第26話 3階層へ

魔法使いの女の子が去った後、僕はもうこの階にはとどまれないと悟った。

おそらくあの女の子は、かたき討ちのために新手を連れてここにやってくるだろう。

前回のような後味の悪い戦いとなることは間違いない。


僕はこの階を諦めて下の階層へと進むことを決めた。


その前にまず戦闘の結果を確認しよう。


《獲得スキル》

【鉄壁LV3】自分の防御力を一時的に高める

【攻撃回避Lv2】恒常スキルの1つ。敵の攻撃をかわしやすくなる

【癒しの光Lv2】HP(体力)を小回復する。LVが上がるにつれて回復量が増大する


《進化したスキル》

【意思疎通Lv3】→Lv4 

【舌Lv5】→Lv6

【這うLv4】→Lv5

【擬態Lv4】→Lv5

【不意打ちLv2】→Lv3

【応急処置Lv1】→Lv2

 

《獲得アイテム》

【銅の盾】銅で作られた盾、安価で使いやすい



おおっ回復魔法を覚えたようだ。

あの僧侶が使っていた魔法だろう。

これでより戦いやすくなるはずだ。


意思疎通スキルの伸びが早くなっている気がする。

一体何が違うのだろう?鑑定Lv5で調べてみた。


【意思疎通Lv4】種族問わず相手の感情を言語的に理解が出来る。ただし制限あり。意思発動は、相手の心に直接伝えられる。言語化することは出来ず伝えられる内容も限定的。


テレパシーみたいなものだろうか?

魔法使いの女の子の気持ちが分かったのは、このスキルが原因だろう。

このスキルのレベルが上がり続ければ、人間たちを食べなくても済むのじゃないか?


そういやレベルも上がっているようだ。



【ステータス】

名前:光

種族:ミミック

クラス:初級ミミック

称号:モンスターイーター、ラッキーマン、マンイーター

Lv:9→10

HP(体力):1000→1800(+3000)

MP(魔力):1300→2000(+2500)

SP(スキルポイント):1500→2500(+3000)

筋力:400→650(+3500)

耐久:700→1000(宝箱+6000、銅の盾+50)

知力:1000→1500(+3500)

器用:450→700(+3000)

俊敏:250→400(+2900)

運:25000→40000(+15000)


【スキル】

攻撃系

食べるLv8、早食いLv4、舌Lv6、溶解Lv4、体当たりLv6、毒針Lv5、狙い打つLv2、飛びかかるLv3、悪食Lv6、不意打ちLv3、振り回すLv1、格闘Lv3、落とし穴Lv1、投石Lv1、鞭Lv3、斬撃Lv2、呪いLv1、奪うLv7


耐性

毒耐性Lv6、溶解耐性Lv2、暗闇耐性Lv1


補助

方向転換Lv5、、鑑定Lv5、擬態Lv5 逃げるLv5、異空間収納Lv1、身体強化Lv1、応急処置Lv2、甘い匂いLv4 、マッピングLv1、癒しの光Lv2、鉄壁Lv3、攻撃回避Lv2、


恒常スキル

視覚Lv5、聴覚Lv5、味覚Lv4、這うLv5、意思疎通Lv4、嗅覚Lv1


限定スキル

とらばさみLv4、弓Lv3(ボウガン)、マッピングLv2 斬撃Lv1(タジムの曲刀)


