第19話 後処理
激しい戦いが終わり再び静けさを取り戻したダンジョン。
僕は、この戦いで命を落とした獣人やゴブリンたちを一匹ずつ【食べるLv8】で処理をしていた。
ゴブリン50匹以上、獣人8名。
一体ずつ確認しながら食べ回った。
まるで夢のようだった。
僕の人生であそこまで敵意を向けられたことがない。
僕を殺そうと、やつらは自分の命を顧みず襲いかかってきたのだ。
もちろん僕も黙ってやられるわけにはいかない。
僕も同等の殺意を持ってやつらに向かい合った。
何度か諦めそうになった。
実際死の直前を彷徨った。
オートモード。
あれが無ければ僕は今ここにはいないだろう。
一体どういったシステムなんだろう。
僕は最後の一匹まで食べ終わった。
そういや、もう2人いたっけ?
ゴブリンに倒されて虫の息だった2名の獣人たちは、すでに命を失っていた。
きっかけはこの2人と女の子の獣人だった。
僕が助けようとしなければ、後味の悪い戦いをしなくても済んだのかもしれない。
そうすれば、獣人たちも食べなくても良かったのに…。
本当にそうだろうか?
チュートリアルの言うように、僕はミミックなのだ。
お宝を求める冒険者たちを食らう宝箱のモンスターなのだ。
宝箱を手にした今、モンスターから狙われることは減るかもしれない、
これから主として餌とするのは「人間」だろう。
僕は大きく口を開き、倒れている獣人2人を平らげた。
美味しいはずの獣人達は、今は苦く感じる。
慣れよう…。
僕が再び元の世界に戻る為にはそれしか無いのだ。
ふとステータス画面を見ると、ウインドウに点滅したフラグ型アイコンが立っている。
フラグを選択すると、
「メッセージが『重要情報以外表示しない』と設定されています。元の状態に戻しますか?」
そう言えば、確かに戦闘中のメッセージが耳に響くことは少なくなっていた。
いつの間にかチュートリアルもいなくなっている。
ひょっとしたら彼が、僕が戦いに集中できるように設定してくれたのだろうか?
戦闘が終わったので、元に戻しても良いだろう。
僕は「元の状態に戻す」を選択した。
「未確認のログがあります」
未表示だったメッセージのことだろう。
僕は「ログを確認」を選択した。
「【弓Lv1】がLv2となりました、【毒針Lv4】がLv5となりました。【振り回すLv1】を獲得しました。【方向転換Lv4】がLv5となりました。【暗闇耐性Lv1】を獲得しました。…」
なんと50近くもあるログが一挙に僕の耳に響いた。
中には戦闘時に有利になるスキルも獲得していたが、獲得するたびにこう耳に響いては戦いに集中できるはずがない。
ログの表示を制限してくれたのは、チュートリアルのファインプレイだろう。
ログをまとめるとこうだ。
獲得したスキル
【振り回すLv1】【暗闇耐性Lv1】【格闘Lv3】【落とし穴Lv1】【身体強化Lv1】【恒常スキル嗅覚Lv1】【投石Lv1】【鞭Lv3】【応急処置Lv1】【斬撃Lv2】
LvUPしたスキル
【弓Lv1→Lv3】【毒針Lv4→Lv5】【方向転換Lv4→Lv5】【這うLv3→Lv4】【体当たりLv5→Lv6】【とらばさみLv3→Lv4】【擬態Lv3→Lv4】【悪食Lv5→lv6】【不意打ちLv1→Lv2】【狙い撃つLv1→Lv2】【飛びかかるLv2→Lv3】【鑑定Lv4→Lv5】【早食いLv3→4】【舌Lv3→Lv5】【味覚Lv3→4】
などである。
ログを確認して気づいたのだが、通常新しく覚えたスキルはLv1から始まる。
しかし、獣人から得たスキルはLv1からとは限らず、ある程度Lvが上がった状態で獲得される。
おそらくその獣人が持っていたスキルLvなのだろう。
理由は分からないが、人型からスキルを獲得する方が得のようだ。
この辺りにも人間を食べさせようとする製作者の悪意を感じる。
「あなたのレベルが上がりました」
「HP/MP/SPを全回復しました」
【ステータス】
名前:光
種族:ミミック
クラス:見習い
称号:モンスターイーター、ラッキーマン、マンイーター
Lv:8→9
HP(体力):800→1000
MP(魔力):1000→1300
SP(スキルポイント):1200→1500
筋力:250→400(+500)
耐久:500→700(+3000)
知力:750→1000(+500)
器用:300→450
俊敏:150→250(-100)
運:18000→25000
【スキル】
攻撃系
食べるLv8、早食いLv4、舌Lv5、溶解Lv4、体当たりLv6、毒針Lv5、狙い打つLv2、飛びかかるLv3、悪食Lv6、不意打ちLv2、振り回すLv1、格闘Lv3、落とし穴Lv1、投石Lv1、鞭Lv3、斬撃Lv2、呪いLv1
耐性
毒耐性Lv6、溶解耐性Lv2、暗闇耐性Lv1
補助
方向転換Lv5、、鑑定Lv5、擬態Lv4 逃げるLv5、異空間収納Lv1、身体強化Lv1、応急処置Lv1
恒常スキル
視覚Lv5、聴覚Lv5、味覚Lv4、這うLv4、意思疎通Lv1、嗅覚Lv1
限定スキル
とらばさみLv4、弓Lv3、マッピングLv1
アバターポイント:12,000P
未確認のスキルを1つずつチェックしていく。
【振り回す】持っている武器を振り回すスキル
【格闘】全般的に格闘能力が上がる
【落とし穴】設定したエリアに落とし穴を作成する
【投石】石もしくはそれに準じるものを投げる
【鞭】鞭で攻撃する
【斬撃】拳や斧などの斬撃系のスキルがアップする
【暗闇耐性】暗くなっても周囲の状況を確認することが出来る
【身体強化】自身の身体機能を一時的にUPさせる
【応急処置】HP/MP/SPを回復させる(低)
【嗅覚】恒常スキルの一つ。嗅覚が鋭敏になる
【呪いLv1】相手に呪いを付与することが出来る
これで一通りのログの確認が終了したと思ったが、ウインドウのフラグアイコンがまだ点灯していた。
再度フラグを選択すると、
「宝箱の取得を確認。称号【マンイーター】を確認。最低必要Lvを確認」
「【初級ミミック】にクラスアップ可能です」
見習いミミックと何が違うの?
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