鋼の意志
「みなさん、お久しぶりです。」
「お久しぶりです。今日は依頼の話を頂き、ありがとうございます。」
ディーンさんが無茶苦茶丁寧だ。
「変な顔すんなよ。今日はウィルは依頼者、俺は雇われる冒険者だ。そりゃ前回とは話し方も変えるさ。」
「ハハハ、顔に出てた。ごめんね。
でもいつも通りの話し方でお願いします。違和感が半端ないからさ。」
「じゃあ、いつも通りでいかせてもらうぞ。話はだいたいトーマスさんから聞いている。いくつか質問させてもらっていいか?」
「どうぞ。」
「依頼を受ければ開拓村の住人になれるというのは本当か?」
「もちろん。
ただし秘密の多い村だから、秘密を漏らさないってのは約束してもらうけどね。」
「秘密を守るのは当然だな。心配はいらない。それから開拓村だが、どの程度の規模になっているんだ?」
「400人を少し超えたぐらいかな。」
「400人!秘密裏に作れる規模じゃないぞ。どうやったんだ!」
「ドルマ帝国の攻撃で住むところを失った人たちの受け皿に使ったからね。」
「ちょっと待て!ドラクロア伯爵領の未開地までどうやって住人を運んだんだ?」
「口で説明するよりも、実際に見てもらった方が早いね。こっちに来て。」
ディーン、マイカ、ドニ、ハンスを集めて、ダンジョン街のデリアン一家の屋敷に転移。
「ここは?」
「今話をしていた開拓村だよ。」
「転移魔法か。」
「正解♪」
「たしかに、この方法なら秘密裏に人が運べるな。」
「ウィル先生、そちらの方たちは?」
「街道整備の護衛をお願いする冒険者『鋼の意志』のみなさんだよ。」
「はじめまして、メルです。」
「はじめまして、ミルと申します。どこまで説明はお済みですか?」
「この村の経緯と仕事のざっくりの内容は説明したよ。」
「まてまて、まだ仕事の期間も報酬も詳細を聞いてないぞ。」
「ミル、お願いします。」
「は~。ウィル先生はいつも説明不足過ぎです。私から説明致します。
道路整備はざっと3ヶ月程度を考えています。それを超える場合は日割りで報酬をお支払致します。想定よりも早く完成した場合も報酬が減ることはありません。
報酬は、、、まさか、それも決めずにお連れしたのですか?」
「いやいや、ちゃんと考えてるよ。説明がまだだっただけでね。報酬は家3軒。ディーンとマイカさんは同居でいいでしょ。後、飯代ぐらいの日当は出すよ。」
「「「「は?」」」」
「何かまずかった?」
「一般常識から言えば、破格過ぎます。詐欺を疑うレベルです。家とも呼べないような廃墟を渡されるとか。
ただ、ご安心ください。ウィル先生は常識は無いですが、約束は守られる方です。
家は5~6人ぐらいでも十分に住める広さです。多少窮屈でも良ければ、三世代で住むことも可能です。」
「頭は混乱しているが、ミルさんが説明に加わってくれて助かったぜ。それに未開地とだけ聞いていたから、たった3ヶ月で道ができるぐらいの近場なら有難い。」
「少し誤解があるようです。決して想像されている距離ではございません。ウチの木こり達の作業スピードは異常なんです。」
「異常?」
「口で説明するよりも、体験してもらった方が早いね。行こう!」
4人を連れてダンジョンの転移陣を利用。
いつもの高速レベルアップ、上級職レベル50コースを体験してもらった。
「なんなんだ。俺の20年はなんだったんだ。。。」
「高速レベルアップはレベルは一気に上がるけど、経験が伴わないから、実際の戦闘では役に立たないよ。」
「なんか、どっと疲れたな。」
「大丈夫。レベルが上がってスタミナも上がっているから、疲れもすぐに回復できるよ。」
「そういうことじゃないんだけどな。」
「気にしない。気にしない。
これからの仕事の内容については、さっき会ったミルに聞いてよ。」
これで街道整備とダンジョン外の村作りが動き出すかな。
後日、ミルと打合せしていると、まだ護衛の冒険者が足りないってことだったので、ディーンに紹介してもらった。
それでディーンには冒険者達のリーダーとして、とりまとめをしてもらうことになった。
冒険者の人数が増えたので、工事が終わった後は街の警備隊として組織する方針でまとまった。
ディーンにどんどん役職が増えていくけど、仕方ないかな。
街の運営はミルとマリベルさんが中心になって進めてきたけど、荒っぽい冒険者達をまとめるには力不足は否めない。
ベテラン冒険者のディーンは冒険者とデリアン一家との調整役になることで円滑に進められるようになっているみたい。
街が大きくなるにつれて、ミルとマリベルさんだけでは対応しきれなくなってきている。冒険者はディーン、商売はミレーヌが中心になってサポートしているみたい。
今後も必要な人材はスカウトしていかないとダメだね。
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