ミミック固有スキル

魔眼Lv2【魅了】【千里眼】【石化】【吸収】【威圧】【傀儡】【変化】【爆破】【毒】【汚染】【凍結】

重力操作Lv1 おびき寄せるLv1



少しずつだが着実に強くなっている気がする。

気になるのはダンジョンを攻略するのには、どれくらい強くならなくてはならないのか。

どのくらい食べなければならないのか。

考え始めると憂鬱になってくる。


ただ、いくら考えても答えは出ない。

進むしかないのだ。

僕は自分の縄張りを離れ、3階層へ行く階段へと向かった。



・・・・・・・



3階層への階段は縄張りから目と鼻の先のところにある。

3階層へ向かう階段も、数百年以上経っているであろう古びた石段となっている。

下を覗き込むも階段の底が暗くてよく分からない。

僕は重力操作Lv1で自分の体を軽くして、ゆっくりと階段を降りていった。



階段を降りる僕の目に異様な光景が飛び込んできた。

2階層までは洞窟風のイメージだったが、3階層には木や草が生い茂っている。

背丈の高い樹林ばかりが生育し、周囲に蔓を伸ばしている。

見たことも無いような色の鳥が飛び、様々な動物の声が聞こえてくる。


蒸し暑い…。

湿った臭いがする。


とてもダンジョンにいるとは思えない環境。

そう、ここは森ではない。

ジャングルなのだ。


広大な広さのジャングルが、僕の目の前に広がっていたのだ。

流石に太陽はないものの、天井までが高く明るい。

空中に浮かぶのは雲か?いやまさかね。


とりあえず、周囲の状況を確認して縄張りを探さないと。

あまりにもの環境の違いに驚きながらも、僕はマッピングを開始し始めた。


2階層までの床と違い、3階層の床は土で覆われている。

部分的に土壌も緩く、僕の重さでは何度もぬかるみに動きを妨げられた。

地面を這う太い蔦も、僕の移動を制限する。

ここでの戦闘は特に注意しなければならない。

地面を這って進む僕には、非常に相性が悪いのだ。


ポツ。

ん?

僕の上蓋に冷たいものが落ちてきた。

確認すると水滴のようだ。

どこから落ちてきたのだろう?


その答えが分かるには、そう時間がかからなかった。

頭に落ちる水滴の数が増え始め、すぐに大量の水滴が落ちてきた。


雨?いやスコールだ!

激しい雨が急に降り注ぐ。

周囲も雨が降るにつれて暗くなってきた。

ゴオォォオという音を立てながら、激しい風が吹き荒れる。


ここはダンジョンではなかったのか!?

突然の激しい雨と風。

さらにぬかるむ地面。

僕は雨宿りをする場所も探せず、その場で蓋を閉めてスコールが止むまで耐え続けた。


スコールはそう長くは続かなかった。

殴りつけられるような激しい豪雨と突風は、5分ほどでおさまり辺りは再び赤くなっていった。


蓋を開けてマッピングを再会しようとした僕だったが、急遽蓋を開けるのを停止した。

いつの間にか僕は、大きなカエルの集団に取り囲まれていたのだ。

およそ30匹はいるだろう。

それそれのカエルは僕の体よりも一回りは大きい。

迷彩服のように黄緑色の体に、不揃いのまだら模様。

丸い大きな目の上には、角状の突起のようなものがついている。

口は僕を丸飲み出来そうなぐらいに大きく、手足は不釣り合いな程短い。



本来であれば【視覚Lv5】【聴覚Lv5】を持っている僕は、彼らの接近に気づかないはずが無い。

しかし、スコールの激しい雨音と強力な風の影響で、全く気が付かないまま接近されてしまったのだ。


このままやり過ごせないだろうか?

僕は動かずやり過ごすことに決めた。

宝箱の価値を、カエル達には気づかれないことを期待したのだった。


カエルたちは僕を前にして各々何か話しているようだ。

僕は意思疎通Lv4をセットし、カエルたちの声に耳をすました。


(ゲゲ、何で宝箱がここに?)

(長に持ち帰ろう、褒美があるかも)


どうやら僕の正体は気づいていないものの、どこかへ運ばれるかもしれない。

今の僕の体じゃカエルからは逃げられそうもない。


【鑑定LV5】でカエルのステータスを調べてみた。


【スワンピィツノガエル】

Lv 20

HP(体力):3500

MP(魔力):300

SP(スキルポイント):1500

筋力:1700

耐久:800

知力:1500

器用:1000

俊敏:2500

運:1000


スキル

舌Lv6  丸飲みLv4 毒耐性Lv5  突進Lv5 ※※※ ※※※


流石に3階層、2階層のモンスターたちよりもかなりステータスは上だ。

個の強さであれば、数匹は倒せても集団で襲いかかられると勝ち目はまるでないだろう。


僕はまた選択を迫られた。

①それでも戦うか?それとも②宝箱に徹するか?


ここは迷うことなく②だ。

戦うには不利な条件が多すぎる。

幸いにも現時点では、危害を加えられることは無いだろう。

僕はそのまま宝箱に徹することを決めた。


一匹のカエルが僕を舌で包み、僕を抱えたままカエルたち全員の大移動が行われた。

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