのまま鋭い突きの連打を放つがウィルを捉えられない。

ウィルが一歩踏み込んだのを察知したキースは右後方に跳んだ。

「よく見えてるね。」

そう言うと、ウィルが剣を上段から振り下ろす。キースが上手く逸らす。

その後もウィルの連撃が続く。しかしキースも巧みに防ぐ。

両者のハイレベルな攻防に周囲は息をのんでいる。


「攻撃に比べると防御面は粗が目立つね。そんな防ぎ方だと攻撃に移れないし、もう少し速くすると対応できなくなるよ。」

そう言うと、ウィルは徐々にスピードを上げていく。段々、キースが防ぎきれず、攻撃を受けるシーンが増えていった。

「ならば!」

キースが防御を捨てて、無理矢理攻撃を放つ。しかし、ウィルはきっちり防いでくる。

それでもキースはノーガードで攻撃を続ける。

「悪くない。成長の余地は感じるよ。」


結局、キースの刃はウィルに届かないまま、剣を叩き落とされ勝敗は決した。



2戦目。クラリスとパーシーとレベッカ。

試験なのに、何故3対1??

「やり過ぎじゃない?」

「適正だ。気にするな。」

いやいや、気にするでしょ。


ただ、クラリス以外の2人は学園では優秀な部類だが、クラリスと比較すると大いに落ちる。

チームとしての経験もないので、実際はそれほど戦力アップにはならないだろう。


「まぁいいよ。はじめよう。」


「はじめ!」

先生の合図で戦いが始まる。

「属性は炎、雷中心に攻めましょう。」

クラリスが魔法の属性を指示する。

魔法使いでチームを組む時の基本だね。

クラリスたちが放った炎と雷を防御魔法で防ぐ。その間にクラリスが走り出した。

両サイドからの攻撃にして防御や回避をしにくくしようという狙いだろう。

悪くない判断だ。


クラリスは移動しながらも、こちらへの攻撃は切らさない。

残った2人もタイミングをズラして、隙間のない攻撃をしてくる。

しかしウィルは巧みに防御魔法や反対属性での迎撃などを織りまぜて、3対1とは思えない互角の戦いを繰り広げる。


先に仕掛けたのは2人組。

『ファイヤーウォール』の連続詠唱。

巨大な炎の壁が連続でウィルに襲いかかる。

「それは悪手だね。」

ウィルが風をおこすと、ウィルを中心に一面炎に包まれた。


「やったか!」

「油断しないで!」

そんなやり取りをするパーシーとレベッカの背後にウィルが現れる。

「そう、油断大敵。相手を見失うような攻撃は止めた方がいいよ。」

ウィルはアドバイスをしながら、2人を麻痺させてしまう。

クラリスも味方がいるため、攻撃ができない。


「さてと残すはクラリスだけだね。」

「この展開は想定してたわ。」

「全力をみせてみな。周囲には被害が出ないようにするから。」

「そう、なら遠慮なくいきます!」

そう言うと、クラリスの両手に特大の炎の塊ができ上がった。

2つの炎の塊はバラバラの軌跡を描きながら、ウィルに迫りくる。

ウィルは3つの特大水球を出し、炎にぶつけ、残った1つをクラリスに向ける。

咄嗟に風をぶつけてコースをズラす。


ずぶ濡れになりながら次は特大の雷を落とす。しかし、ウィルも雷を放ち、クラリスの攻撃は分散してしまう。

多彩な魔法攻撃を続けるが、まったくウィルには届かない。そして、ウィルの宣言通り、周囲にも被害を出していない。

クラリスは集中し、今使える最大魔法の詠唱に入った。本来なら隙ができるので、1対1で使う魔法ではない。

クラリスが集中した瞬間、ウィルも魔法に集中した。

ウィルから発せられる異常な気配に全員の目が釘付けになる。

クラリスは本能的にウィルの魔法を発動させてはいけないと察した。

自らの詠唱を止め、

「参りました。」

と、降参した。

「良い判断だよ。」ウィルはニッコリ笑ってクラリスの判断を誉めた。



3戦目。リディア、カレン、エリュートロンの3人が相手だ。

おいおい、やり過ぎだろ!


「よろしくお願いします。」

3人はやる気満々だ。


「はじめ!」先生の合図。

防御力の高いエリュートロンを中心にリーチの長いリディアとスピードが高く多芸なカレンがサイドアタッカーという布陣だ。

3人の連携攻撃をなんとかしのぐ。

切れ間の無い攻撃にウィルは凄まじいスピードで対応し続ける。

時折、カレンが魔法を使うなどの変化をつけてくる。さすが優秀だね。


ウィルは力を込めてエリュートロンを吹き飛ばす。転倒はしなかったが数歩後ろに下がった。その隙にリディア、カレンにも吹き飛ばし系のスキルを放った。


3人は一度集まり。カレンが回復する。

バランスがいい。

これは厄介だね。

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